胡蝶蘭原種を中心に月毎の出来事を記載したページです。内容は2-3か月前に遡って不定期に更新・校正されることがありますので常にページアクセスの更新(F5)をして下さい。

12月

JGP2015出品の一部 III

 下記写真はベテランマニア向けJGP2015出品予定株です。すべて順化済の根の多い株です。表示のない価格は未定です。Coelogyne dayanaは下記以外にさらに大きな株を1点出品します。


Den. cinnabarinum 
¥3,500 80-100㎝サイズ

Vanda luzonica cluster
¥未定 最長丈1m、6株構成

Coel. dayana cluster
¥未定

Coel. dayana cluster
左の現在株(背丈70㎝長)


Den. victoria-reginae 寄せ植え活着済
¥未定 70本茎+新芽25本 (株分け品もあります。この場合¥1,500/4茎です)


Nepenthes truncata 特大サイズ(25㎝長/1枚葉)食虫植物
¥未定(野ネズミも捕るという大袋を付けます)

JGP2015出品の一部 II

 JGP2015の出店予定の一部の株を掲載します。価格表示が未定となっている品種は、価格決定の参考となるこれまでのマーケット情報がなく検討中となります。価格表示をしても品質やサイズは?という人も多いと思いますので株の写真も示すことにしました。品質に関しては全て順化済みです。写真の中で使用されている橙色スリット鉢は18㎝径、緑色スリット鉢は12㎝径です。上段から4段目の右のDimorphorchis lowii / rossiiは2013年8月および2012年6-7月の今月の花を参照ください。いずれもBSサイズです。プラスチック・スリット鉢とバークミックスで良く育ちます。Bulb. giganteumは2011年MOJ掲載のフィリピン固有種で一つの花の大きさが17㎝x6㎝のBulbophyllumのなかで最大サイズと言われます。ネットで議論されているBullb. phalaenopsisではありません。J.Cootes氏が著書で、ランのコレクションで最も魅力的で価値ある種の一つに位置づけられると述べています。国内初か、極めて稀な入荷と思われ数に限りがありますが出品することにしました。


Bulb. kubahense ¥3,000/葉
紫色のラベルは新芽確認済みを示す。
Bulb. kubahense ¥3,000/葉
紫/橙色のラベルは新芽確認済みを示す。

Den. williamsianum ¥3,000
60-70cmのFS株です。

JGP出荷待ちDendrobium spatulata各種

Vanda foetida ¥5,000

Vanda jennae ¥5,000

Phal. stuartiana cluster各サイズ ¥価格未定

Phal. deliciosa alba ¥2,000

Phal. lobbii ¥1,200
Phal. appendiculata/Phal. minus ¥1,500

Bulb. giganteum (Negros産) ¥4,000
花はBulbophyllum中、最大サイズと言われる
Dimorphorchis lowii / rossii ¥3,000
花茎の上半分と下半分で花が異なる珍種

Phal. mannii black ¥1,500

Phal. mariae 野生栽培株 ¥未定
Nepenthes merrilliana ¥未定
温室のコバエ捕りにいいかも?

Bulbophyllum kubahenseの花芽 5

 Sarawak産B. kubahenseのそれぞれ異なる株の花芽3点を写真に撮り掲載しましたが、これらはBulb. decurviscapumの可能性がありますので写真を削除(2015年1月25日)しました。

Vandaの新種はたまた変種?

 このインドネシア生息のVandaの仮称?はVanda lompongenseと言うそうです。勿論ネットで検索しても出てきません。似た名前にVanda lombokensisがあります。この名前で検索すると画像検索結果の中に、これにピッタリという訳ではありませんが、リップの形状からその変種としても良い範囲のものが2点ほど見られます。下記にこのV. lompongenseの写真2点を示します。リップが独特の形状でinsignisのように大きいのですが内側に反っており、2枚貝の殻のようです。左右ではベース色が左の白と右の黄色があり、黄色はインドネシア語でしょうかtercantikという名のようです。いずれもラン農園で撮影(左は園主、右は筆者)したものです。写真に見ら.れるように花が大きく迫力があるためビジネスとしては魅力があり、生息地が現在保護地区ではないので世界に知れ渡り高価で取引されるとなれば、あっと言う間に地元住民に乱獲され絶滅するかもしれません。保護地区にできないのであればex-situとしての対策が必要のように思われます。

JGP2015出品の一部

 下記はJGP2015へ出品する原種のごく一部の花写真と予定価格です。一般市場の1/2から1/5の価格で、現地オンライン価格よりも安く、気が違ったかと言われそうです。最下段右のDen. laxiflorumはネット上では1ラン園のみしか価格が分かりませんがなぜか40,000円以上でした。1/8の価格となります。Phal. appendiculataを除き、すべてFS(1年以内に開花)株です。これに対抗できる出店者が現れるとJGPも活況となるのですが。ブースサイズから、多品種少量出品となってしまいます。早い者勝ちです。


Phal. cochlearis ¥2,000

Phal. appendiculata ¥1,500

Phal. deliciosa alba ¥2,000

Phal. corningiana blue lip (確認済) ¥少々高価

Phal. amboinensis flava ¥2,000

Phal. violacea Norton (色確認済) ¥2,000

Phal. micholitzii 花芽つき ¥3,000

Phal. lindenii ¥2,000  特大¥2,500

Paraphal. labukensis 0.7-1mサイズ  ¥3,000

Phal. bellina ponkan ¥1,000

Phal. speciosa¥1,500

Phal. cornu-cervi dark red ¥1,500

Phal. tetraspis ¥1,500

Phal. tetraspis albescens ¥2,500

Den. williamsianum 60-70cmサイズ  ¥3,000

Den. stratiotes 1mサイズ ¥5,000

Den. lasianthera 1m超サイズ ¥5,000

Den. laxiflorum 1mサイズ ¥5,000

珍しい花

 胡蝶蘭ではありませんが現在温室で開花中のエクアドルとフィリピンの、ラン趣味家には余り馴染みのない原種の花2点を掲載します。Draculaはプラスチック深鉢にクリプトモスで、またAppendiculaは素焼き鉢にミズゴケで植え付けています。Draculaを含め他の多くのエクアドルクール系は山野草鉢への植え込みです。またAppendiculaは当初バークミックスでしたが芳しくなく、ミズゴケ素焼き鉢が相性が良いようです。


Dracula sodiroi

 猿面をしたドラキュラの花なのに猿面は何処にと・・・・・


Dracula sodiroi

 ・・・・花を下から覗いて見たところ、猿の顔が現れました。


Appendicula malindangensis blue

 Cleisocentronの青い花が人気ですが、青色の美しさではこちらが勝ります。順化中の開花のため写真の花数は少ないですが、落ち着けば8-10輪程の開花となります。JGP2015に出品しますので入手可能です。


Appendicula malindangensis purple

 左と同じMalindangensisです。この原種は左のような青と上写真のような紫から赤に近い色まで変化が見られます。この花の色は葉の特に裏側の色と対応しており葉の色で花色が予測できます。

 

Phal. doweryensisの側芽

 一般にPhal. giganteaPhal. doweryensisなどでは頂芽優勢の性質から、頂芽が健全である限り、側芽が頂芽と共に成長することはまずありません。側芽が発生し成長するのは、害虫あるいは病気などの障害により頂芽の成長が止まった時です。温室の20株程のPhal. doweryensisの中でこの性格を破る株が見つかりました。それが下写真です。写真は葉長約40㎝の大きなPhal. doweryensisですが、頂芽とは別に左右それぞれに側芽が現れ、これらが頂芽と同じような速度で現在成長しています。当初は頂芽に成長を止める何らかの問題が生じたのかと思っていましたが、それなりに成長しているようです。ただ通常1枚毎に、あるサイズまで伸長した後に新たな芽が生じるのですが、比較的短い伸長で次の芽が発生しているところを見ると、やはり頂芽に何らかの異常があったのかも知れません。

 頂芽優勢とは、頂芽がオーキシンという植物ホルモンを分泌して自分以外の芽の発生を抑える働きによるものですが、おそらくこの場合は、何らかの原因でオーキシンの分泌が弱まったものと思われます。一方、植物ホルモンに特に影響を与えるような病害虫防除薬は近年使用したことはありません。かなり老齢のPhal. amabilis系原種では稀に、またクラスターを構成する野生株ではしばしばこうした現象が見られるものの、Phal. doweryensisでは始めて見る現象です。


  実生では発達しにくいクラスターを構成する野生種は、脇芽や高芽の発生率が、同一環境下において実生とはかなり異なっており、何か固有の特性を持っているのではないかと、かって記載したことがありますが、クラスター状に成りやすい性質の株は、自身が分泌する植物ホルモンオーキシンの制御機能が影響しているのかも知れないと思うようになってきました。この脇芽と頂芽を共に成長させるオーキシンの適量が分かれば、大株増殖用ホルモン剤として商品が現れるかも知れません。しかしおそらく種ごとにこの量は異なるような気がします。

Phal. lueddemannianaに見る継承

 ダークソリッドレッドのPhal. lueddemannianaを東京ドームラン展で台湾ラン園から購入したのは2005年の2月です。当時10万円でした。この胡蝶蘭原種は2010年3月の歳月記と今年2月のPhal. lueddemanniana セルフ交配に掲載しています。Phal. lueddemannianaの中でも花サイズが大きく、際立って色が深く鮮やかで、これに勝る株をこれまでの10年間で見たことがありません。購入後5年間ほどは交雑種の可能性を調べるため自家交配を繰り返していましたがすべて失敗しました。ようやく3年ほど前に胚のあるタネが得られ、20苗程をフラスコ培養し、その結果、ほぼ親と同じ特徴を継承することを確認しました。。高価でしたが、鮮やかさとは裏腹に雑種の多い台湾品種の中で唯一、満足できる買い物と思っています。これを受けて今年初旬に再度自家交配を行い、多数のタネを得ました。およそ2,000苗程を現在カルチャーボトルにて培養しています。今後1年かけて成長の良い苗を選別し、最終的には250株程をBS株まで育種したいと考えています。


Phal. lueddemanniana元親

左写真の自家交配実生花

左端株の自家交配苗。3ボトル中の一つ

Bulbophyllum kubahense 4

 12月のマレーシア訪問で、葉裏が淡緑色のKalimantan産と思われる本種がミズゴケに巻かれ100葉程、園内に置かれていました。これらは前回のKalimantan産の葉サイズより大きく、葉長20㎝以上が多く含まれており、その中には花が終わった後の枯れた弓状に下垂した花茎が残っているものがありました。その枯れた茎の長さおよび形から、Bulb. refractiligueよりはBulb. kubahenseに近いと思われたため、Kalimantan産は今回の購入予定になかったのですが、60葉を入手しました。Bulb. refractiligueは花軸が短く、上向きとされます。CITESはSarawak産があればと、あらかじめ50株申請していましたが、Sarawak産はありませんでした。これ以外に段ボールに入った100葉を超えるBulb. refractiligueらしき株もあり、この株について質問したところ名前は分らないとの返答でした。葉色およびややジグザグ様態の茎から見てKalimantan産であり、もし根がミズゴケで巻かれていればこれまでの入荷様態からKubahenseと考えることもできますが、根がベアールートのままでの段ボール入りですので、間違いなくBulb. refractiligueでしょう。現地価格であってもかなりの高額品を、根がすぐに乾くベアールートのまま数日でも段ボールに入れたままにするとは考えられません。高額なものは大切にされ、そうでないものは粗略に扱われるのはランの世界も同じかと。

 前回のKalimantan産kubahense同様に今回も杉皮板にミズゴケで取り付けです。前回のkubahenseは順化中ですが、この取付材で良く成長しており、ほとんどの株に新芽が現れ(葉のないバルブからは未確認)ており相性が良い様です。今回の訪問では筆者が余りkubahenseには興味を示さなかったせいか、園主が好きなものだけを選んで良いとのことから、リードバルブあるいはバックバルブ株に関わらず、新芽が出ており、また生きた根が多い株だけを選ぶことができました。これらを株数にすると15株となり、前回と合わせKalimantan産は40株相当になります。これらは東京ドームラン展に出品しますが、全て順化済み、且つ新芽付きで、葉当たりの価格は3,000円とし、1株3葉相当で9,000円、現在の国内外のマーケットでの価格が35,000円程ですので、その1/4の価格を予定しています。出品するうち最も葉数の多い株は12葉です。新芽がある株はこの新芽も1葉とするかどうかはその場の気分次第です。Bulb. refractiligueも数本出品しますがこちらは1,000円を予定です。


12月入手したBulbophyllu kubahense杉皮板に取り付け凡そ60葉

 また例えばCleisocentron merrillianumおよびgokusingiiの価格は現在国内マーケットでは株の大きさに寄りますが30㎝程で現在も6,000円 - 7,000円だそうです。順化済みの20㎝-50㎝長を、背丈に関わらず1株1,500円を予定しています。どれを選ぶかは初日からの先着順となります。50本程を出品します。こちらも現在の市場価格の1/4となります。順化前であれば1,000円以下にしたいところですが6ヶ月以上の順化済みの株なのでやむを得ない価格です。JGP2015に出品する商品は、希少種、新種、クラスター株、野生株からの増殖株を除けばその多くが似たり寄ったりの低価格となります。これらは前回書きましたように内覧会日ではなく、初日当日朝早くから開催を待つ多くのマニアを考え、初日から最終日までの適用価格です。初日前日の招待客内覧会では市場価格並みとし、上記のような低価格にはしません。またBtoB販売は会期中一切行いません。JGPは1年に1度のラン趣味家のための祭典と考え、こうしたマーケッティングも一興で、この機会にJGP2015への参加者と共に、趣味家が増えることを期待しています。

12月のマレーシア滞在記

 前回の教訓からホテル2泊、機内1泊の訪問では初日がクアラルンプール市内のShangri-Laホテルに、2日目は地方のホテルにするつもりでしたが、坐骨神経の圧迫による足の痺れが1か月半ほど前から徐々にひどくなり、今回は杖をついてのマレーシア一人旅となったため、行動範囲を狭め2泊とも地方滞在としました。12月のクアラルンプール周辺は曇りや雨の多い季節です。杖が無くてはまっすぐ歩くことも、特に階段を降りることが出来ません。帰国数日内にMRI検査を受けることになりました。今回はこのような状態を押しての文字通り体を張っての海外行きです。この体調にもかかわらず、今回持ち帰った箱は大中それぞれ2箱の計4箱で、これまでの内で最大の重荷となりました。その原因は大株ばかりのデンドロビウムです。目の前が見えない程の段ボール箱をカートに乗せてフラフラしながら歩いている姿を空港内で見ていた人は何事かと、機内でシャンペンやワインを飲み過ぎた酔っ払いに違いないと思ったかも知れません。

 足がもつれた格好で歩いていたせいか、JALチェックインカウンターでは1-2分の僅かな時間ですが腰掛を勧めてもらったり、帰国時のマレーシアのカウンターでは預け荷物制限(JAL会員のため4個まで)があるのですが、5個目となるカメラやPCの入ったバックパックがかなり重いのを係員が知って、無償でよいとのことで受け取ってもらったり、成田の荷物受取のベルトコンベアーから大きな段ボールを下ろす際にはJALの方が見かねてか手伝いに来られたり、また植物検疫ではカートからの荷物下しや、積み上げのこれまで筆者が行っていた作業もすべて検査官が行ってくれました。通常のサービスを超えたこうした様々なサポートに対しては、海外ならばそれなりのチップを払わなければならないところですが、無償でごく当たり前のようにサポートをして頂ける姿勢に日本の良さを今回も再認識することになりました。むしろこうした体調にも拘わらず一人で重い荷物を持ち帰ることこそ迷惑千万で狂気の沙汰との声が聞こえてきそうです。趣味も高じて人の世話を受けなければならない段階にくれば確かにそうかも知れません。

 このような体調と蘭園に近いことで、今回も前回同様にPALMホテルに、やむなく2泊しました。相変わらず換気扇はどうしてこれほど大きな音が出せるのだろうと、むしろ考えてしまうほどの騒音で、寝る際にはエアコンは切る以外ありません。一方、レセプションカウンタのチェックインの際、担当者から突然日本語で’いらっしゃいませ’と挨拶をされたのには驚きました。JCBカードが使用できず、オンライン予約システムも未完成で、日本からの旅行者が泊まるとは思えないローカルなホテルであるにもかかわらず、筆者が日本人客であることで、多少は練習をしたのでしょう、その努力には感心しました。前回宿泊から50日程後で大きく変わっていたのは朝食の内容と味です。前回はムスリム意識の強い印象のメニューと味でしたが、置き場所を分けてポークやビーフまたカレー風の料理も見られ、味もかなり良くなっていました。換気扇の騒音を除けば、日本円で6,000円の宿泊費はかなりコストパフォーマンスは良いと思います。

 また今回改めて気が付いたことはモール内にあるレストランでです。例えば中華風料理店、ステーキハウス、海鮮料理店などがありますが、ほとんどの店がお酒をおいていません。セレンバン地域特有のことかどうか分かりませんがステーキ料理の店にワインやビールがなく果物ジュースしかないことを許容するマレーシア人の味覚とは如何がなものかと考えてしまいます。なぜムスリム専用の店でもないのに酒が置いていないのか聞いてみたところ酒類の販売は許可がいるそうです。それはおそらくどの国でも同じで理解できるのですが、ではなぜ料理によっては必然と思われる酒類が置いていないのかの理由にはなりにくく、余程酒税が高いのかなとしか思いつきません。12月でも日中32℃の国ですから、園主と食事に行くときは必ずビールのある店を条件にしています。しかしあまりにその数が少ないため皮肉を言ったところ、園主は酒は酒店で買って持ち込めば良いとのことです。本当に持ち込みが許されるかどうかは今回は試してみませんでしたが、次回訪問では本当にそれが公然と許されるのか敢えてコップだけを頼んで店員の前で持ち込みのビールを注いで見ようと思います。やはり今回の滞在もこれまで通り、中華料理が主体で、未だ気に入るマレーシア料理の店は見つかっていません。たまにそれらしい店に入るのですが、牛肉など硬くて途中でギブアップです。一度イギリススタイルのステーキハウスを見つけ、これはと思い入ってみました。焼き加減はと聞かれたのでミディアムレアーと言いました。焼き加減を聞くとは本格的な料理に違いないと期待しました。出てきた肉はかなり大きな肉ですが厚みが数ミリしかありません。なぜこの薄さでウエルダンからレアーまでの注文が取れるのであろうかと考えながらナイフを入れたところ、ステーキの右端から左端に至るまでにウエルダンからレアー状態の変化があり、つまり一方が良く焼けており、他方はほとんど生状態、中心部はその中間で、この焼き加減のグラデーションの中で、注文に応じた焼き加減の部分を最も大きな面積とするように料理しているのに違いないのだと、1枚のステーキの上で、こうしたプロフェッショナルな焼き方こそ、さすがマレーシア風かと自分に納得させながらの食事でした。ただ、自分の好きな焼き加減の部分は良いとしても、残った良く焼けて固い部分と生状態の端の部分の凡そ全体の50%をどうするか、これが問題です。

 

マレーシア訪問

 今年に入り4回目となるマレーシアにいつもの強硬スケジュールで6日から9日まで訪問しました。今回も東京ドームラン展のための出店品購入が主な目的です。胡蝶蘭はPhal. micholitziiの花の確認ができたため追加を、またデンドロビウムではspatulata系を主に入手しました。これでspatulataはこれまでの所有分を含めると下記の原種が東京ドームに出品できることになります。おそらくこれだけの品種が一堂にJGP2015で会するのは珍しいのではと思います。全てBS株で大半が1m近いか、それを超える大きさです。下記spatulataリストで朱記原種は国内で入手が極めて難しいか、未販売と思われます。JGP2015での価格は2014年度国内オンラインマーケット価格に比較して驚異的な低価格を設定(内覧会翌日の初日から)します。B to B販売は行いません。趣味家のみへの販売です。全種の詳細価格は販売戦略上、問題がありJGP2015初日近くまでは控えます。spatulata系以外でも10種程は国内販売の極めて少ない、あるいは新種と思われるデンドロビウム原種を出品予定です。人気種としては例えばDen. williamsianumなども出品します。ブースサイズからそれぞれの品種当たり5株ほどしか持ち込むことが出来ないため、価格を考えるとおそらく初日かその次の日にはデンドロマニアに売り切れてしまうかもしれません。

Den. albertesii
Den. antennatum
Den. busuangense
(philippines)
Den. canaliculatum (New Guinea)
Den. capra (Java)
Den. carronii (New Guinea)
Den. cochlioides green (New Guinea)
Den. discolor dark (Australia)
Den. hamiferum (New Guinea)
Den. johannis (New Guinea)
Den. khanhoaense (Vietnam)
Den. lasianthera (New Guinea)
Den. laxiflorum (Moluccas)
Den. leporinum (Moluccas)
Den. lineale (New Guinea)
Den. lineale blue (New Guinea)
Den. mirbelianum (Australia)
Den. mussauense (New Guinea)
Den. pseudoconanthum (Sulawesi)
Den. schulleri (Indonesia)
Den. stratiotes (New Guinea)
Den. strebloceras (Malaysian archipelago)
Den. strepsiceros white(New Guinea)
Den. sutiknoi (Malesia)
Den. sylvanum(Papua New Guinea)
Den. sylvanum flaver (Papua New Guinea)
Den. tangerinun (New Guinea)
Den. taurinum (Moluccas)
Den. trilamellatum (New Guinea)
Den. wulaiense (New Guinea)


出荷を待つDendrobium Spatulata系。 全て栽培株であり、根は鉢の中で、炭に絡まっていたものをほぐした状態

Den. lasiantheraの1mを超える大株である。花はいろいろなバリエーションがあるが、これらの株はこれまで所有していた株とはかなり色合いが異なり見ごたえがあった

Dendrobiumの栽培は炭を植え込み材としている。この炭のPHに興味があり測定するため一部を持ち帰った

 一方、1.5mから2mを超える異例な長さの4-5株からなるCleisocentron merrillianumのクラスター株がありました。筆者温室にある30-50㎝長の50本程の本種の成長を観察していると、これだけの長さの株になるにはかなり長い年月が必要で、これらこそが本当のCleisocentron希少株ではないかと思います。現地栽培では白い太い根がヘゴ板に活着し栽培されており、これを鋏とドライバで外した直後の状態が下写真です。これを見ていると本種は、自然界では苔むした木肌に着生し、成長するにしたがって立ち性から下垂に変わり、やがては支持木から2-3m程の長さの茎を垂らして生息するParaphalaenopsisのような様態と思われます。


Clesiocentron merrillianum。鉢から外すとき青い花が付いており最長の株を測ったところ2.5mあった。写真に見られるように多くの枝の分岐があり、こうしたクラスター株からは株分けが出来そうである。

 

葉につく緑色のコケ

 多くの栽培家が葉に付く緑色のコケに悩まされているのではと思います。ティッシュで葉を擦ると付着する緑色のものです。特に高湿高温の環境で液肥を散布する施肥ではその濃度や頻度、あるいは輝度や通風環境にも寄りますが、葉が成長を休めた途端に、この緑色のコケが葉表面全体を覆い、さらにひどくなると茎や、空中に根が露出するVandaなどでは根にまで取りつきます。観察すると、新芽や成長(伸長)している若い葉にはほとんど付きません。これによる被害として考えられるのは、コケで覆われることで葉に当たる光量が減り、光合成に影響を与えることです。この結果、ひどくコケに覆われた株は成長が止まった様態が見られます。この状態が長く続けばやがて株は弱まり枯れてしまいます。

 一方、不思議なことに、胡蝶蘭もバルボフィラムなどこのコケに覆われた葉には病気が発生しません。これまでこうした株を何百と見てきましたが、カビ(炭疽病など)や細菌性(軟腐病など)の病気が、コケのない葉には時折発生しているにもかかわらず、コケに覆われた葉には全く見られません。細菌性やカビ系の病気は、その発生原因の多くが葉についた何らかの傷、その多くは害虫や葉を取り巻く物体との接触や擦れ等によって生じる傷口への感染と思われます。この様態から、付着した緑色のコケは、光を遮り株の成長に悪影響を与える一方で、そうした病気の引き金となる傷の発生や病原菌の付着から葉を守るバッファー的な役割をしているのかと推測しています。考えてみれば現地農園で山採りと思われる株の葉には痛々しいほどの黒や白色のコケがへばりついている光景(2013年度歳月記6月に写真有り)を見ますが、このコケを取り除くと取り除かれた跡には例外なく病気のない表面が現れます。コケと葉にはそれなりの共生関係があるのかとも考えてしまいます。

 しかしいずれにしても観賞植物としてはコケの付いた容姿はいただけません。数鉢の株であればティッシュで葉を一枚一枚拭けば綺麗になり手間もかかりませんが、これが数百となると問題は深刻で、葉数で言えばその数倍となり、拭いて取り除くことは容易なことではありません。また3年前にVandaの葉についたコケを台所の洗剤用スポンジを使用して取り除いたところ葉に細かな傷がつき、病気が多発した経験があります。その後スポンジを薬剤に浸けながら拭いていましたが、これもまた大変で、現在はレック社のメラミンフォームスポンジを使用しており、こちらは傷が付かないようで水だけでよく落ちます。問題が起こったのは、今年の夏に誤って2倍濃度の液肥(通常使用している液肥の規定希釈と海草ケープを原料とする液肥の規定希釈を合わせたもの)を散布してしまい、その結果、4-5日後から葉にコケが現れ始め、なかなか施肥効果が高いと当初は感心していたのですが、やがてこのコケの繁殖が止まらなくなり大変なことになってしましました。

 これに懲りて高温高湿の環境では液肥は活性剤のみとし、多くを固形肥料に切り替えました。固形であれば葉に直接肥料がかかることがありません。ポット植えでは植え込み材の上に置き、また吊り下げた株では、最近の本サイトの写真にしばしば登場している茶色で網目を持つ小型の肥料ケースを上部に取り付けることにしました。安価なのはお茶パックに肥料を入れてを吊る方法ですが、株数が多いと手間が掛かり過ぎます。下写真左はPhal. lindenii、右はBulb. inunctumに肥料ケースを取り付けた様子です。


Phal. lindenii

Bulb. inunctum

 

 もう少し見た目のケースデザインを考えてもらいたい気持ちがあるものの、こうした施肥は根や葉が十分張るまでの我慢です。その後は自分の光合成力に任せます。ただこれだけ株が密集しているためイチゴハウスで使用される寝太郎(炭酸ガス発生剤)は常に設置しています。写真が示すように最近は下垂系のランには杉皮板の取り付けが増えています。60㎝x30㎝の元サイズから、ハガキ大であれ、細長い形状であれ、ノコギリで自由にカットできますし、コストが同一サイズ比較でヘゴやコルクの1/10程です。根の活着も良く、これまで杉皮を嫌うランは胡蝶蘭、バルボフィラム、Vandaには見られません。ちなみにもっとも優れた適材はヘゴ板ですが最も高価です。最近は余程高価で希少な株以外はヘゴ板は利用しません。ヘゴ板をどのように海外から安く入手するか思案中です。胡蝶蘭原種は個数が少ないものは、海外のラン園で予めヘゴ板に取り付けてもらい、これを持ち帰ることにしました。

 

Phal. stuartianaの花芽

  Phal. schillerianaは12月に入ると花茎を発生し、2月の初旬から中旬頃に開花最盛期となります。一方、Phal. stuartianaは例年、Phal. schillerianaからおよそ1か月程遅れての開花となっています。しかし、このサイトで何度か写真を掲載しているPhal. stuartianaのクラスター株およびその分け株がPhal. schillerianaよりも一足先に一斉に花茎を伸ばし始めました。この株は今年5月に入手したもので日本での栽培初年度となるため、フィリピンと日本の気候の違いに戸惑っているのかも知れません。下写真に花茎の一部を示します。現在25本程伸長しており最終的には35本から40本近くになり、この結果300輪程が一斉開花するのではと期待しています。これらは野生種であり通常花茎は1m近くかそれを超える長さになります。それら全体が風になびく様子は壮観と思います。おそらくその時期は1月末か、2月始めと予測されますのでJGP2015のタイミングには合わないかも知れません。同じように11月歳月記に掲載したPhal. schillerianaクラスター株の開花タイミングは例年通りの様子で問題ないと思います。Phal. schillerianaの実物は、60枚を超える30-40㎝長の葉をつけた野生種ならではの迫力のある容姿ですので葉だけでも観賞価値があると思い、出店ブース内に飾る予定です。


Phal. stuartiana Infloresences

 

11月

Bulbophyllum kubahenseの新芽 3

 SarawakおよびKalimantan産Bulb. kubahenseをしばしば取り上げていますが、入荷(植え付け)から40日が経過し、新芽の発生と伸長が見られましたので写真を掲載します。下記写真の上段左から2枚目と3枚目は植え付け後に発生した新芽(赤い矢印)です。こうした状況から取り付け材や栽培環境また管理に関しては今のところ問題ないものと思います。特に左から3枚目のバルブはバックバルブからの新芽であり、まだ米粒ほどの大きさとは言えひと安心です。写真下段右2枚に見られるの肥料ケースは2-3日前に株の上部に取り付けたもので、植え付けから1か月後となります。植え付けと同時に固形肥料を与えることは、根が相当傷んでいる場合は出来ません。今回Sarawak産はこのケースでしたので1か月後の施肥となりました。

 本サイトではこれまでしばしば施肥やかん水の冬季の管理について取り上げてきました。一般書では冬季は施肥は控え、かん水頻度も少なくするとあります。温室の最低温度を17-8℃に、また夜間の湿度を80%以上に保っている限り、株は休むことなく成長しており、常に植え込み材の湿り気を保つため、かん水を控えることはしません。昼間の温室内の気温が20℃程度となる場合は蒸散が遅れるため2日置きのかん水となる程度です。一部の原種、特にデンドロやセロジネの中には花芽の発生を誘引するために、かん水頻度や最低温度のコントロールが必要なものがありますが、多くの高温系原種は四季に関わらず通年成長を続けます。またこれもデンドロ、バンダ、胡蝶蘭等に関し一般書によく書かれた、植え込み材が完全に乾燥してからたっぷりの水を与えるという理解不能な栽培指針があります。植え込み材は常に湿り気(この湿り気とはびしょ濡れではありません)があることが重要で、根(その周辺を含め)を乾燥させることは一時的であれ虐待のように思えてなりません。ほとんどのランが嫌う乾燥と、たっぷりの水によるびしょ濡れを根に繰り返していればどんな丈夫なランでも耐えられないのでは。Bulb. kubahenseも同様です。

 これらBulb. kubahenseは、順化完了後に開花準備のためにやや明るい場所に移動する予定です。なお落葉したバルブからは今のところ新芽は全く出ていませんので、これまでにマーケットで購入された趣味家の中ですべての葉が落ち、バルブだけとなったBulb. kubahenseは再生が難しいと思われます。下段の右端を除く3枚の写真は杉皮板にミズゴケで取り付けたKalimantan産で40日間で、右端のような閉じた新芽から葉が開いた状態です。Kalimantan産も開き始めて暫くはSarawak産同様に、葉は赤味を含む茶褐色です。左端写真のリードバルブには黄緑色の根と新芽も見えます。


Sarawak

Sarawak

Sarawak

Sarawak

Kalimantan

Kalimantan

Kalimantan

Sarawak

 

JGP2015出品予定胡蝶蘭原種

 胡蝶蘭の中で最も希少とされる原種の筆頭はPhal. cochlearisおよびPhal. micholitziiです。これら野生種(野生栽培株)の入手は現在不可能に近く、それぞれの生息国内においても流通はすでにないと言って良いと思います。幸いにして実生株が今日生産されており、実生株の入手はそれほど難しくありません。一方、こうした原種は植え替えを極度に嫌うため、多くの趣味家はこの処理で失敗しているのではと思います。写真にJGP2015出品用として順化中(50日程経過)の両原種BS株のそれぞれを示します。JGP2015には胡蝶蘭原種の30種程を出品する予定です。Phal. micholitziiには凡そ半数に現在花芽が出始めています。販売する株は順化完了(3か月以上)のものだけとなります。また5月に取り上げたPhal. bellinaの野生種も実生とは違い大きな葉を持ちマーケットでの入手は困難ですが、こちらも9ヶ月が過ぎ順化が完了しているため数株を出品予定です。


Phal. micholitzii (実生種)

Phal. cochlearis (実生種)

Phal. bellina  (野生種)

 

10月入手の胡蝶蘭原種Cluster株

 10月末訪問時に入手した胡蝶蘭原種をヤシガラマットに取り付けました。一つは100株を超えるPhal. pulchraです。高芽の発生頻度の高いPhal. pulchraにcluster株が必ずあると思っていましたが、フィリピンを2008年から訪問してからこれまで、ラン農園を始め、展示会等においても全く見ることができませんでした。やっと今年8月の訪問直前で100株程のclusterが入荷したとの知らせが入り、その際にはCITESが間に合わず10月末の訪問で持ち帰ることができました。Leyte産とのことですので、花は濃色の青紫と思われます。LeyteからMindanao産の本種の日本での開花時期は6-7月が多いため、来年の初夏には100輪程の一斉開花を見ることが出来ると思います。下写真の左端がPhal. pulchraで、取り付け直後のため葉にまだ張りがありませんが、大量の根にほとんど傷がない栽培株であり、落葉はごく僅かで2ヶ月程でピンとなると思います。

 今回はこれと、写真中央のPhal. lueddemanniana(約70株程)およびと9月歳月記の写真のcluster株も入手できたため、Phal. lueddemannianaのcluster株はこれまで所有していた株と合わせ6株となります。この6株の内の2株と、さらに現在フィリピン農園にある25-30株程の中サイズPhal. lueddemanniana clusterを3株ほど来年1月までに入手し、これらをJGP2015で販売する計画です。Bulb. kubahenseの1株分の価格で、下中央写真のハーフサイズが購入できれば、購入希望者も相当いるのではと考えています。野生株は実生と異なり高芽の発生率が高く大株に仕立てやすいため、30株程のclusterを親株とすれば3-4年で中央写真サイズ程になると思います。Phal. pulchraPhal. lueddemanniana以外では、Den. fimbriatumの巨大な株も入手できました。こちらはマレーシアからです。この株は農園内の大木の根元に近い幹に、活着し垂れ下がって一部の長い茎の先端の葉は地面に接触していたもので、これを目の前で剥がしてもらいました。マレーシアの主に国内向けの原種ラン園では、農園内に自生している木や植林にランを活着させ栽培している所が多く、趣味家の栽培株やこうしたラン園以外で大株を得ることはまずできません。

Phal. pulchra cluster (100株以上)
マットサイズ:60x170㎝
Phal. lueddemanniana (70株相当)
マットサイズ:35x120cm
Dendrobium fimbriatum cluster
横幅:60㎝

 なお、今年5月入手し、5月および8月の歳月記に記載したPhal. schilleriana (左)とPhal. stuartiana (右)のcluster株のその後(11月9日撮影)を再び下写真に掲載します。葉長は最長で40㎝、ほとんどの葉が35-40㎝長で、実生ではまず得ることのできない大きさです。取り付け材はヤシガラマットをベースに、ミズゴケで一部の根を抑えただけの簡単なもので、多くの根がこれまでの6か月間でマットを突き破って裏側に飛び出しています。飛び出した根はそのまま放置しており、やがて曲がってマット裏面に張り付いて伸長すると思います。株の上部にグリーンキングの固形肥料を入れた小さなプラスチックケースを置いています。このように薄いヤシガラマットとその上に置いたミズゴケだけの植え込み材にアルミ線で根を数か所を留めているだけの状態ですが、写真が示すように巨大な葉をもつ株に成長するのは野生種ならではの強さです。Phal. schillerianaの下に見えるランはPaph. rothchildianum、またPhal. stuartianaの下はVanda jennaeです。Vanda jennaeはクール系なので撮影後に移動しています。

Phal. schilleriana
2014年5月入手
Phal. stuartiana
2014年5月入手

 マレーシアにてラン農園のコーヒーの木に垂れ下がった2mを超えるDen. anosmum, anosmum dearei, anosmum huttoniiも農園にあった5割近くを3回の訪問で得たと思います。これを15mほどの温室通路の壁に、杉皮の板(和風庭の塀などに使用するもの)に取り付けて吊り下げています。農園で根を短く切らないようにと指示しながら目の前で活着した支持木から取外してもらい、それを2日後には日本に持ち帰っているため順化栽培も不要で、全株元気です。しかし通路が狭くなり、人の方は窮屈な思いをしています。

Dendrobium anosmum (dark pink, dearei, huttoniiなど)

 ところで成田の植物検疫では、CITESや検疫書類記載の数量と段ボール箱に詰め込まれた株数とを品名毎に照合しますが、上記のPhal. pulchraの写真を見ていると、、検査官はそれを床に広げてclusterを構成する多数の株を1株づつ間違うことなく数えているのかどうかと疑問をもつ人がいると思います。確かに大きなclusterで1株づつ数えていたのでは大変な時間が掛かり、仮に数が合わなければ何度も数え直しをしなければならず、検疫荷物が多い場合は大問題です。それ以前にまず1株という単位をどう定義するか植物固有の問題があります。例えば1株毎にタグ(名前札)が付けられ、タグ毎に分離されていれば、タグの枚数で数合わせが出来ますが、cluster株ではタグは全体として1枚しか付いていません。そこで高芽は果たして独立した株と見なすのか、高芽のように親株と一体ものは両者を合わせて1株とするのか、また脇芽からの成長株が付いている場合、親株と成長株はまとめて1株と数えるのか、この株が親株サイズに近くなれば、それぞれを独立した株として2株とするか等々です。高芽や成長株を元株とは別に1株と見做せば、それらの大きさが今度は問題で、数ミリサイズの高芽や脇芽まで1株とするのか、ではどのサイズまで成長したものを1株とするのか、さらにPhal. stuartianaのcluster株のように根から栄養芽が出ている場合は、この子苗を1株と数えるのかどうか。全く厄介な問題となります。

 さらに深刻な問題は、数を調べるため、株を持ち上げたり葉を寄せたりと、葉、根、茎をそれぞれ動かさないと隅々まで見ることができない葉や根が込み入ったcluster株では、数を数える作業中に間違いなく葉の数枚、茎の数本は折ってしまいます。商品価値に関わるこうしたトラブルは誰の責任かも問題です。

 台湾の入管ではclusterの場合、それを構成する株数を書類に明示しなければならないと聞いていますが上記のような問題にどう対処しているのかは不明です。重要な点は出国と入国側で共通の株の定義がなければ、特にcluster株においては、検疫書類に書かれた株数は上記のような植物固有の特性から意味が無いものになります。現状ではラン園側が申請する1株も、出入国の検査において検査官が数える1株も、明確に定まった1株としての基準はありません。

 デンドロなどはマーケットでは多くが疑球茎(Pseudo-bulb)の4-5本を1株として売られています。そもそも元株は多数のバルブで構成されていたものを、ラン園が販売するために勝手に適当なバルブ数に株分けしているに過ぎず、輸出にあたって1株の大きさが4-5本のバルブでなくてならないと決まっている訳ではありませんし、全ての品種に対し一律に決めることは基本的に不可能です。であれば4-5本であろうと50本であろうと、それぞれが茎や根で繋がっているものは、大きさに関わらず1株としても矛盾はしません。

 そこで筆者はラン園に対し、例えばPhal. Pulchraのcluster株をこれまでのように自己流で株数を数え100株と見做した場合、「Phal. pulchra 100株」と記載して植物検疫所に書類申請するのではなく、「Phal. pulchra cluster 1株」として申請してはどうかと提案しました。100株と書くから100という数字が検査の前提となり、入国側での検査官はその数を確認しなければならなくなるのだと。輸入にあたって数を偽るメリットや理由は何もなく輸出国の植物検疫所がそうした表記を受け入れるのであれば、成田での検疫はclusterと書類上に書かれた株は、株全体が繋がっているものかどうかを簡単な目視で確認するだけで株数を数える必要が無くなります。数分もあれば十分です。よって検査の効率が全く異なってきます。筆者の要請を受けてラン園主は自国の検疫所でclusterと記載ができるかを確認をしてみるとのことですが、果たして次回の訪問ではどうなるのかはまだ分かりません。

Bulbophyllum kubahense 2 (追記)

 Bulb. kubahenseは人気が高いのかアクセス数が多いため、最近栽培過程で気が付いた点を参考に取り上げて見ました。

 趣味家が入手する本種の状態はほとんどが3枚葉か4枚葉と思われます。購入の際、最も重要な留意点は根の状態です。これは全てのランに共通したことですが、根の状態が悪い場合、例え多数の葉が付いていてもまず間違いなく、かなりの葉が1-2ヶ月以内に落葉します。困ったことに本種は根が細く短く、現地からの出荷から趣味家の手に渡るまでに時間を経ていると、多くの根が黒ずんでしまっています。こうなると順化栽培が必須で、4か月程は重病人と同じように絶対安静で、温度、湿度、通風に気を付け、ひたすら新しい根がでるか、芽が伸びるかを待つことになります。

 アドバイスの一つ目は、まず根を見て入手することです。Bulb. kubahenseBulb. refractiligueと異なり一直線状に茎を伸ばして成長します。Bulb. refractiligueはややジグザグですが、Bulb. kubahenseはまず障害物でもない限り曲がることがありません。この性格はマレーシアラン園主も指摘しています。先端部のバルブの根を見て黄緑色の新しい根が無い株は入手を避けるべきです。このような根がない場合、葉が落ちるのが先か、新芽がバルブの根元から発生するのが先かの攻防となります。葉はついているものの生きた根が見られないバルブでも落葉するのは時間の問題です。まず高温・高湿が可能な温室があり、順化処理の経験豊富な人以外は株先端のバルブに元気な根が無ければ、全ての葉を落とすのが必定です。言い換えれば国内で4か月以上の順化が終わっていない(新しい根が発生していない)株を、高額で購入する勇気は筆者にはありません。

 販売されている植え付け状態にも寄りますが、根が植え込み材の中にあって見えないことがあります。購入すると決めればそれを伝え、植え込み材を除いてもらい根を見せてもらうことです。もし販売者がそれを嫌がるようであれば購入を控えるべきです。あるいは自宅に持ち帰り植え替えを行う(2-3の株数であればヘゴ板が良い)際に根を確認するので、もし多くの根がすでに死んでいるようであれば交換してもらうことを販売者と約束することです。安価なランであればそれほど神経質になる必要はないかも知れませんが、数万円するランであればそれだけのコミットは販売者の当然の義務です。

 もう一つの問題点は、Bulb. kubahenseはほぼ等間隔に葉をつけて茎は真っ直ぐ長く伸びており、分岐がほとんど見られません。全体は1本の長い紐のような形状となります。このため現地においては、3-5葉単位で切断した株分けを行い販売します。この結果、リードバブル(新しく成長しているバブル)をもつ分け株は1本のみで、50%以上の株はバックバルブ(古いバルブ)株となります。ネットでBulbophyllum kubahenseでGoogle検索すると画像検索結果とする複数の写真映像がでます。この中の赤い斑点を持つ花の写真にwww.flicker.comの映像があり、複数のバルブのついた茎が束ねて映っています。この写真と全く同じ状態で提供されたKubahenseをKalimantan産としてマレーシアで入手しましたが、これは長い紐状の株を3-4分割してそれを束ねたもので、筆者が見た限り、Kalimantan産はこうした状態で販売されています。この1束の中で頂芽を持つ株は一つで、他はバックバルブとなります。植え替えではこれを1本づつにばらして新たな支持材に植え付けることになります。写真のように株はコケ(多くが生きたコケ)の上に束ねており、すでに1本づつばらしてあるSarawak産と異なり、生きた根が比較的多くある点では良いのですが、こちらも困ったことに、これは筆者の経験ですが、バックバルブから新芽が出現するのはカトレアや他のBulbophyllumのように容易ではなく、かなり難しい印象です。おそらく高い確率で葉はやがて落ち、葉がないバルブだけが寂しく繋がった株となり、枯れるのを待つのみとなります。

 このため切断痕のない先端(頂芽)をもつバルブ、あるいはバックバブルであれば、いずれかのバルブに新芽が現れている株があることを確認してから求めるのが重要で、販売する側も全体の根が黒ずんでいた場合、バックバルブに新芽がでるまで順化を行うのが必定で、輸入した株を右から左という訳にはいきません。現地に出かけ、活着した支持木から目の前で剥がした株をそのまま持ち帰るのであれば多くの根は生きており問題はないのですが、そうでもなければ、この順化栽培はかなり大変で、歩留まりは相当悪いのではないかと思います。これも見方を変えれば、先端バルブに新根と新芽がある株を見つけた場合は多少高価でも入手する価値があるかも知れません。販売者が頂芽のあるバルブかバックバルブかを説明し、前者であればバックバルブに比べて高価にすることはやむを得ないとも考えます。輸入株でこれほど良い株と悪い株のはっきりした種は現在Bulbophyllumを150種以上(その内100種程がEMSが利用できた8年も前にマレーシアのNT Orchidから購入したもの)を栽培していますが、他に余りないのではとも感じます。こうした背景から販売者にとっても、順化前のバックバルブ株を売る訳にもいかず、Bulb. kubahenseは販売上、非常に売りにくい品種ではないかと思います。

 現在40株程栽培しているBulb. kubahenseにおいて、これまで落葉したバックバルブから新芽が出ている様態を見たことがありません。筆者は6月にマレーシアで購入したそれぞれに葉のついた5バルブの株を、小さな新芽をもつ葉のついた2バルブと、3バルブ株の2株に切断、株分けしてヘゴ板に植え付けしました。3葉あったバックバルブ株はこの4か月程で2葉が落ち1葉だけとなり、未だに新しい根も芽も発生していません。新しい芽のあった株は先端バルブが根をヘゴ板に多数下ろし、新芽も開き成長段階で、こちらは問題がありません。観察していると本種は成長がかなり遅い品種と思われます。こうした品種はこれまで成長していた支持木から取り外した場合、かなりの順化期間が必要かもしれません。

 未だ栽培は試行錯誤中ですが、10月入手の株は根の状態が悪かったSarawak産が1割程落葉し、一方、生ゴケで根が巻かれ生きた根が多くあったKalimantan産は100葉以上の中で2-3枚のみの落葉です。現在、落葉がほぼ止まり全体が落ち着いてきており、まずまずの状態です。随時栽培情報を報告します。

 

10月

フィリピン訪問

 マレーシア帰国から1週間経ち、再びフィリピンに27日から30日まで出かけてきました。目的は胡蝶蘭クラスター株、国内ではほとんど販売されていないBulbophyllumおよびVandaの入手です。またPurificacionとのJGP2015について打ち合わせも行いました。下記が今回入手した主な原種です。

Phalaenopsis

  1. Phal. pulchra cluster (100株相当)
  2. Phal. lueddemanniana 2 cluster (各70株相当/cluster)
  3. Phal. mariae 大株多輪花
  4. Phal. equestris 野生種  リップ各色
  5. Phal. lindenii

Bulbophyllum

  1. Bulb. elassolossum
  2. Bulb. inunctum
  3. Bulb. nasseri

    Bulb. nasseri

  4. Bulb. giganteum
  5. Bulb. mearnsii
  6. Bulb. sp1 (Bulb. magnum? green petals&sepals, red lip)


    Bulb. magnum?

  7. Bulb. sp2

Vanda

  1. Vanda furva (Palawan産)

    Vanda furva

  2. Vanda sp (limbata?)
  3. Vanda helvola

その他

  1. Aerides odorata alba
  2. Appendicula malindangensis

 などです。Bulb. nasseriBulb. woelfliaeと共に念願の種ですがやっとの入手です。Mindanao島Agusan産です。Bulb. woelfliaeは未だに入手できません。Bulb. giganteumはフィリピン固有種で、Bulbophyllumでは最大の17㎝ほどの花をつけます。こちらも極めて入手難です。Bulb. sp1はsepalおよびpetalが緑色、lipが暗赤色でBulb. magnumと思われます。Bulb. sp2は花が咲いていないにも関わらずシナモンの香りがするBulbophyllumです。VandaやDendroにこうした株自体に香りのある種が僅かに見られます。Vanda furvaVanda scandensはフィリピン国内でもほとんど流通がなく、このためVanda javieraeと肩を並べる程の高価な種です。生息地が焼畑やパームヤシ植林のための森林伐採で絶滅状態のようです。5本のみの入手で、株は木炭の入った素焼き鉢に植えつけて栽培されていたらしく根が炭を抱えて鉢枠状に固まったかなりの大株で、帰国後バスケットに植え替えました。多数の脇芽が出ていることから増殖はそれほど難しくはなさそうです。このVandaはPalawanとMindanao島にのみ生息していますが、途中のLuzonやLeyte島などでは発見されず、一方、Borneo島には生息しておりPhal. amabilisと似た生息分布で同時期に進化したものと考えられます。Vanda limbata?およびVanda helvolaは前者がインドネシア、後者がニューギニアに生息していますが、入手の株はいずれもMindanao島西部Cotabatoからで、本種はフィリピンでは最近の記録だそうです。Mindano島西部地帯は外務省渡航延期勧告地です。そのためかラン関しては未開の地域で、これまで知られていなかったランが発見される可能性が高いと考えられます。Vanda furvaからhelvolaまで葉形状や株サイズは全く同じで、花を確認しない限り種別判定は困難です。ラン園の担当者がこれまでに見た花の形、色からの情報や携帯で撮影した写真を基に選びました。

 Aerides odorata albaはラン農園が自家交配でタネを付けた野生株で、筆者のフラスコ苗実績から実生生産を委託されての持ち帰りです。odorata albaはそれほど入手難な原種ではありませんが、他国からの実生種は純正という確証がないため、純正苗であることをポリシーとしている筆者への委託です。委託株は預かり品ですので無償です。上記のVanda furvascandensを含め、現在所有している原種の中で、生息数が少ないとされる種は自家交配あるいは同一地域株の他家交配を行い、その実生苗を日本で生産した後、フラスコ苗としてフィリピンやマレーシアの入手元に戻す予定です。今後は手持ちの希少種に対して、こうした生息国からの実生生産の依頼が増えるかもしれません。

 ブルーの花が咲くAppenducula malindangensisはすでに100株以上栽培していますが、今回入手した株は根が良く発達しており、株もこれまでにない強い葉と茎であったため100株追加しました。4株程に花が付いており、これまで高温環境で栽培されていたからか鮮やかな紫色です。Den. victoria reginaeのように栽培温度で青から紫に変化するのではないかと思います。一方、真偽のほどは分かりませんが、Appari産とするPhal. amabilisが入荷したとのことで3株程を持ち帰りました。もしAppariにPhal. amabilisが生息するとなると、現在定説であるフィリピンでの分布域(PalawanとTawi-Tawi島のみ)を覆すことになり、開花を待って調べる予定です。現時点ではPhal. aphroditeではないかと思っています。cool系であるBulb. woelfliaeについては2月までに1株でも得たいと思っています。2つの現地ラン園でもこれまで一度も見たことがないとのことなので入手ができるかどうかは分かりません。たまたまラン園で働いている人の故郷がこの生息地に近いAppariなので、近々出かけ、ランのコレクターを当たるとのことでした。マレーシアとフィリピンへは来年1月末までにさらにそれぞれ1回は訪れる予定です。

 前回のマレーシアと今回の成田税関での取り扱いでそれまでと大きく変わったのは、入手株の多くがそれまでは趣味であったものが販売用となったことで納税が必要となったことです。これから1週間ほどは今回持ち帰った4つの段ボール箱に梱包した1,000株強の植え込みが続きます。6月以降植え込みと順化による植え替えが続き、11月2週目頃までは他の作業が全くできない状態です。未だに昨年の会津から譲渡された5年間植え替えのなかったデンドロが数百本残っています。

 

Bulbophyllum kubahense 1

 Bulbophyllum kubahenseの取り付けが終わったため写真を掲載します。筒状に丸めたヤシガラマットに取り付けた写真左端および左から2枚目はそれぞれBulb. kubahense Sarawakです。また杉皮板に取り付けの右から2枚目はBulb. kubahense Kalimantanです。両者合わせておよそ260枚ほどの葉で、株数にすると45株程となります。当初は280枚程でしたが、植え付けで一部葉を整理したため若干少なくなりました。植え付けはSarawak産はヘゴ棒にヤシガラマットを巻き、この上にミズゴケで根を抑えて細いアルミ線で固定したものです。ヤシガラロールマットの長さは1株の葉数によって45㎝と70㎝の2種類としました。またKalimantan産は杉皮板にミズゴケで同様に取り付けています。一番良いのはヘゴ板でしょうが、株を短く切ってはならないとの筆者からの要請のため、入手した1株の多くが5葉以上で真っ直ぐ伸びており、それを取り付け可能な長いヘゴ板(70-80㎝)がまずありませんし、これだけの株数ですと取り付け材そのものが膨大なコストになってしまいますので上記の取り付け材としました。

 Sarawak産は3枚から8枚の葉が等間隔で連結した株で直線的に伸び、新芽を除き全ての株で葉長は20-30㎝です。一方。Kalimantan産は10㎝-20㎝でやや小ぶりとなっています。その違いを写真右端に示します。右がSarawak、左がKalimantanです。かなり葉長サイズには違いがあります。なを同時入手のKalimantan産のBulbophyllum refractiligueの葉長はさらに短く、5-6葉連結のBSサイズで15㎝を超えたものは50葉の内2枚だけです。SarawakとKalimantanの決定的な違いは、少なくとも今回入手した株からは、葉裏の色にあります。左2枚の写真から分かるようにSarawak産は全ての葉裏が銅色と言いますか、淡いあずき色(左端)から黄褐色(左から2枚目)の色であるのに対して、Kalimantan産は表面の色と同系色で淡い緑色です。Kalimantan産Bulb. refractiligueも同様に薄緑です。ごく一部にKalimantan産Bulb. kubahenseにも左から2枚目のような色を含むものがありますが、Bulb. refractiligueの50枚の全ての葉には褐色は含まれていません。またKalimantan産でも開いたばかりの若芽は赤味のある緑褐色ですが、成長と伴に緑色に変わっていきます。

 筆者の印象としては、KalimantanにもBulb. kubahense有り、とする見解に疑いを持ち始めています。そうした現地栽培者や園主の見解は今のところ学術的な裏付けがあるものではありません。またネット検索で表示されるorchidspecies.comのKubah国立公園内で撮影されたBulb. kubahenseと、Kalimantan産として入手した株と同じ様態のflickr.comのそれとは、開花写真にかなりの相違があり、また本サイトの葉写真や茎のサイズ、また色など形態的特徴を比べても類似種であることは間違いないと思いますが、同一種とは思えない点が数多く見られます。Kalimantan産も分類学的にBulb. kubahenseであるのであれば亜種(別種として独立するほどの違いはないが、変種や同種とは言いがたい)相当かとも。一方で同じくネットでflickriver.comがBulb. refractilingueとする花写真は、flickr.comのBulb. kubahenseとかなり類似しています。こうした背景からKalimantan産Bulb. kubahenseは実在しておらず、やはりBulb. refractiligueではないかという疑いです。DNA分析による分類が必要かも知れません。これがもう少しはっきりするまで暫く葉裏が薄緑色はこれ以上の入手を控えようと考えています。

 園主の話では、Sarawak産の方が花が大きくKalimantanに比べ綺麗とのことですが、綺麗云々は好みの問題なので何とも言えません。

 Bulb. kubahenseは高温、低輝度栽培が適しているとされており、現地蘭園では根を決して乾燥させてはいけないというアドバイスがありました。現地での入荷状態は生きたコケを、葉を除く全体に巻いていました。現在温室の中では高温低輝度の場所に置き、これから4か月程順化に入ります。この順化処理でいろいろな性格が分かるかと思います。2割程の古い葉は失うと思います。新根と新芽が出るまでは目が離せません。6月に同じくマレーシアで入手したBulb. kubahenseは2株でしたが、5葉連結で古い葉長でも10㎝強であり、今回入手のSarawak産やKalimantan産ともサイズだけで見れば大きく異なっており、Bulb. refractiligueに近く、今回の株は本物であることを保証するという言葉を受けると、違っていてもそれはそれでご愛嬌ですが、前回の株では1株が葉裏が赤褐色、他が淡緑色であり、それぞれ別のラン園で入手したものです。後者は果たしてBulb. kubahenseであるのか疑問が生じてきました。産地が異なることは間違いないような気がします。おそらくBulb. refractiligueと思います。

 さて今回は、希少種とされながらも、日本の某業者や筆者などへ、かなり多くの株が販売され、しかも上記写真のようにサイズが見事に揃っていること、さらに6月の歳月記で取り上げた300ドルなら取寄せられるという怪しげな業者など、もし山採りであれば、時間をもらえれば何とかと言う筈なのに、なぜ300ドルならば取寄せられるという表現をしたのかなど全体を考えると、相当数を栽培している現地業者がいるのではと思えてきました。また現地ペナンのラン園では最近海外向けオンライン価格が1株200ドルから300USドルへ値上りしたそうです。Perakのラン園のオンラインカタログも同じ300ドルです。この50%の値上げ幅を考えると世界中から多くの注文が来ているようです。300USドルは葉長40㎝程のPhal. giganteaが購入できる現地価格に相当します。世界全体で見ればおそらく数千枚相当の葉がここ1か月程で出荷されていると思いますが、希少種とされるランが、高価とは言え、あちこちのラン園で世界に販売され、しかもこれほど纏まって一気に市場に出るケースをこれまで聞いたことが無く、その一方で長い取引のある筆者へは従来通りの価格であること等を考え合わせると、どうも植物の株ではなく投資の株のような値動きにも感じてしまいます。余裕のある人は兎も角、一般趣味家はしばらく購入は控えて様子見の方が良いかも知れません。趣味の世界はそうしたもの、と言えばそれまでですが昨年12月の歳月記で取り上げたCleisocentron国際版かなとも。しかし、いずれにしてもBulbophyllum属には奇怪な形状の花が多い中でBulb. kubahenseは美しい花です。

マレーシア滞在記

 10月のマレーシアの気温は日中32℃、夜25℃ほどで、また夕方には雷と雨があり6月と比較して暑い印象はありませんでした。今回のホテルは3番目となりますが、ラン園主の勧めでセレンバン中心街の新しく建設中のPALMホテルとなり、Bookingは園主にしてもらいました。というのはオンラインの予約システムがまだ準備されておらずホームページが不完全で部屋の価格情報もネット上にはありません。2泊なのでジャングルでテントを張って寝ることと比べればマシであろうと覚悟していきました。ところが大きなモール(百貨店)の一角に併設したビジネスホテルで、何にもまして多くのレストラン、食料品、日常品店へホテルから道路に出ることなくそのまま行け、これまでのホテルと比較して立地は最も優れています。プレミアムルームという最も高級そうな名前の部屋を予約しました。新築だけあり部屋は新しく清潔で、エアコン、いつも問題となるシャワー温度は正常で安心しました。持参するため使用はしませんが、あのプールだけは豪華なKlanaホテルにはなかった洗面用具も揃っていました。バスローブはありません。

 いつもの苦情を1つ言えば、換気口やエアコンの音が大きく、夜は静かというよりは騒音に近いことです。エアコンで最も強い送風時の音が、エアコンと天井の換気口の両方から聞こえると想像すれば分かりやすいと思います。エアコンは当然止めましたが、問題はこの換気口は部屋からは止められません。全部屋共通のシステムのようです。音で眠られないのはそれだけ疲れていないからと、渓流沿いの日本の昔風の温泉宿の川の音を聞いていると思えばよいと諦めました。価格はソファがある訳でないプレミアムルームでしたが凡そ6,000円/1泊で、これまで海外に宿泊して最も安い値段でした。ご存知の方も多いと思いますが、海外ではホテルは一人幾らではなく、1室幾らのシステムであり1室あたり2名の料金です。よってこの6,000円は二人で泊まっても同額ですので日本式で言えば一人当たり3,000円相当の料金となります。スタッフは皆好感がもてました。ホテルの朝食はバイキングスタイルですが、ムスリムやインド系住民の多いセレンバンならではの、牛肉や豚肉の入った料理はなく肉は鶏肉のみです。欧米風の宿泊者は一人も見かけませんでした。次も泊まりますかと聞かれれば悩むところです。次回初日はクアラルンプールシャングリラホテルに、最終日にこのホテルでもよいかと言ったところです。

 今回の訪問は18日土曜日の午後便で成田を立ち21日の早朝に成田着の、現地2泊、機内1泊というドキュメント修正申請を考えれば最短の日程です。これまでのおよそ6年間フィリピンに、また3年間マレーシアにそれぞれ毎年3回ほど訪れていますが、ラン園、展示会場、ホテル、レストラン、土産店以外は一度も日程の合間を縫って観光地等に出かけたことがありません。現地蘭園のオーナーの方たちは最初の2-3年は、余裕のある日程をつくり、いろいろな名所などを見てはとの勧めもありましたが、最近は言っても無駄と理解したのか何も言わなくなりました。いつものようにランを詰め込んだ大きな段ボール箱をもって帰国していると、JALのスタッフではないですが、そろそろ現地ではMr. Orchidと呼ばれそうです。

マレーシア訪問

 今回はデンドロとBulbophyllumが中心の購入です。まずBulb. kubahenseですが、6月の歳月記でBulb kubahenseの希少性と価格について取り上げました。Bulb kubahenseの生息地はBorneo島Sarawak州の国立公園内とその周辺とされています。こうした限られた環境による入手難から現在市場に流通しているBulb kubahenseの多くはKalimantan産のBulb refractingueであろうとのマレーシアラン園主の話を前回紹介しました。新たな情報ではKalimantanにもBulb kubahenseの生息地があるそうです。我々がマレーシアを訪れた6月のPutrajayaラン展では、どの原種ラン園にもBulb kubahenseを見かけず、数か月前の注文と偶然とで会員を含め4株が購入できましたが、価格は1株単位で葉は1-3枚です。ところが今回の訪問では、価格は葉1枚当たりの設定に変わり、そのためか前回の3倍程高価になっていました。しかしバブル当たり1枚葉のBulb kubahenseに対しては、葉の数すなわち葉の付いたバブルの数で価格が変化した方が合理的あるいは良心的な価格のつけ方とも言えます。それ以上にBulb. kubahenseは通常10バルブ以上に成長し、これを3バルブ単位で切断して商品にされた場合、バックバルブ(古い方の茎)では新芽が出ないことがあり、細かく切られない方が栽培には断然好ましく、筆者は入荷時の株は絶対分割しないようにと伝えています。

 さて、高価な商品にもかかわらず世界中にかなりの購入希望者がいれば必ずその機会を捉えて利益を得ようとする業者が現れるのもビジネスの道理で、マレーシア業界人の話しによると、最近、日本の某ラン園が200葉分のBulb kubahenseをマレーシアの2次業者から購入したそうです。200葉と言えば、3葉を1株で換算すると約70株相当となります。おそらくこれらは遅かれ早かれB to Bで業者から業者へと流れ、日本の市場に出回るか、すでに出回っているかも知れません。

 興味は、某ラン園がこれを幾らで販売するかです。Bulb kubahense1葉当たりのマレーシアでの日本への卸価格はおよそ60リンギッドと推定します。すなわち1株3葉として180リンギッド、約5,400円です。5,400円は日本のラン園にとっては仕入値ですから順化(新しい根と新芽の伸長の確認まで)栽培を少なくも3ヶ月間は行うものとして、搬送、歩留まり、栽培や販売等のコストを考えると採算バランス値はせいぜい2倍の1万円程でしょうか。マレーシアラン園の、世界に公開しているネットでの小売価格は200 - 300USドルのようです。

 マレーシアラン園ではこの価格で利益を上げている訳で、日本でも直輸入したものを、順化処理を経ず即販売であればこの程度の価格で十分利益は出ると思いますが、順化を前提とすれば日本のラン園での利益は前記1万円からですので、どこまで利益を乗せられるかは、まさに需要と供給とのせめぎ合いとなります。 しかし、仮に某ラン園がこれを3葉を1株として5万円で販売するとなれば、全株の仕入れ値36万円で、売値350万円ですから歩留まりを考えても笑いが止まらないかも知れません。某ラン園が直接趣味家へではなく、さらに他業者へ販売することも考えられ最終的な市場価格は何倍にも高価になるかも知れません。

 ところで筆者ですが、下記の東京ドームラン展JGP2015の関係で今回280葉相当を入手しました。内訳はSarawak産が160葉、Kalimantan産が120葉です。当然筆者は某日本の業者が支払ったと現地で噂される金額の半額でも買いませんので、仕入れ値は推して知るべしです。

 偽物と本物の議論ですが、売主はこの280葉のBulb. kubahenseは本物であることを保証するそうです。そこで保証とは具体的にどのような対応を意図するのか説明してもらいたいと問いただしたところ、自信があるのか、間違ったら交換でも返金でもよいとのことです。しかし海外から来ての取引に交換で済む問題でもなく、どのような根拠で本物であると言い切れるのかさらに説明を求め、両者の違いをいくつか説明してもらいました。さらに確証を得るために偽物を演じさせられているBulb. refractiligueも同時に50葉入手しました。隣り合わせで比較するとその違いが分かりますが、単独ではまず分かりません。特に子株では無理です。近日写真でその違いについての解説を掲載します。ちなみに、Bulb. refractiligueは本物の1/10以下の価格でした。Bulb. refractiligueも希少種でありながらこの差は余りにも大きくBulb. refractiligueに対して同情せざるを得ません。

 今回、デンドロビウムは4種ほど新種がストックされており、それらをそれぞれ20株ほど入手しました。その中で花全体がブルーの種と、かなりサイズの大きいピンク色の花をもつ2種類が含まれており、強いインパクトを受けました。いずれ国内で話題になるのではと思います。いずれもスマトラ産とのことです。これらも下記のドームラン展に出す計画です。1mを超えるCleisocentronを100株程、来年1月までに集める依頼を予定していましたが、こちらのデンドロの方が人気が出そうで来年1月までにそれぞれ100株程集めるように依頼しました(その後これらは山採りの可能性大との判断で中止しました)。胡蝶蘭は実生ですがPhal. cochlearisBSサイズを40株、Phal. appendiculataPhal. micholitziiなどをBSサイズ20株など人気のある原種を、またBulbophyllumは前記の2種類以外にBulb. sulawesii alba、Bulb. callichroma, Bulb. maculosum, Bulb. contortisepalum cluster, 赤褐色セパルをもつBulb. lobbii f. sumatraなど新種や日本市場では入手難な種を10種程得ました。いずれもJGP2015用で、それまでは購入者が安心して栽培できるように4か月間の順化に入ります。

東京ドーム国際ラン展JGP2015

 来年の東京ドームラン展に本サイトが出店することが決まり、今月18日にマレーシアに出かけました。出店のための販売品の買い付けが目的です。個人として出店は例がないため、審査も得て筆者の個人会社VRT Japan名で出店です。これまでの7年ほどのWebサイト実績と90名近い会員をもつ評価を受けての出店認可だと思います。この決定により、原種ラン園として最大の規模をもつPurificacion Orchidsと共同で、2ブースサイズに、Purificacionがフィリピンの原種を、本サイトの方はマレーシアとインドネシア原産の原種を中心に販売する予定です。Purificacionは3年毎に開かれるフィリピン国際ラン展の議長役を来年は務めるそうで、同じ月の開催となり忙しそうです。

 東京ドームラン展が来年は25周年にあたることもあり、本サイトもラン原種趣味家に対して、これまでの出店業者とは一味違った、原種サイト出店ならではの特別なセールスを計画しています。JGPでは来年から販売品の30%はラン以外の植物の販売ができるようになりましたので、本サイトでは胡蝶蘭、デンドロ、バルボフィラム原種を中心にPurificacionと共に、Hoya(桜ラン)、蟻シダ、食虫植物もその範囲内で扱う予定です。 詳細は追って報告します。



9月

フィリピン野生ラン保護活動団体

 フィリピンには上記のようなラン原種保護活動団体があるそうで、5月訪問時にそのメンバーの植物遺伝子学研究者と昼食を挟んで話をする機会があり、その中でこのサイトでもしばしば取り上げている実生問題(現状のマーケットにおけるラン原種とされる多くの実生は名ばかりで、実態は交雑種が大半を占めていること)や、フィリピンのラン原種産業の問題点などを話しました。その際、交雑種問題はラン原産国の園芸産業界自身が対応を図るべきであることを説きました。その一つとして、原産国ラン園は連携して、生産する実生の系統(生息地と交配関係)をオーソライズする機関を立ち上げ、その機関の保証を付加価値とするビジネスモデルを構築すべきであること、別の言い方をすれば純正種としてのブランドを創ることこそが、原産国が本来有利であるべき筈の原種ランビジネスの世界で劣勢にある現状から抜け出す唯一の手段でもあるとも説明しました。すなわち原種はそれぞれの地域に依存した固有の種であり、系統と共に生息地も大きな商品価値をもつからです。

 分かりやすく表現すれば、われわれ世界の原種愛好家は、あなたの国を原産とするランを、あなたの国からでなく、タイや台湾やがては中国から入手し、それでもそれらが本物であれば、培養技術やビジネスの力の差としてやむを得ないが、フラスコの中で無計画に混ぜこぜにされた雑種が、名前だけフィリピン原種とかマレーシア原種と呼ばれ、さらに現実の問題として、あなた方はそうした混ぜ物をそれらの国からラベル名を信じて購入し、あなた方自身が自国の原種として世界に販売している、それで良いのですかということです。たかが花と言われるかも知れませんが、原種であればこその世界を愛でる人が世界中には多くいて、それに答えるのは、これまでの他国が生産している残念な状況を考えれば、自国の花である生息国しかこの問題を解決できないことと、またそうした系統の維持・管理は結果として種の保存にもつながると話しました。

 その後、日本に戻ってから上記のグループから招待メールが来るようになり、共にランの調査と保存について研究したいとのことです。とは言っても日本とフィリピンですので容易に参加できないのですが、メールでの交流から始める予定です。いずれにしてもそうした動きが生息国で出始めたことはうれしい限りです。マレーシアやインドネシアも同じようになってもらいたいと考えます。PurificacionやMalvarosaなどフィリピンラン園の一部では組織培養のためのラボを立ち上げており、筆者としてはフィリピンやマレーシア原産の希少種等を多く所有していることから、まずそれらの培養に協力することになるかも知れません。観賞用交配種を作出することは園芸産業として必要ですが、他方では系統を重視した原種も、世界市場にやがて供給されることを期待しています。

 Phal. lueddemannianaクラスター株

 最近は海外のどのラン園に対しても、大株は購入するが1株毎に分割された株は希少種、変種あるいは新種以外は興味がない旨を伝えており、そのせいか頻繁に大株の情報が入るようになりました。すでにどのラン園内にもデンドロビウムはしばしば見かけるものの、胡蝶蘭原種の大株はほとんどなく、ランの栽培を趣味としているラン園主の知人へのアプローチと説得によってしか得ることができなくなりつつあります。大株とは、親株は数株の野生種であったものを長年の栽培を通し脇芽や高芽によりクラスター株に成長させたものです。クラスター株はジャングルではしばしば見られると思われます。しかし木に活着した大株を分割しないで取り外すことは、実際の自然の大木に根を下ろした様態を見れば分かりますが不可能であり、傷のない50株を超えるようなクラスター株を人工栽培以外で得ることはできません。

 下の写真は、つい先日中規模ラン園から送られてきたPhal. lueddemannianaのクラスター株の写真で、50株以上の非常にきれいな大きな葉を持つ見事な株です。このようにPhal. lueddemanniana野生種は成長すると全ての葉は下垂し、通常室内でポットに立ち植えされ、葉を左右に展開する様態とは全く異なっています。肥料を与えることなく自然に任せたままの栽培であるにもかかわらず葉長も倍近い大きさです。先日友人から分譲できるかどうか交渉をしており折り合えば写真を送ると園主からメールがあり、数日後に写真が送られてきたことはその友人が売る気になったことのようです。後は価格をどう折り合うかとなります。実生ではこれだけの大きな株をつくることは何年かけてもまず無理で、葉の大きさからみても野生種を原資としていることが伺われます。おそらく5年位かけたのではないかと思います。

 このようなクラスター株を最近栽培していて分かってきたことは、例えば大株を3-4分割してクラスター当たり10株程とし、それを5年かけて栽培すれば、日本の温室内であっても、このサイズの株に成長可能と思われることです。親株が2-3株のサイズでは時間が掛かり過ぎますが、ある一定のサイズ(10株程)からは急速に大株となります。それは一つの株から2-3本の花茎が発生し、それぞれが高芽を着けるため、まさに2分岐増殖となるからです。当初の3年間程はやや高めの栽培温度(夜間温度20℃程度)とし、花をつけることよりも高芽を発生させることを優先すればさらに早く大株が得られます。一斉開花を得たいのであれば、Phal. lueddemaniianaの場合、夜間温度を18℃位まで下げ、昼夜の温度差を10℃とした環境に2か月程置けば可能となります。

 筆者はこれまで2年間ほどあちこちの海外ラン園に胡蝶蘭だけでなく、他属についても訪問するたびに大株の有無をまず尋ねるため、いくつかのラン園では前記のような野生種を原資としたクラスター株の栽培を始めるのではと期待しています。どうも現地では、例えば10株注文すると、大きな株が1つしかない場合、何としても10株にしようと数合わせのために10株に分離してしまう習慣があります。これを避けるため、たとえ1株でも10株相当の大きさの株であれば10株分としての価格でよいと伝えているのですが、十中八九守られません。同じ品種であるにも関わらず、大きな一株と、小さな一株を10倍の価格差にして良いものか、買ってくれないのではないかという不安が園主側にあるのかと思います。6月にマレーシアを訪問した時、展示会場でヘゴの塊に活着した50株以上のBulb. medusaeのクラスターを入手したのですが、翌日の梱包時にクリーニングのため、これがヘゴから取り外され3-4本のBulb毎に細かく切断されていたことには呆れました。作業者に園主が伝えてなかったためです。株の大きさ自体も大きな価値を持つという考えを園主から作業者まで一貫して理解してもらうだけで2-3年かかります。

室内では難しいですが、温室を持っている方には好みの原種大株を温室のシンボルとして1株は入手されるのもこれからは一考かと思います。


  ところで15年ほど前、熱帯魚でディスカスという、趣味家にとって憧れの魚がいました。当時、マレーシアペナン島には多くのブリーダーがおり、国内熱帯魚店のオーナたちおよそ10名と共に、趣味家は筆者を含め2人でしたが、ペナン島まで買付に出かけました。ゴーストディスカスを作出したブリーダーを訪問したとき、作出者はそれまで中華料理用食材のモヤシを栽培し生計を立てていたのですが、偶然にも飼育していたディスカスから、頭のトップが黄色の突然変異体を得、そのブリーディングに成功して大金を得たのでしょう、それまでモヤシを栽培していたトタン屋根小屋の一つに真新しいベンツが2台もおいてあり、一方の小屋では、パンツ一枚上半身裸で汗を流しながら、ディスカス水槽の水替えをしていました。錆びついた小屋のベンツと、2-3人は入れそうなモヤシ壺と、裸のブリーダーのアンバランスな風景には皆笑ってしまいました。そのとき引率者が言うには、彼からゴーストを買うには月曜日が良い、特に悪いのは土曜日との説明がありました。なぜかと聞いたところ、ペナンでは日曜日に草競馬があり、彼は土曜までにディスカスを売って得たお金を全てこの賭け事に使ってしまう。そのため月曜日にはお金がすっかり無くなるので、魚を買い叩くには月曜日が最良であるというのです。半分は冗談と受け取っても、その風貌からはかなり真実味があり同行者は皆、なるほどと納得していました。

 ランも珍しいものを求めれば求める程、その探す範囲はラン園から現地趣味家にまで及び、毎回のように趣味家を訪れ入手したい株を探しているのですが、こちらが入手したい原種(例えば1m近いPhal. gigantea)は現地であっても希少株であり容易には手放してくれません。同行する園主が言うにはもう少し待てばその気になるかも知れないと含みのある言い方をするので、上記の、昔あった話を思い出しながら次を期待し出かけています。

Trichoglottics atropurpurea f. flava

 下写真左の15mに及ぶ通路の左側は、すべて濃赤色の花をつけるTrichoglottis atropurpurea (旧Trichoglottis brachiata)です。Purificacion Orchidsラン園の一角で、余りに多くて何株あるのか数えきれません。。今回の訪問前に別の中規模ラン園から珍しいTrichoglottis brachiataが入ったがどうかと写真が添付されてきました。濃赤色ではなく、セパル・ペタルが濃淡のない綺麗な黄色一色で、リップが純白のflavaタイプでした。インターネットで同じような変種がないか探したのですが見当たらず、それではあるだけ買いましょうと6株入手した1つが右写真の株です。訪問した時点で花もついており写真通りでした。Trichoglottis atropurpureaは4株程栽培しているのですが、この属はこれまで見過ごしてきたため余り知識がなく、Trichoglottis philippinensisのflavaタイプのような気もします。いずれにしても希少株であればと掲載してみました。

 

Phal. cassandra

 いつも訪問するフィリピンの中規模の原種専門ラン園の一つに、これまでの原種にはない、この聞きなれない名前の胡蝶蘭が100株ほどポットに植え付けられていました。ラン園スタッフの話ではLeyte島からの入荷とのことです。これまでLeyteの業者は地元の野生種が中心で交配種の栽培は聞いたことがありません。はてと思いながら、どのような花が咲くのかとスタッフに尋ねたところ、多数分岐する花茎にPhal. stuartianaのような花がいっぱい咲くとのことでした。どうしたものかと迷っていたところスタッフはさらに、未登録の新しい胡蝶蘭なので、オーナーがこれまでの付き合いから、筆者が購入することは間違いないと思い、すでにCITESを取っているとのことでした。当のオーナーはこの日、展示会の方に出向き不在でしたが、新種の期待を持ちつつCITES申請通り20株購入しました。ホテルに帰って、このcassandraという名をインターネットで調べたところ、今から120年程前のずいぶん昔にPhal. equestris x Phal. stuartianaとのPrimary Hybridとして登録されていることが分かりました。

 考えてみれば、未登録の新種にCassandraなどと言った洒落た名前がついている訳が無く、しまったという思いよりも、すでに日本に持ち帰るための段ボールの中にあっては、クロス(交配)したカサンドラかと、ソフィアローレン主演のイタリア映画、カサンドラ・クロスを思い浮かべてしまい、ジョークとしては上出来と思うしかなくなりました。珍しいものがあれば必ず知らせるようにと伝えている筆者としては責めるわけにもいかず、むしろ新種ではと思っての配慮を評価すべきでしょう。次回の訪問でオーナーの顔を見るのが楽しみになりました。問題はそのことよりも、これまで野生種しか扱わなかったLeyteの農園が、このような交雑種を扱ったことの方が深刻で、彼らに無菌培養によるフラスコ苗を生産する設備や技術があるとは思えず、とすると恐れていた台湾やタイの業者がこうしたローカルの原種ラン園にまでフラスコを売り込み始めた可能性が高いことになります。実生であっても純正種であれば何の問題もありませんが、マレーシアの原種専門ラン園でもすでに実生株は、ほとんどがそれらの国からのフラスコ苗であり、以前本サイトで取り上げたように、原種とされるこれら実生株の50%以上が交雑種という過去3年の実態が、フィリピンラン園にも及び始めたのかという思いです。無論、原種愛好家やラン農園がどのようなコレクションや交配のポリシーを持っていても良いのですが、花形態がどうであれ、いわゆる種の継承という観点からは、いずれにしてもタイや台湾からの実生株に原種はもはや存在しないと筆者自身は割り切っており、益々原種を見極める作業が大変で、純正な原種培養の必要性を痛感しています。

 

フィリピン再訪問

 フィリピンに8月30日から3泊4日で訪問しました。今回は午後便のJALで立ち、21:50マニラ着、帰りは朝便で14:55成田着ですので、フィリピン滞在は実質2日の、いつも通りの強硬スケジュールです。今回も1.2mx45cmx45cm箱2個と、このハーフサイズ1個の計3箱となりました。これだけの頻度でカートの前が塞がる程の大きな段ボール箱を毎回抱えて帰国していると否応なく目立ってしまい、マニラやクアラルンプール空港のJALチェクインカウンタではほとんどの人が知り合いとなり、また成田の税関では今度はいつになりますかと聞かれてしまいます。

 今回はPOS(Philippine Orchid Society)主催のMid-Year Orchid Showの見学と、予め頼んでいたクラスター株の購入のためです。フィリピンでは7月、ラン農園が集中するBatangas, Cavite, Tagaytayに台風名ラマスーンが直撃し、多くのラン園でラン栽培ハウスが壊れ、ランも相当数被害を受けたそうです。特にカトレア栽培農園の被害が大きいとの話でした。そのせいかラン展の展示エリアには開花株がいつもより少ない印象でした。2014年度のMid-Year Orchid Showの展示テーマはVanda Sanderianaで、Vangie Goさんおよび Dr. Sanchezさんの、フィリピンではトップレベルのVanda栽培者の作品が展示されていました。

 展示会場ではPOS会長のVangie Goさん本人から直接Vanda sanderianaのダークピンクを、またDr. sanchezさんからはPurificacionを通してyellow typeを入手しました。Purificacionのオーナーと一緒に見て回っていたため、オーナーの知り合いでは安くするしかないと、あちこちのブースで言われながら、Vanda以外のランもかなり安い価格で購入できました。下写真中央と右は持ち帰った株をそれぞれ9月5日に浜松の温室で撮影したものです。


一般的なVanda sanderiana 原種

Dark pink Vanda sanderiana 原種

Yellow Vanda sanderiana 原種

 今回はVanda luzonicaNepenthes(ウツボカズラ)が中心であり、これまでで合計5つのVanda luzonicaのクラスター株を得ました。最大のものは10茎からなり、これらは下写真に示すように、市販の大サイズバスケットの底木を外して複数筒状に繋ぎ合わせて植え付けています。この中で1mを超える茎を含め10茎からなる写真左から2つ目の株は初めて見る大株です。写真下の数値はバスケットから頂芽までの高さと、茎の数です。Vanda luzonicaのエリアも台風被害があり、多くの株が倒れたそうです。倒れると頂芽がダメージを受けるようで、単茎性のVandaには致命的です。その中でyellowタイプのすばらしいVanda sanderianaがありましたが、頂芽が無くなっており諦めました。今思うとそれでも購入しなかったことは間違いであったと後悔しています。頂芽がだめでも花は咲くのでMother plantとして交配に利用できることを忘れていました。


Vanda luzonica #1 
1.2m 3茎(根含め2.2m)

Vanda luzonica #2
1.1m 10茎

Vanda luzonica #3
80㎝ 4茎

Vanda luzonica #4
1.05m 7茎

Vanda luzonica #5
90㎝ 4茎

 入手したNepenthesはネズミも捕獲するという特大サイズのピッチャー(捕獲嚢)をもつフィリピンMindanao原産の食虫植物Nepenthes truncatamerrillianaburkeiの大株が今回は中心ですが、浜松の温室では害虫に悩まされている腹いせに、これらをあちこちに吊り下げて、虫を捕ってもらおうと冗談半分で購入したものです。会津ではNepenthes alataが結構、置き肥に集まるコバエを捕っていました。ベアールートでの乾燥に弱いこれらは、根をミズゴケで巻き、株全体をビニール袋に入れた後、空気を入れて膨らまし、その中に霧を吹いて湿度を100%近くしての持ち帰りとなりました。ラン以上に神経を使う搬送です。


Nepenthes truncata まだ小型のピッチャーサイズ

 一方、大株として5月歳月記に記載した110株のPhal. lueddemannianaとほぼ同じサイズのPhal. pulchraクラスター株が訪問2日ほど前に入荷したとの知らせがありました。ルソン島原産だそうで状態も良く花が一斉に咲けば100輪ほどの青紫色の花が見られます。こちらはCITESが間に合わず、Depositだけを済ませ、日を改めて再度受け取りに伺うことにしました。胡蝶蘭原種についてはPhal. schillerianaのみを持ち帰りました。


今回持ち帰りのPhal. schilleriana。ほとんどの葉長が30㎝以上で、最長が43㎝は初めて見るもの。

 下写真は展示会場で購入したDendrobiumの特大株です。これで1株です。写真上部に映っている円形状の茶色の塊は根です。なるほどこのような大株から手ごろな価格で販売するために、3-4本のBulb単位で分割すれば、分割された株には根がほとんどない状態となるのも無理はないと思いました。すでにCITESも取っており、これを持ち帰ろうとしたのですが、出荷消毒の際、蟻が次々と湧き出てきたため、次回の訪問時まで預けることになってしまいました。また右はPhal. mariaeの100本近い株から1本だけ見つけた株です。花の艶があまりなく、多くが抱え咲きであること、セパル・ペタルがPhal. bastianiiと比べて丸みがあること、葉が薄く濃緑色である点ではPhal. mariaeですが、ベースが黄色で花茎が立っていることからPhal. bastianiiの形態でもあり、両者は同じような場所で生息し、また近縁種ですので自然交配株かも知れません。Phal. mariaeもCITESを申請していいなかったため、これも次回までリザーブしてもらうことになりました。


Dendrobium sp.

Phal. mariae

 こうした株をこれだけ購入すれば、かなりの支払額になっているのではと思われる方が多いと想像します。しかし前にも述べましたが、現地に何度も出向き、ラン園と長く付き合えばランの購入費はおそらく多くの人が想像されるであろう価格の10分の1以下です。3か月前マレーシアに会員の方と出かけましたが、会員の方が、日本で購入すればシャングリラホテル3泊分の宿泊費相当の価格が、現地では食事代1回分程度の価格であることに驚かれていました。フィリピンも同じです。フィリピンの国民平均年収は45万円です。日本の約10分の1です。ミンダナオ島、レイテ、ルソン島の地方ではさらに年収は10万円程低いと思います。筆者はラン園がネットに掲載している海外向け価格では購入していません。これまで7年間、年3回は訪問する実績から、ラン園によっては現地国内でのB to B価格で購入しています。この価格は、価格表がある訳ではなくその都度の在庫や入荷状況で決まります。マレーシアも同じです。よって日本では例えば10万円はする株も1万円以下ですから、大半のランは1,000円以下です。さらに日本・フィリピンの航空運賃はエコノミーで往復45,000円、ホテルは様々ですし、食事代も推して知るべしです。それなりの数、あるいは日本で入手難な品種を購入したい趣味家にとってこれらの国は別世界であり、しかも日程さえ許せば成田から4時間半で出かけられます。それがなぜ日本のマーケットではランがそれほど高価になるのかは、土地、人件費、栽培費、広告(website管理費)などほぼ全ての経費がフィリピンの10倍以上であるからです。

 ちなみにフィリピンと日本国内の価格差の驚くほどの違いを、花ではなくヘゴ板で知り唖然としました。下写真のヘゴ板は約25㎝x15㎝程のサイズで、今回の展示会で植え込み材業者のブースで販売されていました。ほとんどの胡蝶蘭原種に合うサイズです。国内ですと30x20㎝の中サイズで1枚1,500円ですので、その半分として750円相当となります。これがなんと1枚25円です。250円の間違いではないかと確認しましたが間違いなく、インドネシアからの輸入品とのことです。日本でもインドネシアからの輸入ですが、どうして同じ輸出国インドネシアから日本で販売するまでに、生体でもなく、何処にでも在庫可能で、光熱費もかからない商品に、それほどの価格差が生まれるのか、その仕組みが理解できません。国内の複数の小売業者の価格がほぼ同じであることを考えると、おそらく小売業者に渡るまでに高額になっているのでしょう。それではフィリピン経由で入手しようと思いましたが、現在フィリピンでは、ヘゴはCITES認可が必要とのことでした。日本ではフィリピンで買うラン本体よりも高価なヘゴ板に頭を抱えており、インドネシアの業者を紹介してもらうことにしました。ヘゴチップと共にコンテナ単位の輸入を考えています。日本で現在の5分の1程の価格になれば多くの趣味家が購入するのにと思います。

 

8月

野生種と実生種の容易な見分け方

 原種愛好家はランを購入する場合、販売業者に対して、それが野生株なのか人工交配(あるいは細胞培養)による実生株かを問うこともあろうかと思います。系統を守った交配が行われていればこのような質問は不要なのですが、実生から純正な原種名通りの特性が現れるのが現在のマーケット品では稀であるからです。

 株が野生株、すなわち原資(元親)は山採り株であったものから栽培を通して増殖(分け株や高芽等)された株と、フラスコ内で育種された実生株とには大きな違いがあります。この違いは根の様態に現れます。2種類の根の写真を示します。写真1が実生株、写真2が野生株です。違いの特徴は主根先端の根の様態にあるため、実生株であっても数年の間に数回の植え替えの都度、古い根が整理されていけば野生株と見分けはつかなくなりますが、販売を目論む場合、4-5年もかけて実生株を野生株に見せかけるために育種するとは考え難く、フラスコ出しから2-3年の実生株は写真1のような形態と考えて良いと思います。

 実生株のフラスコ内およびフラスコ出しから1年間程の根は、細く柔らかい主根(単一茎では茎の根もとに相当します)から順次、側根を発生し成長します。やがてこの側根は伸長し太くなっていきますが、根もとの主根の伸長は止まったままとなります。この結果、主根の先端部は写真1に示すように一か所から多数の側根が四方に伸びた密集した状態となります。一方茎は伸長し、茎側に新たに発生する側根は、間隔も開き、植え付けの環境に応じて伸長する方向も疎らとなります。こうした特性からフラスコ培養苗には写真1の根の様態が形成されます。写真はPhal. equestris、Phal. aphrodie、Phal. lueddemanniana、Phal. schillerianaなどのすべて異なる種ですが、いずれも主根先端の周りの様態は胡蝶蘭原種すべてに共通しています。3年以上経過した株では、主根先端部の側根は古くなり枯れることが多いため、植え替え時には主根先端部を切断して取り除かれていきます。しかし最下段右写真のように先端をカットしても、幼苗時に形成された根の様態は数年留まります。

 東南アジアからの多くの輸入株では、成長に伴ってポットサイズの変更が必要になると、この幼苗時の根を切る手間を省くため、それまでの植え込み材をそのままにミズゴケ等で覆い足して新しいポットに植え替えることが多く、幼苗時の根は残ったままとなっています。

写真1  実生株 主根先端部

 一方、野生株は山採り株を始め、脇芽、高芽等の増殖株でいずれも支持体からの取り外しあるいは株分けが行われます。これらは写真1のような側根の様態はなく、また取り外すには元親との接合部を切断しなければなりません。この結果、写真2に示すように主根の先端部分に相当する場所は太い切断面(赤矢印で示す)となります。あるいは高芽には花茎の一部が残ることもあります。野生株は、実生株に見られるような主根先端部が柔らかく側根の発生が放射線状に密な様態は無く、疎らで不規則です。

 
写真2  野生株 主根先端部

 写真1および2に示すように実生と野生株の根の形態の違いは明白で、実際根を洗浄した後、手に取ってみれば容易に判断できます。一方、海外ラン園を訪問すると、トレーに多数の、株サイズや葉が均一で外見上は実生株に違いないと思われる株にもかかわらず、園主が野生株であると説明する場合があります。その株が購入したい品種である場合は、直ちにどれか数本を選びポットから取り出して上記のような根の状態をチェックします。実生と見間違える程の株が、実際は野生株であったケースが下の写真です。

 写真はPhal. pulchra Leyteでサイズ、葉色も均一で病痕もなく実生株に見えますが、すべて主根部分に大きな切断面をもつ野生株でした。おそらく本サイトで取り上げたPhal. lueddemannianaのようなクラスター株を1株毎に分離したものと思います。この地域を原産とするPhal. pulchraはMindanao産と同じくダーク色が多くその野生種は滅多に入手できないため100株近く購入しました。胡蝶蘭原種において、開花した花が同じようなパターンや色合いを持っていた場合は、以上のように野生か実生種かは根を調べれば分かります。野生種でありながら同じ形状と色合いの場合は高芽である以外、まずあり得ません。例えばPhal. schillerianaの野生株を現在50株(クラスター株を除く)近く所有していますが、野生株は前記高芽と思われる(切断面が見られる)同一ロット株以外、全て微小ですが異なっています。野生種では同じ地域生息種である場合、Phal. amabilisPhal. aphroditeのような白色のセパル・ペタルをもつ種であっても、全体として共通する様態はあるものの、葉色、サイズ、花形状、リップ側弁のパターンが個々に異なります。

Phal. pulchra Leyte 野生種

 以上のようにマーケット上での多くは野生株と実生株の識別が可能ですが、それが不可能なケースは、前記した4-5年経過し、古い根を整理しながら植え替えを2-3度したBS株、あるいは元親が実生で、その大株から高芽を得た株です。いずれも量産には向かない育種であるため遭遇する頻度は少ないと思われるものの起こり得ないとは言えません。よってこの識別法は写真2であれば100%野生種であると解釈するのではなく、写真1のような根の様態であった場合は100%野生種ではないという判断に用いることになります。

 

浜松の夏季2

 会津から浜松に移って2度目の夏を迎えました。昨年の夏は会津から搬入した株の植え替えで忙しく、また温室も新築から間もなかったため、夏季の栽培を本格的に体験するのは今年からとなります。栽培を振り返って、ここ浜松での会津との違いは害虫被害が目立って多いことです。これは気候の違いによるものと思いますが、本サイトでも取り上げた、冬季から初春にはゾウムシ、マイマイやナメクジに、夏に入ってからは神出鬼没なハダニに悩まされています。

 会津では凡そ5月頃から10月までは、多くても1か月に1度殺菌剤と、2-3ヶ月に1度殺虫剤をまく程度で良かったのですが、浜松ではこの期間、殺虫剤を毎月まくことが必須で、これは浜松が害虫も住みやすい温暖な気候であることと、温室が庭木に囲まれていることが影響しているからと思います。今年は殺菌・殺カビ剤は、バリダシン(植え替え時はタチガレンエースと併用)、スターナ、ダコニール(ベンレート)、トリフミン、ナレート、ポリオキシンの内、効果(適用病名と予防及び治療の両者)の異なる2種類を混合、殺虫剤はオルトランかアクテリック、ダニはコロマイトとダニカットの交互使用となっています。

 会津には無かった浜松特有の現象は、葉上に黒い点が現れその周りが水浸状となるものと、葉裏で黒く変色した個所に数点の小さな白い粉状(50倍拡大鏡で円形の塊)のものが現れるもので、いずれも症状は発症点が黒変し、軟腐病のような水浸状症状に囲まれ、細菌性特有の早い速度で広がるものです。前者は害虫に傷つけられた個所が細菌性の病気に感染したもので、これはマイマイ等によるものであることは本サイトでも取り上げました。後者は白い点がカビなのか、卵なのか現在調査中です。これらの症状を発見した場合、直ちに部位とその周辺を切り取っています。表面に薬品を塗ることでは対処できません。ナレート剤を切断面に塗布しており、これで現状では治まっています。

 日中の最高気温は会津や東京とあまり変わらないと思いますが、夜間の最低温度が浜松は高く、温室内では6月中旬から25℃を下回ることはありません。高山系ランのエリアは夜間の冷温が必要なためエアコンで22度まで下げています。18℃程度がより良いと思いますが、多少は日本の温度に順化してもらうためにやや高めにしています。温室が4棟で100坪ほどにBSサイズで5,000株以上となると、一回で使用する殺菌殺虫剤原液の量は1棟当たり100mlを超え、4棟で1回の散布で500ml瓶をほぼ全て使用することになります。レインコート、マスク、手袋、長靴での防虫害防除です。

 胡蝶蘭、デンドロ、カトレアなどで、かん水を行う最も良い時間は、夏季の温室栽培においては夕方であり、このため翌朝まで葉には水滴が付いた状態となります。粒子の細かな加湿装置があれば良いのですが、広さを考えるとそこまで大がかりな装置は設置できないため、夕方の4-5時頃が毎日の散布時間となっています。夜までに乾燥し夜間湿度が80%以上確保できない午前中や昼間に散水を行うと、これら着生ランは成長が全く異なってきます。夕方散布では盛夏であっても株は新芽の発生や根の伸長が盛んで、肥料も通常通り与えています。これを午前中のかん水とすると、現状維持がやっとで特に早朝(6-7時)の葉の状態に生気が感じられません。かん水を夕方に行うことによる夜間高湿度下における早朝の葉の状態は、高温時の昼間とは大きく違って生き生きとしています。

 反面、夕方のかん水は水滴が長時間葉に留まることで病気の危険性が高まります。特に胡蝶蘭原種は細菌性の病気が多発する可能性があります。これを避けるためには常に適度な通風が必要で、筆者温室では4棟(1棟が15mx5.5m)全体で24時稼働の18台の扇風機と、昼間のみ稼働の16台の換気扇を使用しています。農場のように同じ品種をベンチに並べて栽培していれば全体に一様に風が通り換気扇だけで1棟当たり4台程度で良いと思いますが、背丈、形状、植え込み材がそれぞれ異なる多品種の原種が所狭しと並んでいる空間では、僅かな数の送風機ですべての株に風を当てることは不可能で、無風空間が多数生まれてしまいます。この結果、ほとんどが弱か中の風量に設定していますが、これだけの数の扇風機が必要になっています。

Cluster株のその後

 本サイトの5月に取り上げたPhal. schillerianaPhal. stuartianaのヤシガラマット取り付け後のその後の写真を下記に掲載します。左が5月マットへの取り付け時、右は今月20日に撮影したものです。順化期間が終わり葉に艶と張りが出てきています。写真では分かりにくいですが、大きな葉は両者とも35㎝の葉長で、実生では得られない大きなとなっています。このまま順調に進めばPhal. schillerianaでは500輪、Phal. stuartianaでは200輪以上がそれぞれ来年2月から3月頃に同時開花すると思われます。

Phal. schilleriana
Phal. stuartiana

 上写真下段のPhal. stuartianaは現在35株程ですが、現地出荷前の元株はその2倍ほどのクラスター株であったものを、活着した支持体から取り外しができないため止む無く分割しました。取り外されたその他の株も同時に入手しており、こちらは下写真に示すように炭化コルクに取り付けて同様に栽培しています。こちらも良く成長しておりそれぞれが5株から10株程の大きさです。これらはすべて野生種ですが、花茎の高芽ではなく、根に成長芽が盛んに発生しているのは実生では見られない興味深い様態です。

上段写真のPhal. stuartianaと同じ元株からの分割株

浜松の夏季

 ここ浜松では昨年と変わりなく早朝のクマゼミの大合唱と共に1日が始まる夏となりました。6月マレーシアからの入荷株の順化チェックとその対応、7月初旬のフィリピンからの持ち帰り株の植え付け、さらに7月末の猛暑対策の温室内のレイアウト変更などで3週間ほど筆が止まってしまいました。会員の温室見学や分譲株の発送もペンディングのままです。今月半ばまでには一段落すると思います。

 順化のチェックとは、今回6、7月で入荷した1,000株を超える原種の大半をこれまでのヘゴチップやミズゴケ+素焼き鉢とは異なる新しい素材での植え込みを試みたことで、それが適材となり得るか、素材を変更せざるを得ないかを2-3週間程で判断をしなければならず、毎日株の状態をモニタリングしてきました。株の状態が最初の植え込み時から変化がないあるいは悪化した場合は、直ちに他の素材に替えなければなりません。しかし実際は、出荷時点で根を相当カットしている海外からの入荷株でこのような状況となった場合はすでに手遅れで、根の大半が腐敗したことを意味し、これを植え替えても2-3割は落ちてしまいます。通常5割以上でその後の作落ちが生じます。状態が悪化したまま1週間も放置すれば、特にこの時期全滅は避けられません。

 植え込み材と鉢の組み合わせが適材の場合は、時期に関わらず必ず根や芽が伸長あるいは新たに現れます。今回の植え込みは、最も避けなければならない猛暑期間であること、しかも出荷調整やベアールートに近い状態での箱詰めなどで弱った輸入株であること、さらに植え込み材が初めてのものという3重の困難な環境の中での順化作業となったため、かなり緊張の連続でした。なぜ敢えてこのタイミングで新素材にしたかはヘゴはコストの問題、またミズゴケ+素焼き鉢はコスト、植え替えの悪さ、鉢につくコケをそれぞれ避けるためです。数株であれば問題ないのですが、今回のように数百ともなると植え込み材如何でその後の、コストと栽培管理の手間は全く違ったものになります。

 胡蝶蘭、デンドロ、Vanda、Bulbophyllumなどを含む新入荷7原種と、これまで栽培していた多花系パフィオの合わせて1,000株を超える原種にこの植え込み材(2種類の素材のみのミックスコンポスト)を用いて植え替えを行いました。この植え込み材は3か月ほど前から前記それぞれの原種でテストを行ってきたものです。胡蝶蘭原種については順化の難しいPhal. cochlearisなども順調で、特にPaph. sanderianum, rothchildianumまたmicranthumに威力を発揮しています。オーキッドベースが製造中止になって以降3年間、これまでこれら根張りの難しいランの良い植え込み材が見つからず、市販のパフィオ専用のコンポストを数商品、またネットで紹介されているミックスコンポストを製作したりしてそれぞれ試みてきました。結果としては現状維持がやっとで、なぜこれらがパフィオに良いのか首を傾げるほど全てダメでした。やっと見つかったというところです。

 このテストと順化を通して、新植え込み材を嫌う品種がデンドロに数点出ましたが、全体としてこれまでのところ極めて根張りが良く、コストはヘゴやミズゴケの1/3程度と安価で、また植え込み時間も同様に1/3で済みます。今後の推移が良ければポット植えは種に関わらずほぼ全てにこの植え込み材を適用する計画です。パフィオは1か月かけて全面的に植え替えを行っている最中です。また例えばそれぞれ100株を超える、コルクやヘゴ板に付けていたPhal. lindeniiや、ヤシガラマットのPhal. equestrisなどもこの新素材とプラスチックポットの斜め吊りに変更しました。今年秋には1,200株近いカトレアもミズゴケ+素焼き鉢から新素材+プラスチックポットに全て変更予定です。

 今回使用した植え込み材を本サイトで公開したいのですが、環境と使用方法で適・不適が考えられ、四季のある日本では最低でも1年間は効果を検証しなければならず、現在制作中の新Websiteでその植え込み材と使用方法を取りあえず会員限定でお知らせし、会員の方からの報告も参考にしながら、一般公開は結果が明白になるであろう1年後を予定しています。

 さて話題を変え、1昨年入荷したPhal. pantherinaのflavaフォーム(右写真)が開花したため写真を撮りました。参考資料にあるphals.netサイトでも1名が写真を公開しています。国内では初めてではないかと思います。これも今年5月からの半透明プラスチックポットと新しい植え込み材での栽培です。


Phal. pantherina normal form

Phal. pantherina black form

Phal. pantherina f. flava

 

7月

Phal. corningiana

 6月末から今月にかけてPhal. corningiana野生株の開花時期となり、それぞれを写真に撮りました。野生種は実生と異なりそれぞれの色やパターンをもち、複数株を所有すればそれなりに変化を楽しむことができます。

最下段右および中央は実生で3月末撮影です。

 

Phal. speciosa

 インド洋Andaman, Nicobar島に生息するPhal. speciosaは白色をベースに大きな赤い斑点の鮮やかなコントラストを持つタイプと、全体が赤紫のソリッドタイプなど多様なパターンがあり人気が高い品種です。10年ほど前までは野生種の入手も稀に可能でしたが、現在のマーケットではほぼ全てが実生株となっています。本種の白と赤紫のカラーパターンは開花毎で変化し一過性で、これはセパル・ペタルが白色に赤褐色の棒状斑点をもつPhal. tetraspisと同じ特性です。Phal. tetraspisPhal. speciosaの生息域とSumatra島に生息しており、古い分類でPhal. speciosa v. tetraspisとも呼ばれていましたが、今日ではこの2種はDNA分析で別種に分類されています。

 Phal. speciosaの変種にv. christianav. imperatrixの2タイプがあり前者は白色のペタルに、セパルと蕊(ズイ)柱が赤紫とされ、一方後者はセパル・ペタル共に全体が紫色とされています。前者はPhal. tetraspisとの交配種の可能性をE.A.Christensonは指摘しています。現実の問題としてマーケットにおいては幾代にわたる実生間の交配によって、この分類は意味がなくなり、フォームは大きく3種類に分かれます。

  1. 白色ベースに赤紫の斑点。パターンは一過性で白と赤との割合や斑点の位置は各年の開花ごとに変化する。
  2. セパル・ペタル全体が赤あるいは赤紫。縦筋の濃淡からダーク色まで多様。濃淡度はほぼ保持される。
  3. セパル・ペタルが青紫。縦筋の濃淡からダーク色まで多様。濃淡度はほぼ保持される。

 上記タイプにおいてもカラーパターンは不安定で2項のソリッドレッドパターンが全輪毎年開花することは過去50株以上の栽培を通して1-2株のみです。3項のタイプは濃度は若干変化するものの青色の色素が2項と比べて強く含まれ、この特徴は毎年再現されています。しかし多様なパターンとの実生化が進んだ近年ではこの特徴が維持されない可能性も高いと思われます。下記にこれまで筆者が栽培したPhal. speciosaの中から特徴的な株を示します。

 最上段は2003年から2005年に入手したPhal. speciosaで、右の株は唯一野生種として入手したものです。赤色がこれまでの入手株の中で最も鮮明で、この色は毎年再現されましたが白と赤のパターンはしばしば変化しました。左はPhal. tetraspisとの交配の可能性が高く、セパルの先端が黄緑色を呈するのはPhal. tetraspisの特徴でもあります。写真中央の株は、蕊柱の基部から中央にかけて赤紫色でありv. christianaとされる特徴の一つではありますが分類の要因としては疑問です。

 2段目の3株は現在のマーケットでしばしば見られるパターンであり、セパル・ペタル共に赤色の花を選びました。全体としては白色との混合がほとんどです。3段目左は赤濃色タイプ、中央は青紫色です。この左写真は、これまでで最も赤色が濃いタイプです。4段目の左と中央は青色が強く出たもので、中央は青紫の濃色タイプです。縦長の写真にある株は過去3年間、全輪ソリッドレッドを再現しており、果たして今後も続くのか、いずれは白色セパル・ペタルが出現するのか見ているところです。

 これら赤、赤紫および青紫のなかでも、特に鮮赤色やダーク色の株は一般市場で得ることは、パターンが不安定であるだけに非常に難しく、さらにそれらの全輪ソリッドはなお困難で、数百株栽培されているラン農園に出かけ自身で選別するか、園主に求める特徴を説明して予め依頼する以外なく、実際筆者が過去10年余りで、希少配色に出会った機会は1-2度しかありません。マレーシア原種ラン園をしばしば訪れていると、頻繁に業者や現地趣味家が花を詳しく見て回っており、特徴のある原種はすぐに買われてしまいます。この環境を考えると、例え数か月に1度、ラン園を訪問したとしても気に入った株を得ることは困難で、濃色タイプが出現した情報があれば、未開花株であっても、そのロットごと一括して購入し自家栽培を通して選別するか、本歳月記で述べているように現地趣味家を訪れ購入する以外ありません。

 現在、筆者は4段目の青紫濃色株および右縦長写真のソリッドレッドの自家交配を進めており、右のタイプはフラスコ苗として現在5mm程になっています。来年にはこれらの自家交配株の会員分譲が可能となります。

 

マニラ滞在記

 今回は急な訪問であったため、いつも利用しているドライバーの予約が取れず、やむなくCavite地区にある別のハイヤー会社にラン園からBookingしてもらいました。ドライバーは30代の明るい性格の人でした。驚いたのは今回の料金です。6月29日13時のマニラ空港着から7月1日朝の帰国までの実質2日間、トヨタ(ハイエース新車)バンで総額9,000ペソであったことです。高速代やガソリン代の別途請求がありませんでした。よって5人以上が乗ってもまる2日間のドライバー付レンタルで総額18,000円となります。これまでの会社は高速代とガソリン代は別であり、こちらと比べて3割程安い料金でした。むしろこれまでの会社が高いと感じるよりも、一体、2年前まで3年間も利用していた日本から予約した日本人がオナーのマニラ市のハイヤー会社の料金、すなわちドライバーは日本語が分からないフィリピン人で、3人乗車して3日間で一人当たり4万円(総支払額12万円)はどうしてそのような高額になるのかと、改めてマニラでそうした会社のハイヤーを利用するであろう多くの日本人旅行者が気の毒に思えてしまいました。

 いつも満足よりも失望を味わうホテルについては、今回もTagaytayではTaal Vistaホテルとしました。昨年から工事をしていましたが、その成果で部屋が綺麗になり、スタッフの対応も良くなった印象でした。最初から最後まで熱いお湯が出たのもうれしい限りです。Taal VistaホテルはTaal湖の絶景がベランダから見られるTagaytayでは最高級ホテルです。しかし・・・中国の旅行者でしょうか、この景観の中にあってホテルのベランダに洗濯物を干すのはやめてもらいたいのですが、これも文化と言えばやむ得ないので、せめて隣のベランダの間に間仕切りを入れてもらえれば文字通り最高級になるのですが。


Taal Vista Hotelのベランダから望むTaal湖

 メトロマニラで普段と変わった印象は、早朝6時ごろアメリカ大使館の前の歩道が溢れるほど大勢の人だかりがあったことです。伺ったところアメリカへ仕事に出かける労働者がビザを得るため、早朝の暗い4時頃から集まっているのだそうです。また成田入国審査ゲートでは日本への海外からの労働者と思われる人たちが、これまで見たことがないほど大勢並んでいました。7月初旬の海外訪問は初めてなので知りませんでしたが、7月は海外への出稼ぎの時期のようです。

フィリピン再訪問

 6月29日から7月1日までフィリピンに急遽再訪問しました。現地での滞在は実質1日半(品質チェックと梱包・検疫書類許可)という2泊3日の厳しい日程でした。6月初旬入荷予定の注文品が、現地ラン園のマイアミへの出展、また当方のマレーシア行きなどと重なってEMS搬送のタイミングが合わず、さらにこの時期、1週間ほどの箱詰め状態となるEMSでは高温のため、葉の厚い胡蝶蘭は細菌性の病気の発生確率が高くなり、これを避けて直接ハンドキャリーで持ち帰る以外ないとの結論での訪問です。昨年フィリピンの盛夏となる5月のEMS搬送ではPhal. schilleriana、stuartianaなどがほぼ全滅しました。Vanda, Dendro, Coelogyneなどは問題が少ないものの、胡蝶蘭が含まれる場合、この時期はハンドキャリーで持ち帰るか、フィリピン・ラン園から国内自宅まで3-4日ほどで入手が可能な輸出入ブローカーを利用するかの2者択一しかありません。昨年6月は後者を利用しカトレア等を含め1,000株ほど入荷しました。しかしブローカーへの業務委託代金はエコノミー航空運賃以上の費用がかかります。そのため時間が許せば現地まで出向き、出荷前に品質チェックができることもあり今回の判断となりました。一般的には5月から9月のフィリピンやマレーシアからのEMS搬送は高温障害があって難しく、10月から2月頃までが安心できる期間となります。

 今回の訪問ではVanda javierae、Phal. lindenii、Phal. pulchra,、Phal. mariae、Den. yeageriなどの購入に加えて、ランではありませんがHoyaを200株40種を入手しました。Hoyaは昨年来からの計画で今年から本格的に栽培を始めます。現時点でHoyaはすべて山採り原種となります。フィリピンではラン以外の植物であっても野生種は輸出することができません。フィリピンDENR-NCRより発行されるCITESに似た輸出認可書が必要で、これを受けての日本への持ち込みです。

 上記以外にも、品名と価格でネット検索しても国内ではヒットしない数種類の原種を入手しました。6月のマレーシア訪問では300株程度でしたが、今回持ち帰った株数は900株を超えたため、一人で運ぶには限界に近い3箱となり、成田では検疫所と税関さらに宅配便受付口のそれぞれに運ぶのには苦労しました。最近では毎月のように大きなダンポール箱を持って検疫所に向かうので目立つのか検疫官からは常連さんと呼ばれています。7月初週の現在、これらの植え付け作業で身動きが取れない状況です。農園を訪れた際、2-3の興味を引いた風景を下記に示します。今年初めからVanda luzonicaの大株を集めてもらうよう依頼をしていたところ左下写真の株が用意されていました。CITESにない種や数は後日の搬送となります。


Gram. measuresianum

1.5m程のGrammatophyllumの巨大株。根が石の塊のようで一人では持てない重さに感じました。韓国へ出荷とのことでした。


Vanda luzonica

Vanda luzonicaの大株で3株が吊るされています。1株当たりそれぞれ3茎から7茎の構成で、80㎝-1m程の高さです。デンドロと違い、茎が固いため曲げることができずハンドキャリーで持ち帰りが可能な箱サイズへの梱包を考えると、茎部分の背丈は1mが限度となります。

農園ではV. luzonicaは、ベアールートで栽培しているV. sanderianaと異なり、左写真のように全て鉢植えです。下葉が枯れない栽培は見事です。


Vanda luzonica

奥の一番背の高い株は2m近いVanda luzonicaの巨大クラスター株。これまで見た最大サイズですが、葉に斑点病痕があり入手を避けました。

 

6月

希少種とマーケット

 ランの販売サイトには商品をアピールする意図で、しばしば”希少”あるいは”貴重な”という言葉が使われています。この希少とは何か、時折考えさせられることがあります。希少は文字のごとく僅かしか存在しないことですが、(1)生息数が少ない、(2)手に入りにくい、(3)余り知られていない(新種を含め)、などの多様な意味合いで用いられているようです。海外のラン園を巡り、またそのランの生息国の園主等と話をすると、日本のカタログで希少とされるランの多くが、「生息数が少ない」ことを必ずしも意味していないことに気付かされます。”入手難”という表現も、現地のラン園からは、それは日本の販売業者が仕入れていないだけなのではとの言葉がしばしば返ってきます。最近話題となった青い花Cleisocentronがその例で、マレーシアで注文すれば幾らでも安く入手できます。言い換えれば人気が出そうなランかもしれませんが、生息数が少ない訳ではありません。これが2年ほど前に、希少種として日本で数十万円で取引されたとは生息国のラン園主から見れば信じがたいことのようです。いわば日本のマーケットにおいて取り扱いが希少であったということでしょうか。

 生息数の少ない希少種は特に、ビジネスの必然として高額になり、この結果、マーケットで注目されるようになると台湾やタイでフラスコ苗が生産され始めます。2-3年後には実生が大量に出回り、やがて希少種も自然界では希少であることに変わりませんがマーケットでは普通種に変わります。こうしたなか今回のマレーシアのPutrajaya Floria 2014への訪問で、間違いなく数の少ない希少種であると感じたのはBulb. kubahenseです。注目されている種でありながら複数の原種専門業者ブースのどこにもありませんでした。しかしこれもタイから、やがてフラスコ苗が世界市場に大量に供給されるでしょう。一方で、希少から普通に変わるまでの2-3年間をビジネスチャンスと捉える者が必ず現れ、趣味家にとっての悲喜劇が始まります。偽物の登場です。骨董品ならばいざ知らず、ランの世界でも偽物があります。多くの人は、生きた植物の世界で本物そっくりなどあり得ないのではと思われるかもしれません。確かに偽物は本物そっくりでなくてはなりません。そっくりでなければそれは別物であり、偽物ではありません。

 多くのラン、特に同属内のランを、花ではなく葉や茎からのみでそれぞれの種を同定することは相当の栽培経験を積んだ人であっても困難です。30年近くクアラルンプールでラン園を経営してきた園主ですら、しばしば偽物をつかむことがあるそうです。まして経験10年余りしかない筆者は、過去を振り返って、ミスラベルとは思えない確信犯的な偽物を手にした株は数えきれません。ランは開花期間が通常1か月以内であることから、花を確認しないまま買わざるを得ない場合が多く、その結果、時として偽物を掴んでしまうことになります。例えばBulbophyllum属としては1株が数万円もする品種はほとんどないなかで、Bulb. kubahenseは現地でも150ドルから250ドル(米ドル)を相場とする例外的な高額品です。この本物が国内で販売されるとすれば10万円を下回ることはないでしょう。それ故に容姿がそっくりの、入手が比較的容易なBulb. refractilingueBulb. kubahense名で出回っており、マレーシアの園主の話では、現地においても信頼あるルートを通さないと本物は入手できないそうです。しかしこの種についてはこれまでの生息地にもマーケットにもすでに無いであろうとのことでした。一方で、300ドルで良いのならば取り寄せられるという怪しげなラン園もありました。

 こうした状況のなか、不幸にして本物ではなくBulb. refractilingueを掴んでしまった場合、植物に罪がある訳でもない以上、偽物と分かった後でも本物と同じように大切に育ててもらいたいものです。幸いにしてBulb. refractilingueもまた生息数は限らており捨てられることはまずないと思いますが。視点を変えれば、やがてBulb. kubahenseの実生が大量に出回り普通種に変わり、Bulb. refractilingueの役割が終わったとき、それまで日陰の存在のBulb. refractilingueでしたが、それ故に実生がつくられることはまず考えにくく、気が付けば今度はBulb. refractilingueが希少種として注目を浴びることになるかも知れません。その時は自身の名前Bulb. refractilingueで主役交代です。

 もう一つの希少原種の中の偽物は交雑種です。こうした交雑種は葉だけでなく花を見ても本物と区別することが難しい場合がありさらに厄介です。フラスコ苗を生産する際、近縁種との交配、産地が異なる同種との他家交配が、自家交配よりも不合和性の問題が少なく数倍も多くの苗が得られ強健で栽培も容易であるためか、頻繁に異種間交配が図られています。これまでマレーシアでフィリピン原産、またフィリピンでマレーシア原産の品種、すなわちこれらは台湾やタイで生産された実生を、それぞれの国のラン園が購入し、BSまで栽培し販売しているものですが、これらを入手して花を見た結果、過去3年間で筆者が購入した胡蝶蘭原種のおよそ半数に品名とは異なる様態が現れています。この偽物(異種間交配)が混じる割合は驚くべき数であり、最近では品名偽称の詐欺と腹を立てるよりも、これがタイや台湾の園芸文化なのだと思うしかないと諦めています。おそらく胡蝶蘭原種の世界で、期待した品種と違った花が現れた経験のある趣味家は数えきれないと思います。よって今日、純正な原種を求めるマニアとしては、ランの出自がこれらの国からのものと分かった場合は、決して花を見るまでは購入しないようにしています。原種としてのホモジェニアスな遺伝子を継承(親株から得た子株が原種本来の特質・様態を100%受け継ぐ品種の生産)すべきという考えはこれらの国の多くの実生生産者にはまるでなく、目的とする品種の花に似た株が得られれば良いと言った姿勢で生産しているかのようです。外見が似ていればその似ている原種の品名を付けて販売することに何の問題があるのかと逆に反論されかねません。交雑種であればハイブリッドと明記すれば良いだけのことですがこれが行われていません。フィリピンやマレーシアの原種ラン園を訪問すると、しばしばベンチの片隅にかなりのハイブリッドと分かる花が咲いており違和感を感じることがあります。原種専門農園でこのようなハイブリッドを買う人がいるのかと聞くと苦笑いをします。おそらく趣味家以上に偽物被害にあっているのは原産地のラン園かも知れません。

 希少種とは前記した(1)-(3)のいずれであっても良いのですが、希少な原種と称する以上は人工的に作り上げた雑種では困ります。筆者としては、まずホモジェニアスな遺伝子を持っていることが原種の条件と考えます。残念なことに今日において種名は同じでも、実生種と野生種は全く別ものであるといっても過言ではないほど実生交配のポリシーがその主な生産国(者)に確立されていません。まさに故E.A.Chistensonが著書Phalaenopsis A Monographの11章Conservationで述べている危惧を実感しています。

 

本サイトの会員

 本サイトの会員数が80名を越えました。初心者から栽培20年以上のベテランまで、また業者さんも含め、定年退職された方、企業勤めの方、医者、大学研究者など分野は様々です。本サイトを立ち上げてから5年経ちますが、内容の一部が古くなっていること、特に植え込み材、栽培方法が4-5年前とはかなり変化しており、これら最も重要な内容を早急に更新する必要があります。

 当面は内容を校正する必要があることから来月中旬、試験的に会員限定のページを設けることにしました。この期間に会員からの情報も反映させ、およそ1年後に、現在のページとリプレースする予定です。この試験的ページは会員パスワードでアクセス可能となります。また、現在、会員ページの掲示板は写真等の添付がサーバー容量の制限からできず、画像添付が必須のランのサイトとしては問題で、ほとんど利用されていません。そのためこれまでは直接E-mailでのやり取りとなっていました。

 今後は、会員との海外訪問も多くなりそうで、会員同士の貴重な情報も増えることと思います。売買情報は従来通りの会員パスワードアクセスが必要ですが、その他の情報は新しいコミュニケーション手段として、Facebookを利用してはどうかと検討中です。これもできるだけ早く立ち上げたいと思っています。現在会員でない方もこの機会に入会を検討されては如何でしょうか。胡蝶蘭以外に、デンドロ、Bulbophyllum、Hoyaなどの領域への進出も図るべく現在準備中です。

 

マレーシア訪問

 6月14日から開催されたマレーシアPutrajaya Floria 2014に合わせ、2名の会員の方たちと共に、13日夜成田を立ち17日早朝に帰国しました。行き帰りとも機内泊のため、現地滞在は3日で、ラン園へのプレオーダと展示会場での購入予定品を予めCITES申請しての旅行です。展示会場の出店ラン園と4つのクアラルンプールおよびセレンバン近郊のラン園を訪問し、会員の方を含めると段ボール5個、購入したランは500株を越えてしまいました。筆者が購入した主なランは下記となります。今回は胡蝶蘭原種よりもデンドロビウムやバルボフィラムの新種や希少種が多くなっています。

  1. Phal. cochlearis
  2. Phal. doweryensis
  3. Phal. maculata aurea
  4. Phal. minis
  5. Phal. parishii
  6. Phal. tetraspis alba
  1. Bulb. appendiculatum alba
  2. Bulb. kubahense (Sarawak)
  3. Bulb. medusae (cluster spot type)
  4. Bulb. orectopetalum
  5. Bulb. patens (cluster)
  1. Vanda foetida
  2. Vanda jennae
  1. Den. anosmum (cluster)
  2. Den. anosmum alba (cluster)
  3. Den. anosmum huttonii (cluster)
  4. Den. ayubii
  5. Den. brevimentum green
  6. Den. capra
  7. Den. crabro
  8. Den. datinconnieae
  9. Den. flamulabium green
  10. Den. furcatum (Sulawesi産。amabileではありません。)
  11. Den. hasseltii
  12. Den. hallieri
  13. Den. hymenophyllum red
  14. Den. hymenophyllum green
  15. Den. igneaniviem
  16. Den. jiewhoei
  17. Den. klabatense (Slawesi産)
  18. Den. leporinum v. jailolo (Halmahera 島)
  19. Den. malvicolor
  20. Den. micrographys
  21. Den. piranha
  22. Den. paathii
  23. Den. vogelsangii
  1. Coel. odoardi
  2. Coel. dayana/pulverula (cluster)

 上記の内、デンドロビウムは多くが希少種あるいは国内未入荷品と思います。胡蝶蘭ではPhal. maculata aureaは偶然の入手です。また2010年登録の新種Den. datinconnieaeを筆頭にDen. brevimentum greenDen.cabro Den. hymenophyllum redDen. klabatenseなどはこれまで国内のマーケットではあまり見かけていません。一方、SarawakのBulb. kubahenseについては、今後はそれを原資とした現地の趣味家の栽培増殖株以外の入手は不可能な印象です。原産地であり、且つ注目されているにも拘わらず、どの原種販売ブースにもありませんでした。主な生息地が国立公園内であることと、知られた生息場所ではすでに絶滅したのではないかとのことです。約1か月前に依頼して会員の方と共にそれぞれ2株のみ入手することができました。花軸が長い点を除くとBulb. refractilingueと類似していることから、現地ラン園主の話では、すでに現在、またこれからの市場でBulb. kubahenseとされるほとんどがKalimantan産のBulb. refractilingueの可能性が高く、まず本物は入手できないであろうとのことでした。

 Den. anosmum3種は3月の本ページに記載したラン園の株です。2mを超えるクラスター株でかなり重く、どのように取り付けるか検討した結果、杉皮板の2枚張りとしました。一部は農園の門近くに垂れ下がった写真の巨大株と思います。今回すべてを買占めとまではいきませんでしたが、大株の半数は入手したかもしれません。次回の訪問では会員に希望者がいれば入手する予定です。これまで栽培していた株が何とも小さく見える大株です。写真は3月と今回の訪問で入手した株の約半数分を撮影したもので、手前の開花中のDen. anosmum hutoniiは3月購入の株です。写真上部の鋼材から床までの高さは2.3mですので長い株で2m程あります。購入時には、バルブから発生した高芽を含めると2m以上あり、そのままでは全体を吊り下げる場所がないため高芽部分をカットして取り付けました。奥の短い株がカットされた株です。

 

 

Phal. philippinensis

 Phal. philippinensisは3月頃から6月初旬までが開花期となります。不思議なことにこの種は、葉模様を含めPhal. amabilisPhal. aphroditeよりも美しい柔らかなフォルムであるにも拘らず、あまり注目されることがないようで、2月の東京ドームラン展ではPurificacion Orchidsで販売したものの僅か2株程しか売れませんでした。残りの株は筆者が引き取り、先月まで本サイト会員への分譲をおこなっていましたが、こちらも1名1株のみでした。Purificacionの今回のPhal. philippinensisは、大理石模様もハッキリしたこれまでにない大きな葉をもった株で、4月末の現地訪問時にはすでに無く、このサイズの株は今後入手難との印象から売れ残りは預かるのではなく、5株程ですがすべて筆者が購入することにしました。これらが今週から開花を始め、その中の1株が2本の花茎を伸ばし、合わせて30輪の開花が始まり驚いています。Phal. amabilis系を現在200本以上栽培していますが、1株当たりの同時開花数としては最多となります。他の株も30輪とはいきませんが、みな多輪花で20輪程の同時開花です。Phal. philippinensisのセパル・ペタルは純白で、リップ側弁の鮮やかな黄色がこの花の大きなアクセントになっており、筆者としてはamabilis系の中ではもっとも気に入っている品種です。

 時折、Phal. philippinensisを栽培されている方から、シブリングクロスあるいはセルフクロスいずれも胚ができる前にさく果が落ちて上手くいかない話を聞きます。これは本種が標高1,200m近辺に生息しており、Phal. amabilis系ではやや低い温度を好む一方で、国内ではさく果が成長する時期が夏季と重なることが原因の一つと考えられます。Phal. lindeniiも一般に標高1,000mから1,500mに生息するタイプが多く、似た性質をもっており、この時期の交配では同じような問題が起こります。さく果が成長する間は25℃前後が良く、28℃以下にしないと胚のあるタネを得るのが難しくなります。

 ネットではしばしばPhal. philippinensisPhal. leucorrhodaが間違って掲載されているページが見られます。Phal. leucorrhodaPhal. aphroditePhal. schillereianaの自然交配種ですが、リップ側弁がPhal. philippinensisのように黄色にはなりません。

 写真上段は30輪の株です。引き取ってから東京ドームラン展でのラベルを葉に付けたまま、素焼き鉢に立置きしており、開花終了後には炭化コルクに植え替える予定です。下段左は花被片の拡大写真で、右は別株ですが交配から3週間ほど経過したさく果です。このような多輪花な株は、果たして来年も同様あるいはそれ以上に開花するかどうか、栽培の腕あるいは栽培環境の適否をチェックする上で楽しみとなります。

 

Phal. sumatranaの生息地域様態

 6月から7月にかけてPhal. sumatranaの開花最盛期となります。Phal. sumatranaはスマトラ島からマレー半島、ボルネオ島を経てフィリピンパラワン諸島に至る広い地域に生息しています。下写真はスマトラ島からPalawan諸島へ向かう地域と、それらの地域を代表するPhal. sumatranaの花被片形態を示したものです。スマトラ島生息種は薄黄緑色をベースとして太い赤褐色の棒状斑点(バー模様)をもち、東に向かうにしたがって、ペース色がクリーム色に変化し、バーはやや細くなっていきます。ボルネオ島のSabahではベースが白色となるフォームがあらわれ、バーはスマトラ生息種と比べてさらに細くなります。さらに東のPalawan諸島ではベースはすべて白色で、棒状斑点はそれまでの花被片中心に同心円状であったものが細く短く点状に不規則に分布するようになります。ベースが白色で、バーが細いフォームをもつものを、Phal. sumatranaの変種Phal. sumatrana f. paucivittataと分類していますが、マーケットではPhal. zebrinaと呼んでいます。

 市場ではボルネオおよびPalawan産はバーの入るPhal. tetraspisと外見上で類似することから、ミスラベルがしばしば見られます。


Sumatra

Sumatra

Malay pennisula

Borneo
Sumatra ------------------------------> Malay Pennisula ----------------------------> Borneo

Borneo Sabah

Borneo Sabah

Philippines Palawan

Philippines Palawan
Borneo ---------------------------------------------------------> Philippines Palawan

 

5月

室外栽培

 浜松は温暖な気候のため、DendrobiumEpigeneiumなどで木漏れ日を直接当てた方が良い種を選び、室外に出し栽培を始めました。クールタイプであるDen. amethystoglossumは夜間15℃以下であっても問題はなく、また高輝度を好むため5月中旬から楠木の枝に吊るしていました。しかし、先日一晩で、新しく発生した10本近い柿色の根の先端が、まさに根こそぎ齧られているのを見つけ、木に吊るしていた株はすべて室内に取り込みました。犯人はナメクジか青虫か鳥かは不明ですが、たまたま昨日、今年2回目となる庭木の消毒をと思い、人の通る昼間を避け、夜になってからオルトランや殺菌剤を撒きました。翌朝、楠木の下を見たところチョウの幼虫が何匹も落ちており、その形と楠木を食べていることからアオスジアゲハの幼虫と分かりました。アオスジアゲハは蛾ではなく綺麗なアゲハ蝶の仲間であり、可哀相なことをしてしまいました。しかしこれでDendroの根を齧った犯人はこの幼虫が怪しくなりました。蝶と食草との関係はユニークであり、果たしてDen. amethystoglossumの根の先端がこの蝶の食草となりえるかどうか。根の先端ということで一番怪しいのはナメクジであることには変わりませんが。

 ある大手ハウスメーカーに「5本の木」という住宅緑化スローガンがあり、庭には、3本は鳥のため、2本は蝶のためにとあります。おそらく後者の蝶のためにという、このロマンチックな言葉を提唱したコピーライター自身はマンションに住まわれている方に違いありません。木の葉が好きなのは蝶も蛾も同じで、蝶だけが集まる草木を提供する訳にはいきません。彼らの子供たちは最も大切な花芽の先端や新芽が大好きで、茎の先端部を丸坊主にしたり、アメリカシトヒトリのようにあっという間にすべての葉を食べ尽くし、枝とフンだけを残して去るもの、触ると激痛が走る浜松の庭師がいう電気虫(イラガ)、ほどほどにという程度を知らない青虫や毛虫の猛威に曝された経験のない人には、「5本の木」は、平和な響きを持っていることでしょう。現実にはこの時期、庭木を大切に育てている人たちは、ゴーストバスターならぬキャタピラー(毛虫)バスターになって、マスク、手袋、レインコート、長靴を履き、殺虫スプレーを武器に蝶や蛾の幼虫たちと戦闘状態にあります。

 ランにとって怖いのは葉ダニではないかと思います。庭で植栽されている場合、ランを室外に出す場合は、気が付かないことが多いそれらに対する対策が必要と思います。

 

Phal. doweryensis

 胡蝶蘭原種の中で栽培の最も難しいPhal. doweryensisの開花時期を迎えています。昨年は夏の猛暑と浜松の新しい温室環境で、およそ半数の株を失い、また残った株の半数も不調で葉が落ち小さな葉を残す状態となりました。この経験でいくつかの課題が分かり、その対応を行うことによって、今年は5月に入ってから昨年秋に新しく入手した株を含め10株程に花茎が見られ開花が始まっています。それらの何点かを写真にしました。すべて株は異なります。最下段右はシブリングクロス1か月後のさく果です。Phal. giganteaと比較してややスリムで表面は銀緑色です。

 Phal. doweryensisの栽培において最も問題であったのは、適合温度を高くあるいは低くすべきことではなく、短時間に繰り返し生じた急激な温度変化です。直接風が当たる状態を避けているものの、昨年の夏の猛暑下においてエアコンや換気扇(筆者温室では換気扇は外気を温室内部に取り入れており通常とは逆の方式)の近くの環境に置かれた株が最も大きなダメージを受けました。一方、同じ場所で、同様の栽培をしたPhal. bellinaや、形状的にも似た近縁種であるPhal. giganteaには影響がなかったことは驚きです。それだけPhal. doweryensisは温度変化にセンシティブなようです。Phal. doweryensisと同様な問題はPhal. micholitziiや小型の原種、例えばPhal. appendiculataにも表れました。

 1年を通した栽培で、Phal. doweryensisは高温にも低温にも強い印象を受けます。但しそれは季節や、昼と夜とでの違いといった長時間のゆっくりとした周期の変化でのことで、10℃を超える急激な温度変化が問題と思われます。このことから、汲み置き水ではなく直接水道水を与えることも季節によっては避けるべきです。振り返ってみれば会津では1年を通し温室内に置いたタンクへの汲み置き水であり、Phal. doweryensisが弱ることはありませんでした。浜松では温室の用水は、飲み水としても可能な120m地下からの井戸水で、1年を通しPH7、温度は16℃で一定です。このため冬季を中心に特に汲み置き水を利用する必要がありません。しかし昨年夏のように連日気温35℃前後の温室で、16℃のかん水を行うことは、20℃に近い急激な温度差が株全体で生じていたことになります。今年は昨年のようなリスクを避けるため、6月から9月はPhal. doweryensisおよびPhal. micholitziiには例外的に汲み置き水と考えています。おそらく多くの栽培家は冬に汲み置きを行い、夏は不要であろう点で、この方法は逆となります。

 また、高温時での輝度も注意が必要で、温度が30℃以上となる場合は、葉面温度の上昇を招く高輝度(寒冷紗50%遮光率以下)は避けるべきと思われます。今年からは5月に入ってPhal. giganteaを含め、大きな葉をもつ原種には晴れた日は午前中の10時頃までは寒冷紗を掛けませんが、この時間を過ぎれば70%寒冷紗を掛けてしまいます。その時間までは2重の中空ポリカやサニーコートを通しての太陽光なので、すでに20%近くは減衰しています。何よりもこのような媒体を多層に通過した光は散乱し、寒冷紗がない状態でも温室内に影は生じません。それでもこの時間を過ぎると葉面温度は急速に上がってきます。Phal. doweryensisは葉を触れてみて温かいと感じる状態が許されません。

 栽培の難しさは輝度の加減です。十分な湿度がある暗い場所で栽培すれば多くの胡蝶蘭原種の葉は青々としてよく成長します。これまでベンチの上段で栽培していたPhal. hieroglyphica, sumatrana, appendiculata, pulchra, corningianaのそれぞれを、かなり暗い下段に置いたところ、今まで見たことのないような葉が深緑色化し生き生きとしています。しかし常に薄暗い場所では開花が難しくなります。その反面、輝度を上げて育てれば開花のチャンスは増えますが、高輝度を嫌うこれらの原種は葉面温度の僅かな上昇で葉色が褪せる様態が見られ、特に30℃近い温度下での高輝度は注意が必要です。

 昨年のPhal. doweryensisには上記のように、エアコンやかん水による温度差、葉面温度の上昇があり、これが連日繰り返された結果、2週間ほどで古い葉が変色し始め、その後1週間以内で落葉、さらに1週間ほどで最も新しい葉のみを残すか、すべてが落ちました。一度葉が変色を始めると環境を変えても改善は見られないことと、変色から落葉までの期間が極めて短いことが特徴で、様態の変化に気が付いたときは手遅れです。

 最近(5月中)では前記したように、晴れた日は午前10時頃までは寒冷紗を掛けず、その後は日が沈むまで寒冷紗栽培となっています。夕方再び寒冷紗を外します。この寒冷紗を掛ける時間を季節とともに変化させ、6月ともなれば9時から、7月から9月までは8時からとする予定です。よって春から晩秋までの期間は、高輝度は朝の2-3時間ほどしか与えないことになります。12月から3月までの冬季は全日寒冷紗は掛けません。雪国であれば10月末から4月の桜の咲くころまでといったところでしょうか。このため冬季でも晴れた日の正午から2時ごろまでは温室内では28℃ほどに上昇し、夜は暖房が入り17-18℃となります。このような輝度を考えた寒冷紗の制御は、タイマーで自動化するか、家にいない限りできません。不在の場合は常に寒冷紗を掛けた状態にしています。温室栽培でない場合は、遮光率の異なる寒冷紗を季節により替える対応策が考えられます。

 あくまでこのような管理は難易度の高い原種に対する栽培手法であり、Phal. bellinaPhal. amabilis系をはじめ50種以上ある胡蝶蘭原種の8割ほどには神経質になる必要はありません。

 

Phal. amboinensis f. alba

 7年前の2007年、OrchidInnのSamさんから、知人が所有するPhal. amboinensis f. albaを売ってもよいとのことだが興味があるかと打診され、東京ドームラン展のプレオーダとして、その分け株を購入しました。その後、株分けに無理があったのか作落ちが生じて小さな葉が2枚ほどの風前の灯火の状態が続き、これまで一度も花を見ることはできませんでした。flavaやyellowと違い、世界でもおそらく数人しか持っていないであろうalbaであるため、置き場所、植え込み材、かん水など特別待遇で栽培し続け、その甲斐があってか、今年に入りやっと開花を見ることができました。なんと7年も要しました。

 この株を下写真の左と中央に示します。撮影は今月20日です。ネットで検索するとphals.netサイトにインドネシアの写真家F. Handoyo氏による同種が1点掲載されていますが、それ以外では見当たりません。その写真ですが、中央弁の先端形状、セパル・ペタルの色、および抱え咲きなど、Phal. amboinensisとは異質な印象を受けます。現在Phal. bellina albaPhal. violacea albaPhal. amboinensis flavaとの交雑種が市場にあり、その可能性も感じます。

 下写真の株は中央弁形状およびPhal. bellinaviolaceaのもつ腺状突起がないカルス形状、また他種固有の形態的類似点が見られないことから形態学的にはPhal. amboinensis f. albaと断定してもよいと思います。右端の写真は1昨年マレーシアで入手したPhal. venosa semi-albaで、左写真とは異なります。しかしこれもPhal. amboinensisの可能性が高く、自家交配によって現在さく果をつけており、実生が得られればそれらから検証する予定です。こちらがPhal. amboinensisと断定できない理由は、中央弁先端周辺の縁が鋸刃状であるPhal. venosaの特徴が僅かに見られるためです。Phal. amboinensisにはこのような縁の凹凸はなく滑らかです。今回開花したalbaも自家交配が可能か検証し、もしできなければ交雑種F1の可能性が残ることになります。


Phal. amboinensis f. alba

Phal. amboinensis f. alba midlobe

Phal. venosa semi-alba ?

 

Phal. bellina に見る野生種と実生の違い

 クラスター株を観察していると、花茎に花をつけるのではなく栄養芽(高芽)をつける傾向が高いことが分かります。、この様態は野生種の一般的特性なのか、野生種の中でも特定の株だけのものなのか興味のあるところです。例えば同じ種と比べても、同一栽培環境においてクラスターを構成する野生種は、より頻繁に高芽や脇芽をつけます。Phal. schillerianaがそうですし、Phal. lueddemannianaPhal. pulchra以上の発生率です。また自然界ではコロニーをつくるとされるPhal. cornu-cerviにも一般タイプとクラスタータイプがあり、クラスタータイプは一般種では珍しい脇芽を頻繁に発生します。今回新たに分かったことですが、Phal. stuartianaのクラスター株は高芽を余り発生しない代わりに、根から栄養芽を多く出しています。この根からの芽の発生は、クローン技術ではよく知られたランの特性です。筆者温室には20株程のPhal. stuartianaがありますが、これまでの10年間ほどの栽培で、高芽は時折ありましたが、根から自然発芽したのは1株の1度だけです。一方、野生のPhal. aphroditeでは開花期間が半年以上と長く、次々と花芽を伸ばし開花を続けるため、花茎は2m程になる特徴があります。実生でこれほど長い花茎を見たことがありません。

 野生種であっても温室栽培となれば実生と同じような生態に変化するのかと思いましたが、温室内で新たに発生した葉が丸みをもつこと以外の変化は見られません。下写真は前記した、現在200株を超えるPhal. lueddemannianaを2年前に植えつけた際に、それぞれのクラスターを繋いでいる茎が切れて本体から離れた株を別途ヘゴ板に取り付けて栽培をしたものです。切り離された小クラスターは3株でしたが、写真に示すようにこの3株から現在15本(株)の高芽が出ており、Phal. lueddemannianaの一般的な栽培では考えられない高芽の数となっています。また温室で新たに発生したこれら高芽の葉は、実生とは異なる野生種がもつ長楕円の大きな形状となっています。

 こうした形態を見ると大株になる株は同種の中でも、他とは異なる性質を持っているのかと思えてしまいます。別の見方をすると、そのような性質を持っていない株をいくら大株に仕立てようとしても無理であるかも知れません。この見方が正しいとすると、大株の高芽の価値は貴重となります。果たして増殖力は株個別の特性なのか、これまで指摘してきた根張りの空間の大きさに依存するのか、そのAND条件なのか今のところ結論には至っていません。しかし今後現地に出かけたときは、ポット植えされた苗よりは、大株があればその高芽を頂こうと思います。

 いずれにしても、増殖して大株となった株を適当な時期に、花咲か爺さんの灰を真似て、ベンジルアデニンかジベルリンを撒けば、大量の花に覆われた株が出来上がるかも知れません。見てみたい気持ちもありますが、しかしこうした裏技は原種、特に野生種にはふさわしくありません。

 野生種の葉の大きさについては昨年の歳月記にPhal. kunstleri, virids, modestaそれぞれの写真を掲載しました。これらの実生を栽培している方は少ないと思いますので実感がないかも知れません。そこで今回は胡蝶蘭原種の趣味家であればおそらく1株は所有しているであろうPhal. bellinaの、野生種を写真に撮りました。左写真は3株がそれぞれ野生種です。その中の右端の株の葉長は31㎝ですので、ほとんどの株は30㎝程の葉をもっていることになります。10年以上前に東京ドームで、マレーシア観光業者であったと思いますが巨大な葉のPhal. bellinaを販売しており、これを1株購入したことがあります。当時は順化知識がなく2週間ほどで落ちてしまいました。

 右写真は左がPhal. bellina野生種、中央がPhal. violacea mentawai、右がPhal. bellina実生で、すべてがBSサイズです。Phal. violacea mentawaiは、葉は温室栽培で入れ替わりましたが野生種です。葉長はPhal. violaceaの仲間としては最も長い葉をもつものです。右端のPhal. bellina実生は、実生株の中でも大きな株を選んでみました。通常はベンチに水平に置いて栽培しており、撮影のためにワイヤーで吊るしたものです。この写真の比較からPhal. bellinaの野生種(野生と同じような環境での栽培)は実生と比べ形態が如何に違うかが分かります。

  左写真のような大きな葉になると、水平ポット植えは葉がポットを越えてベンチに垂れて接触し、その部分から病気が発生するリスクが高くなり、水平置きでは栽培できません。よってポット植えの場合は右写真の実生のようにワイヤーで斜めに傾けて吊るす必要があります。左写真の野生種の取り付けは、炭化コルクに多めのミズゴケです。

 

(続)大株

 今月の歳月記でフィリピンで入手した大株を取り上げました。他にも下写真に示す株を栽培中です。上段左は2月の歳月記に掲載した250輪ほど花をつけたPhal. schilleriana開花株で、本来1株であったものを2株に分割してこれまで栽培していましたが、ヤシガラマットへの植え替えを機会に写真のようにレイアウトを変え一つに戻しました。中央も1昨年購入したPhal. schillerianaで、2株に分割していたものを一つにレイアウトし直したものです。右はPhal. aphroditeです。原資は野生種です。その特徴は花茎が伸び続け2m近くになります。自然界では一般的な長さですが、実生ではこれほど長くなることはまずありません。この長い複数の花茎のそれぞれの先端に8輪程の花が微風で揺れる様子は、微動だにしない慶弔用胡蝶蘭では得られない風景です。

 野生のPhal. aphroditeは1茎あたりに同時8輪程を次々と半年間程の長期間咲き続けます。写真に示すクラスター株の場合20本程の花茎となり、全体で100輪以上となります。Phal. shillerianaPhal. aphroditeの原種を合わせて1000輪の同時開花の展示が目標です。Phal. stuartianaも開花時期が合えば良いのですが、通常は1か月ほどPhal. schillerianaに比べて開花時期が遅く、調整が可能かどうかが課題です。

 これまで現地ラン園に対しては、大株が得られた場合、これを株分けしてはならないことを伝えてきました。この理由は現地の作業者が株分けをする際、可能限り長く根を残す考えはなく、鋏で根を短く切ってしまい、これが株を弱らせ順化を遅らせていたためです。しかし大株を輸入しても入手後にはやはり株分けを余儀なくされたのは大株を取り付ける適度な取り付け方法が見つからなかったからです。例えば40㎝長以上になるとヘゴ板がなく、コルクは種によって成長の差があり、またVandaのような立ち性の品種では市販バスケットサイズには限界があります。2012年9月の歳月記に掲載したPhal. lueddemaniianaの大株では、プラスチック網にミズゴケを適当に縛りつけ、これに取り付けて栽培を試みましたが予想以上の成長であったため、今春からプラスチック網にヤシガラロールマットを張り、これに適度にミズゴケを散らし、その上に株を置いて要所要所を縛って取り付けることにしました。このようにすれば株サイズの問題はなくなり、株分けをする必要がありません。Vandaのような原種では、フィリピンラン農園で見られるように素焼きの大鉢に木炭(国内ではヘゴチップ、大粒バーク、クリプトモスなどが良い)とするか、特大の木枠バスケットを自作する以外今のところ解決策は見つかっていません。

 下段左はVanda luzonicaであり80㎝の高さです。クラスター形状としては中サイズとなります。背丈および株数はこの倍ほどの大株を昨年まで所有していましたが、浜松に引っ越しの際、1bulbごとに分割してしまい写真以上の大株は、現在の手持ちにはありません。これから数か月の間にVanda luzonicaの大株が入手可能かどうかフィリピンに問い合わせ中ではあります。下段中央は3年前に入手したVanda ustii (luzonica v. immaculata)です。こちらは1.2mの高さです。最初の1年はそのままベアールートで吊り下げ、その後、素焼きの大鉢とヘゴチップで2年間栽培し今月、大サイズの木枠バスケットを底木を外して2個つなぎそれに植え替えました。また右はBulbophyullu medusaeで円筒形に植え付けしています。これは昨年マレーシアPutrajaya国際展示会で入手したものです。これも開花時期が調整できれば100輪程のmedusaeの花が見られますが果たしてどうなりますか。

 最近の国際展示会では大株で多輪花が入賞する傾向にあります。歳月記3月のマレーシア訪問で記載したように、現地の趣味家や原種専門ラン園を訪問すると、最近は少なくなったものの、これまでに見たことのないような原種の大株が自然と同じような環境で栽培されていることに驚かされることがあります。このような株をそのままま展示会に出品できれば、その圧倒的な野生原種のパワーに、原種は交配種に比べて地味と思われている方々の考えを一変する機会ともなり、面白いのではと思います。


Phal. schilleriana#1

Phal. schilleriana#2

Phal. aphrodite

Vanda luzonica

Vanda luzonica v. immaculata (ustii)

Bulb. medusae

 

Hoya(さくら蘭)の紹介

 Hoyaはガガイモ科の東南アジアを中心に広く生息する蔓系の植物です。星形の小さな花が多数集まって手毬状に咲くことでユニークであり非常に綺麗です。2008年初めてフィリピンのラン園を訪れた時、まるで多数の手毬を吊るした装飾品のような様態で、水場の大木に活着したHoya(Hoya pubicalyx)が開花している光景を見て感動し、数株を持ち帰りランと同居させ温室で栽培を始めました。それが2009年11月の今月の花の写真です。胡蝶蘭やPaphioと同居させると環境が良いのか蔓が至る所に活発に伸び、手を焼きましたが時としてランを凌ぐ程の華麗さとなります。

 このラン園では2009年頃から園主が趣味でHoyaをコレクションしはじめ、1昨年にドイツの国際蘭展で試しに販売したそうです。そうしたところランよりも先に売り切れてしまったそうです。ヨーロッパでは栽培し易いこともあって人気が高いのかも知れません。3年ほど前から本格的に収集を始め、凡そ200種あるなかで現在150種程が取扱い可能となっているようです。この数はおそらく世界的にも最も多いのではないかと思います。今月初めの訪問ではかなり広い敷地に数えきれない程栽培されていました。ひょっとすると筆者が初めて見た次の訪問で、まとめて10種類ほど購入したことが収集のキッカケになったのではないかと憶測します。

 ネットを見ると日本国内の販売では殆どがカルノーサ(Hoya carnosa)ばかり(写真2段左)で、200種もあるにも関わらず販売されている種類は僅かです。一株500円から1,500円程です。下にこのラン園で撮影した数点のHoyaを載せました。それぞれが丁度手のひらに乗る5-7㎝程の大きさです(最下段中央がHoya pubicalyxで2008年現場での撮影)。200種の種類があれば、手ごろな一般種から極めて高価な稀少種や変種もある筈で、コレクションするにはこの種だけでも面白いと思います。殆どの種では蔓茎を3節毎で切り、それぞれ挿し芽すれば次々と増えますし、10℃から35℃の耐温性があり一般室内で栽培できること、葉自体が観賞の対象になるものがあること等で、これから人気が出るのではないでしょうか。

 今年から温室を会員や地元の方々に公開していますが、東北から沖縄まで遠方からも来られており、ランだけでなくHoyaも分譲してはどうかと、人気がこれからという今の内が入手しやすいと思い50種ほどをEMSで送ってもらうことにしました。入手容易な種と、難しい種がある筈ですが、現時点のこのラン園では筆者に対してはすべて同一価格であることも面白いです。

フィリピン滞在記(2014年4月30日ー5月3日)

 このところフィリピンには春から秋にかけて2ヵ月おきの訪問となり、ラン園だけでなくレストランやモール(デパート)など、行く店はほとんど決まってしまいました。全てハイヤーを利用しドライバーはここ2年間は同じ人で、こちらの性格もよく理解しており、特に看板の無いフィリピンでは行きたいラン園に名前さえ言えば行ける点で重宝しています。今回時間に余裕ができ、民芸品を入手したくまずモールを見て回ったところ気に入ったものが無く、どこか他に民族色の濃い手工芸品を扱っている店はないかと、ドライバーに尋ねたところ、小さな店が雑居した人ごみの多い場所でも良いかと聞かれ、そこに出かけました。リーサル公園から車で15分程のQuiapoというマニラ市内では最も古い町だそうで、古い有名な教会があります。木曜日の4時頃でしたが大変な人ごみで露天販売の生魚屋や日用雑貨店が立ち並び、高級品以外ならば何でもあるといった下町の雰囲気です。

 着いて最初に少数民族による工芸品と思われる、面や人形の木工品を売る2-3の店を見ていたところ、店員がCanonEOSカメラをもっている筆者を見て、ドライバーへ、カメラは同伴しているあなたが持つようにとアドバイスされたそうです。カメラは引ったくりの危険があるとのことです。当日は35℃以上もある炎天下で、半袖のシャツのポケットに携帯を入れていましたが、これもあなたが持ってこの地区を歩いてはいけないと言われ、なぜ外から見えないポケット中の携帯までダメなのかと聞いたところ、ポケットの膨らみの形で携帯であることが分かるとのことでした。財布が入った小型のカバンを肩掛けして歩くことなどもってのほかなのでしょう。それほどこのQuiapoは危険な地域なのかと驚きました。改めて周りをみたところ大変な人ごみにも関わらず、外国人らしい人はほとんど見かけません。おそらく旅行ガイドには旅行者は一人では行ってはいけない場所になっているのかも知れません。

 翌日ラン園を訪問した際、この話を女性園主にしたところ、私は25年以上行ったことがないとのことで、特に我々が歩いていたブリッジ周辺はもっとも危険な場所らしく、ドライバーになぜそんな場所に連れて行ったのかと呆れた顔をしていました。ドライバーは若いころ、ここで引ったくりを捕えた自慢話をしていましたので懐かしかったのかも知れません。しかしこの場所ならではでしょうか、水牛の角で出来た置物を最初は600ペソと、プラスチック製ではないかと思える値段をいわれたものの、フィリピンではデパートでも値切る習慣を身に付けたせいか、言い値で買うこともないと、500ペソ(凡そ1000円)にしてもらい手に入れることができました。ハイリスク・ハイリターンだと冗談を言えば園主に怒られそうですが、意外とそうではないと言う人もいるもののマレーシアとは比較にならない程、フィリピンは夜は当然のこと、昼間でも外国人が独り歩き出来ない地区が多いようです。

大株仕立て

 デンドロビウムは、現在その多くが4-5本程のbulbを1株として販売されています。しかし、多くの原種の元株は多数のbulbであったものを販売の容易さから小分けに分割されたものです。

 そこで花の美しいDen. papilioを生息地の自然様態と同様に多数の花の同時開花を得たく、同一ロット内の本種を寄せ植えにして大株とすることを試みました。Den. papilioは高山に生息するクールタイプで、bulbは細いのですが、根がbulbに比べて太く立ち性であるため、今回は木枠バスケットに山野草で使用する駄温鉢のような厚手の、通気性の良い素焼き鉢の欠片を一部入れ、これにミズゴケを加えたコンポストとしました。下写真左のDen. papilioは16株分を一つのバスケットに植付けており、1株が通常5-6本のbulbですからバスケット当たりのbulb数はおよそ90本となります。Den. papilioは国内では高価で1株4,000円から8,000円程のようで、これで計算するとバスケット当たりおよそ10万円となります。

 今回Den. papilioをフィリピンで200株購入しました。もし国内で本種を200株購入した場合、1株5,000円の計算では100万円となってしまいます。フィリピンでの購入額は10万円にもなりません。この結果、このような寄せ植えが可能となり、多輪花のDen. papilioを期待することができます。現地と国内の価格差が、他の多くのランもそうですが1/3-1/5程度ならば国内販売店の経費や利益から妥当なところと分かりますが、なぜ 1/10以上も違うのかよく分かりません。日本のラン愛好家は世界のどこよりもお金持ちとしか言いようがありません。

 一方、右写真はDen. victoria reginaeです。こちらは青い花を付ける美しいデンドロです。下垂タイプの高山系で前記同様にクールタイプです。よってこちらはバスケットの4方からbulbを垂らす取付です。バスケットの中はミズゴケとしました。こちらも1株のbulbは4-5本程です。これをバスケット当たり10株寄せ植えをします。150株をフィリピンで購入しましたが、こちらも価格は似たり寄ったりといったところでしょうか。


Den. papilio

Den. victoria reginae

 ちなみに、これらクールタイプを一般の胡蝶蘭と同居して栽培すると、夏の高温をピークに徐々に株が弱まりbulb数も減少し、やがて枯れます。メトロマニラは無論のこと、Tagaytayのような避暑地でも冷房された温室でないと高温で徐々に弱まっていくとの話でした。

フィリピンで入手した大株

 4月30日から3泊4日でフィリピンのラン園を訪問した今回の目的は、クラスター株(元株は1本から脇芽や高芽により自然増殖した株)を入手することでした。数年前から依頼しており、ようやく何点か集まったとのことで出かけました。

 入手したクラスター株は以下で、株数は一つのクラスターを構成している株数です。下写真にその一部を掲載しました。

1. Phal. schilleriana 30株(高芽は除く)
2. Phal. stuartiana 32株/18株/15株
3. Phal. lueddemanniana 110株
4. Phal. aphrodite 15株

 Phal. schillerianaはPOS(Philippines Orchid Society)の審査で部門別最優秀賞を取った株です。ブルーのリボンが左に見えます。フィリピンでは青、赤、白のリボンがそれぞれ1,2,3位となります。この株は台湾の方に販売予定されていたそうですが、まだDepositが無いとのことで手に入れることができました。下写真3枚の高さはそれぞれ1.4mです。原種の大株は現在フィリピンのほとんどのラン園で入手できなくなりました。ジャングルにはおそらく多数生息していると思いますが、野性の樹から、活着した株を小分けに切らないで剥がすことは、オーキッドハンターにとって極めてな危険な作業であり、たとえ手に入れたとしても品質上の問題や直接山採り株を輸出することは多くの国で違法行為とされます。山採り株は、苔やカビ類あるいは病痕が激しく、1株ならばともかくクラスター株ともなれば葉を洗浄しても容易に分かります。

 原資(元親株)は山採り株であっても数年栽培し、この間に脇芽や高芽によって増殖した株がクラスターを形成して大株となったもの以外の入手は困難です。しかしこれまでラン園で積極的に大株を作り上げようとするビジネス・プログラムを聞いたことがありません。数年のコストをかけて栽培する程、大株の需要が少なかったからではないかと思います。これまでは現地顧客(趣味家)の庭の片隅で大きくなってしまった株や、ラン園のシンボリックなディスプレイ用として大きくなった株を譲ってもらう程度であったのかも知れません。ラン園の話によれば、昔は大株を良く見かけたものの今はどこにあるか思い当らないとのことでした。その一方で、園主の話では最近になって大株の購入希望者が増えてきたそうです。特に台湾からの依頼が多いとのことでした。多くは台湾市場に流れたのかも知れません。展示会用でしょうか。

 写真中央のPhal. stuartianaの32株は初めてみる大株で、それぞれの葉が非常に大きく全体ではかなりの重量です。若干葉がヘタっていますが、2ヵ月程で張りが出ると思います。Phal. stuartianaPhal. schillerianaPhal. lueddemannianaに比べ高芽や脇芽の発生は稀で、その性格にも拘らず32株のクラスターを成した大株はこれまで見たことがありません。筆者の10年間程の栽培経験では、Phal. stuartianaが脇芽あるいは高芽で増えた株数は3株止まりです。3月の歳月記に取り上げたマレーシア訪問の農園のようなところで生育されたものと思います。今回の入手株の中では、最も希少価値があるように思います。


Phal. schilleriana

POSの部門別1位のクラスター株です。


Phal. stuartiana

32株のPhal. stuartianaは希少です。


Phal. lueddemanniana

110株からなるクラスター栽培株です。

  このような株を入手した場合、これまで取付材は杉皮板や、サイズが1m以内であれば自由にサイズが調整できる炭化コルクでしたが、平面展開で1m平方を超える大株は、プラスチックの網にヤシ殻マットを貼って取り付けることにしました。プラスチック網が上写真でマットを透かし見えます。下写真左は2012年9月の歳月記に掲載したPhal. lueddemaniianaの2年後の株です。現在、200株以上と3割ほど増え、余りにも大きくなり2週間ほど前にヤシ殻マットに移植したものです。マットの横幅は2mで高さは1.4mです。2-3年もするとマットが見えなくなると思います。また同年入手した未掲載のPhal. lueddemannianaも写真右に示します。こちらも100株以上のクラスターですが、平面ではなく全方向の立体的なヘゴ板への取付です。これらについては株数を数えたことが無く正確には分かりません。それぞれ毎年30株ほどの高芽を発生し、増え続けています。


Phal. lueddemanniana

2012年夏に入手したクラスター株。毎年30株程の高芽で株数が増加中。


Phal. lueddemanniana

左と同じ時期に入手。

 開花時期を調整し、これらを来年の東京ドームラン展に展示したいと目論みをしているところです。

4月

Phal. sumatrana

 国内でのPhal. sumatranaの開花最盛期は6-7月となります。今月、温室にてSabah原産の本種が開花し始め、改めてこれまでのSabah産Phal. sumatranazebrina)とされた過去の写真を調べたところ、1点Phal. tetraspisと思われるものが見つかり、昨年7月の今月の花のzebrina写真を削除し、歳月記2013年7月の”Phal. sumatranaについて”に掲載した写真を差し替えました。マレーシアで購入したSabah産Phal. zebrinaとされる実生にバー入りのPhal. teteraspisがミスラベルされたか、あるいは最近よく見られる確信犯的な、片親をPhal. tetraspisで交配した実生かが疑われます。フィリピンPalawan産Phal. zebrinaPhal. tetraspisとは花被片の模様が似るところがあり、Sabah生息種にもあり得るパターン(Phal. sumatrana f. paucivittata)と思っていましたが、今回Sabah野生種を原資とする株の開花を見てミスラベルと判断しました。

 ここ2-3年、台湾やタイからと思われる海外からの実生を元に栽培したBS株がマレーシアの原種ラン農園でも販売されるようになり、商品名の原種の色やパターンと異なる株が頻繁に発生しています。葉形状が類似している原種にPhal. tetraspisが混在していることもしばしばです。また会員の方からのラン園から購入した開花株の問い合わせの中にも商品名と異なる品種が最近よく見られます。こうなると純正株を得るためには、野生株からの増殖株(株分けや高芽)か、自身でメリクロンや自家交配を行って苗を得る以外ないように最近は思っています。

 これまでの10年ほどの間でBorneo島原産のPhal. sumatranaとされた株を2-3株栽培した経験はあるものの、Sabah原産株を纏まって栽培したことはなく、やっと本物のPhal. sumatrana Sabahを見ることができました。下左写真に示すようにSabah生息種はセパル、ペタルの赤褐色のバーが細いことが特徴となります。右はその葉で、正面を向いている葉は21x9㎝であり、15株ほどの中で最大サイズは32x12㎝です。このように実生を温室で育てた場合と、歳月記3月のマレーシア訪問で掲載したような自然環境で栽培した場合では株サイズは大きく異なり、特に肥料を与えている訳でもないにも拘らず、自然環境では葉長が長く、殆どが大株となっています。

 以前にも触れましたが、Phal. bellinaを始め、多くの原種で、その葉長は30㎝を超えており、なぜ自然と人工的な栽培環境での成長がこれほどまでに違うのか外見からは、根の数とその長さ以外考えられません。例えばPhal. cornu-cerviPhal. lueddemaniiana系を株サイズに対してかなり大きなプラスチック鉢にヘゴチップで栽培すると、根は1年もすると盛んに伸長し太く、根数も増えます。ちなみにPhal. hieroglyphicaで3.5号素焼き鉢・ミズゴケ、同サイズ硬質プラスチックポット・ヘゴチップ、および21㎝スリット鉢・ヘゴチップで試した結果、前者2組に対して後者は圧倒的に大株となっています。

 カトレア栽培でよく言われる、株の大きさに対してなるべく小さい鉢を使用すべき、との先入観から胡蝶蘭に対しても、鉢はなるべく小さい方が良いと勘違いし、根にとって窮屈な鉢にしがちです。これは過かん水の恐れのあるミズゴケを使用する場合や、販売用で植込み材のコストが問題になる場合の手段であって、ヘゴチップなど気相の大きな植込み材を使用する場合は、株サイズに対してアンバランスな程大きな鉢を使用した方が株を大きくすることができます。ヘゴ板等の下垂系の取付材も同様です。一度試して見てはどうでしょうか?

胡蝶蘭原種と香り

 胡蝶蘭で香りをもつ代表的な原種としてPhal. bellinaviolaceaがよく知られています。その他比較的強い香り(あるいは匂い)を持つ種にPhal. floresensis, sumatrana, corningianaおよび lueddemanniana系があり、やや弱い香りにwilsonii系があります。Phal. giganteaは香りが無いと記載されたサイトも見かけます。ボルネオ産のPhal. gigantea、特にSabah生息種は柑橘系の強いよい香りがします。

 意外と思われるかもしれませんが、香りを持つ種が少ないとされる胡蝶蘭原種の多くが香りを持っています。例えばPhal. equestris, Phal. amabilis, Phal. cornu-cerviなどは香りが無いとされています。しかしそれなりの数が集まると匂いが感知できます。Kalimantan産Phal. cornu-cerviには皮革の匂いがあります。同じ種であっても香りの有るものと無いものの代表がPhal. modestaでボルネオSabah産はよく匂います。また殆どの人はPhal. schillerianaには香りがないと思われているのでは。微香ですがバラに似た香りがします。Phal. schillerianaPhal. modesta同様に感知できるものとできないものがあり、これは生息地の違いによるものと思われます。

 多くの人が香りを認識していない原因は、微香とされる原種の多くが開花後数日間(2-3日後がピーク)の、晴れた日の午前中(8-9時頃がピーク)に限られるためです。曇りの日や午後、あるいは環境が合わないと無臭になってしまいます。

 胡蝶蘭の中で最も良い香りをもつものは何かと問われれば、筆者はPhal. javanicaを上げます。香りは好き嫌いがあるので、良い悪いは一般論とはなりにくいのですが、カトレア系を含め筆者の経験の中では、良い香りをもつランの筆頭に上げます。しかしこれもPhal. schilleriana同様に、ほとんどの人は感受した体験が無いと思います。こちらも晴れた午前中の限られた時間帯でのみ香りを放ちます。筆者が所有している良い香りを持つPhal. javanicaはjava島の従来の生息地を原資とする種と思われますが、興味があるのは1昨年Java島の北部で新たに見つかったPhal. javanicaの香りとは微妙に異なり、前者の香り方が心地よいように感じます。

 ランの中で最も良い香りではないかと感じているPhal. javanicaを下写真に示します。新しい地域種との香りの差を認識したため、この1株固有の特性の可能性もあり、早速自家交配を行いました。右写真はそのさく果となります。この香りを実生に継承してくれることを期待しています。

 匂いが無いと思われている胡蝶蘭原種が開花した際、開花して2-3日後の晴れた日の午前中に一度確かめては如何でしょうか?若草のような香りからPhal. javanicaのように香水にしてもおかしくない香りまで様々に感知することができると思います。胡蝶蘭に限ってみれば、比較的強い匂いを持つ種は、同時開花数が1 -2輪花に多く、多輪花では微香であったり、無臭の傾向があります。匂いは花粉媒介者を誘うためのものですが、匂いによって虫を誘うか、花の艶やかさで誘うかが輪花数の少ない種と多い種の違いにも表れているかのようです。匂いを放つには相当な体力を必要とし、よって多輪花や体力の余りない小型種は、限られた条件でのみ匂いを放つのではないかと想像します。通常では香りの無い種が、限られた条件下であれば香りを出す状態はコンディションが良いことの証でもあります。昨年は香りがしたのに今年はしないと言った状態は環境の悪化が考えられます。

 

その後のParaphalaenopsis

 昨年の本歳月記10月に記載した、マレーシア・ラン農園でデンドロのベンチの片隅に置かれていた、Paraphal. deneveiの5株の内、4株に花芽がつき、その内の2株が開花しました。それが下左右2枚の写真です。左写真の花被片はセパル、ペタルおよびリップの形態はdeneveiの特徴を良く示しています。一方、右写真のセパルおよびペタルのベース色と縁取りはlabukensisに似た色合いとなっています。しかしリップはいずれもdenevei特有の配色であり、labukensisとは異なります。葉が立ち性であることと開花時点で30㎝に満たないこともdeneveiの形態を示しています。右写真のセパル、ペタルのベース色をdeneveiの濃色タイプと見なせば、deneveiと断定できるものの、これほどの濃色はこれまでのネット上での映像には見当たりません。いずれにしてもこれらを20リンギッド(600円)で入手できたのは現地ならではの収穫です。

 一方、2mほどの自然生息と同じ大きさになるには数十年かかるとする説について、筆者温室のParaphal labukensisは、下写真からも分かるように今年1月には1㎝ほどであった新芽が4か月間で8㎝程度伸長しています。こうなると、かなりこれまでの説は怪しげとなります。何か特別の肥料とか成長ホルモン剤を与えているわけでもなく、炭化コルクにミズゴケで根を抑えただけの簡単な取付です。また上記のPharaphal deneveiは素焼き鉢にミズゴケのごく一般的な組み合わせで、胡蝶蘭の間に置かれており,胡蝶蘭と全く同じ環境で栽培されています。他の15本ほどのParaphalもヘゴ板や炭化コルクにやや多めのミズゴケで根を押さえて取り付けており、胡蝶蘭原種の間に在って、特別な栽培法をしている訳ではありません。これらも花芽をつけているものが現在多数あり、気をつけている点は、根を覆うミズゴケを乾燥させないことぐらいです。多くの本種の栽培者から見れば不思議なことかも知れませんが、筆者の温室では胡蝶蘭と同じように頻繁に花を付けています。1株で見れば3年おきの開花と言ったところでしょうか。これで定年後にParaphalを栽培し始めても、花を見るのが先か、あの世からのお迎えが先かの心配はいらないようです。


2014年1月撮影

2014年4月撮影

 初めてParaphalを栽培しようとしている方には、木枠バスケットを勧めます。斜め吊りをするか、バスケットの底の方から根を入れて固定し吊り下げる、すなわち葉がバスケットの底から出ているイメージの取り付け方のほうがより自然に近くもあり、いずれも問題ありません。

Phal. rundumensis

 Borneo島Sabah州,Tenom地区Rundumで採取された胡蝶蘭が、2008年Phillip Cribb、Tony Lamb氏らによりPhal. rundumensisとしてMalesian Orchid Journalに発表されました。その後、この新種についての情報は殆どなく今日に至っています。Phal. rundumensisの葉および根の様態はPhal. giganteaPhal. doweryensisと類似するとされ、一部のサイトには本種の写真が掲載されていますが、花被片形状はPhal. doweryensisと変わりがなく、セパル、ペタルおよび中央弁からは形態学的に識別することが困難です。

 このサイトでも取り上げましたが、市場においてPhal. rundumensisとされる複数の開花株を検証した結果、Phal. doweryensisとの形態学的な違いを見出すことはできず、新種として実在するのかどうかを含め、少なくとも現在市場で流通し、ラベリングされるPhal. rundumensisは偽語、あるいは実在するとすればその名を借りて販売を目論む偽物である可能性が高く、Phal. rundumensisとして本サイトに掲載した開花株の写真を削除(2014/5/17)しました。新たな情報が得られれば再掲載を検討します。

 

CITESの申請費用について(マレーシアの例)

 多くの方にとって、ラン店から輸入株を購入される場合、あまりCITESや植物検疫申請料金について考えることはないと思います。実際これらの料金は国や業者によって異なります。展示会上で購入する場合の一例として、エクアドルMundifloraでは1品種毎に設定されていましたし、フィリピンの業者では株価格に含まれ、またマレーシアからの持ち帰りでは一括別料金となっています。その違いの背景を知るのも参考になると思います。

 マレーシアでは関係機関への申請料金はCITES申請書類の枚数で定められおり、直輸入の場合、多くの業者はこの書類枚数を基に購入者へそれに要した費用を請求します。これによると、CITES書類1枚当たりの料金は60リンギッドで日本円で約2,000円です。植物検疫料金は種類や数に関係なく50リンギッドです。問題は、書類には1品種当たりの数は制限ありませんが、1枚当たりに記載できる品種は4種類までとなります。よって海外から購入しようとする場合、それそれが1品種1株であった場合、1枚の書類には4品種4株しか記載できず、1株当たり500円の許可書費用となります。一方、4品種それぞれを10株購入する場合は、1株当たり50円となります。卸値近い価格で販売している海外業者にとっては、多くの品種で価格は1,000円前後ですので、株数が多くないと1株当たりのCITES費用分が無視できなくなります。Bulbophyllumのように500円前後の品種が多いランを品種毎に1株づつ発注すれば、CITES料金を含めると1株当たり1,000円となり、その価格の50%をCITES費用が占めることになります。

 カタログに定価があり、且つCITES料金は含まれますと書かれていれば、商品価格にはすでに最悪ケースの500円程が本体価格に上乗せされていることになり、このような業者から購入する場合に、品種毎に購入する株数がそれなりにあれば、上記の背景から考えれば最大5割近くのディスカウントを要求しておかしくはありません。要するにディスカウントは購入する品種当たりの株数に大きく依存し、必ずしも総発注価格ではないことになります。例えれば、CITES料金が含まれている業者から100品種を1株づつ買うのと、1品種のみを100株買うのとは、前者は無理ですが、後者は50%ほどのディスカウントが可能であることになります。この50%は株本体が500円の場合です。1,000円であれば30%程度のディスカウントです。本来Bulbophyllum, Coelogyne, Dendrobium等の原種では本体価格が1,000円を超えるものは現地卸値で全体の1割もないため、展示会等においては大いに交渉の余地があることになります。もっとも現地流通卸値の3倍以上でインターネット販売している現地業者であれば、販売価格に対するCITES申請料金の占める割合は意味がありません。にも拘らずその価格にさらにCITES申請料を別途要求する業者は余程心臓が強いのでしょう。

Phal. equestris roseaの変異体

 2年ほど前、自家交配したPhal. equestris rosea (ilocos type)の多くが今年に入り花をつけています。このroseaフォームは、ピンク色ですが特に色の濃いものを選び自家交配をしたものです。野生種では親の形態をそのまま継承する率が高く、全株で親とほぼ同じような色合をもっています。この中から突然変異体と思われる1株が出現したので撮影しました。

 写真上段左は一般的なroseaタイプで、上段中央は筆者による2012年に自家交配した実生株です。この実生株の中から1株に変異体と思われる下段左と中央に示す形態が出現しました。映像では似たようなPhal. equestris peloricと名づけられた写真上段右に示すクローン株が市場にありますが、これは自家交配が出来ないタイプで、果たして自然発生的に生じた変種なのか人工的に多属との交配によるF1なのかは不明です。むしろ今回出現した変異体は下段右に示すPhal. violaceaの突然変異の形態に似ています。さらにこれを自家交配して実生を確認してみようと考えています。 


Phal. equestris rosea

一般的なroseaタイプでです。

Phal. equestris rosea

自家交配による実生株

Phal. equestris peloric type

クローン株で、自家交配ではタネができません。

Phal. equestris rosea 変異体

2012年度の自家交配によって1株出現しました。

Phal. equestris rosea 変異体

左の花の別写真です

Phal. violacea mutant

Phal. violaceaの突然変異体とされています。

 

エクアドルランのその後

 2日にマレーシアで入手した株の植え付けが終了し一段落したところです。依頼している株の情報が今週末にフィリピンから入ることになっており、その情報を待って今月2週目末頃から3週目にフィリピンへの訪問を予定しています。

 2月の東京ドーム蘭展でエクアドルのMagaliさんからドラキュラ以外にもCool系原種を購入したり頂いたりしたことは取り上げましたが、実はその際、当方は全く未知の植物なので、Magaliさんに予算だけを伝え、初心者向けとして適当に選んでもらえないかと頼みました。その際、彼女は展示会価格でなくインターネット価格で販売価格を設定したことから100株近い数となり、それが同じ種類ではなく全て異なる種であったためエクアドルラン原種のオンパレードとなり、その栽培で今日に至っています。エクアドルランに関しての植込み材の知識が無いため、アツモリソウの栽培経験から、それぞれの原種の根の形態を見て、クリプトモス単体と、バーク、軽石、PH調整済木炭、ゼオライトのそれぞれを3:3:3:1の割合からなるミックスコンポストと、そのミックスコンポストにさらにクリプトモスを組み合わせた、それぞれ3種類の植込み材をつくり、特に低温タイプはこれを高山性山野草に用いる駄温鉢を用いて植え込みました。この鉢は気化熱で日本の夏ですと10度近くまで下げ、25℃位を保つ性能があり、礼文や釜無アツモリ草には不可欠の鉢です。通風のある低温度や高湿度下では3-5℃程度の低下です。

 現在、温室では昼間は温度センサーで外気を取り入れ25℃以下、夜間は18℃程度となっています。午前中は晴れた日でも温室天井の中空ポリカのみで寒冷紗をかけず温室内の輝度は比較的高く、昼少し前から70%寒冷紗をかけています。かん水は晴れた日は朝と夕の2回、曇りは1回で、毎日軽く与えています。この環境で40日程経過しましたが、低温、中温タイプとも順調に順化が進み、新しい芽を出したり花茎を伸ばして開花をしています。下写真はその一部となります。


Miltoniopsis phalaenopsis

Masdevallia pachyura

Pleurothallis luctuosa aff

Cochlioda beyrodtiana

Restrepia guttulata

Pleurothallis perijaensis
Trichosalpinx memor

 このほかPhrag. kovachii(これはエクアドル産ではなく、別業者からの入手)やドラキュラ属各種も芽を伸ばし始めました。問題は気温が上がるこれからで、今月中旬からは昼間数時間はエアコンが必要になりそうです。花形態はバルボフィラムに似て多様ですが東南アジア系とはかなり異質な感じを受けます。写真は3月28日から4月1日の撮影です。上段と中段は花らしいのですが、下段の3点の内、中央は葉の付根にどれが花弁なのか分からないような形状ですし、下段右は数ミリの極めて小さい花です。現在、これらCool系と同居している胡蝶蘭はなく、冬になればPhal. wilsoniiを、また、夏季はデンドロとセロジネのCoolタイプを同居させようと思案しているところです。

3月

害虫被害

 春先になると目立つ被害がカタツムリやナメクジによるものです。特に浜松では気温が高いせいか、これら害虫の発生が会津と比べて顕著です。その被害の苗とこの被害をもたらすマイマイを下写真に示します。ボールペンの先と比較すると大きさが分かると思います。数ミリで貝殻は円錐状ではなく扁平です。カタツムリの種類は地方や環境によって数種類考えられますが、筆者温室では会津のころから、これまで全て写真のマイマイによる被害です。


葉の表

葉の裏


左写真被害のマイマイ

 食害は新芽だけで、写真に示すように、複数の小さな黒い点が離散的に現れ、その周りが水浸状に滲んでいます。この水浸状部分は細菌性の病気に感染したことを示しています。このまま放置するとそれぞれの部位が拡大し、やがて腐って落ちます。一般的なカビや細菌性の病気と違う点は、初期段階においては写真のような複数の斑点様態であることで、カビや細菌による症状では水浸状模様を伴う黒点が離散的に同時多発することはありません。夜遅く懐中電灯で初期症状段階の苗を照らすと、しばしば小さなマイマイを葉上や鉢面に見ることができます。ナメクジ被害も同様な症状と思われます。

 今回、1月末から2月にかけてPhal. bellinaに多発したため、市販のメタアルデヒド系の粒状薬剤を温室のあちこちに蒔いたのですが殆ど効果が無く、誘って除去するような悠長なことは言っていられなくなり、葉、鉢、ベンチ全体にかかる液体散布以外ないと考え、3月中旬にマイキラーという乳剤タイプのナメクジ、カタツムリ殺虫剤を購入しました。この薬は5年ほど前に劇薬指定となっており、今回は署名捺印を送付しての購入です。規定希釈では100-200倍で、これを2回に分けて散布しました。効き目は抜群で被害はすっかり収まりました。植物に薬害等の影響はありません。

 最近は夜の温室内をあまり見回ったことが無く、今回のことでしばらく夜遅くに懐中電灯で観察してみました。ナメクジを数匹見つけましたがいずれも小さく、会津の晩秋でよく見かけた程の成虫は見つかりませんでした。おそらく今年に入ってから孵化したものと思われます。

 写真に示すような症状の被害に遭った場合、躊躇しないで斑点のない葉元近くで切り落とすことが必要です。すでに写真のような滲みが出ていては、細菌性の薬の塗布(原液であっても)では進行を止めることは難しいと思います。葉を切り落とすことで苗としての見た目は良くなくなりますが、葉は伸長しますし、新しい葉もやがて現れるため切り落としが最善です。

 

マレーシア滞在記2014年3月
(マレーシアへ近い将来ランを買い付けに行く趣味家の参考に)

その1

 昨年10月以来の訪問です。JAL午後便で午前11時50分成田を離陸し、クアラルンプールに18時30分着となりました。当夜はエアポートタクシーで空港からクアラルンプール市内ツインタワー近くのShangri-laホテルに向かいました。これまでエアーポートタクシーは空港内でチケットを購入する前払い(クーポン)方式を利用し、料金は高速代を含め75リンギッド(円は凡そリンギッドの32倍)でした。今回はいつも利用するチケットカウンタが閉じていたため、別のカウンターに行ったところメーターでの支払いである旨告げられました。メーター方式ではドライバーによって如何様にも料金が変わるのではないかと嫌な予感がしつつもタクシーに乗ってから、なぜクーポン制がなくなったのかと聞いたところ、そうではなく3種類あり乗客が選ぶことができるそうで、たまたま行ったカウンターがタクシーメーター制を取扱っているところであったことが分かりました。整理券のようなものを2リンギッドで買い、これを持ってタクシー乗り場に向かいます。マレーシアではタクシーによって料金は倍ほど違いがあると聞いているため、少々不安でもあり乗車してからまずドライバーに凡その料金を聞いたところ55-100リンギッドと言われました。そこでこれまでの訪問ではクーポンを利用し70リンギッド程度であったことを伝えました。途中ガソリンを入れたいと言うのでスタンドに寄りましたが、その間メーターを止めるのかと思いきやメーターが入ったまま、のんびりとガソリンを入れています。メーターは30秒程で0.2リンギッドカウントアップしていき、ホテルに着いたら、この分は全体の支払いから必ず差し引かせるぞと思いながらの乗車でした。ところがホテルに着いてメーターを見たところ、僅か58リンギットとなっています。はてと思いながら結局支払いは幾らなのかと聞いたところ、高速代も全て含めて58リンギッドとのこと、驚きました。それではこれまでのクーポンの75リンギッドは道路が混雑した場合も想定しての平均値なのかと理解しました。

 このドライバーとは、2か月間に及ぶ雨無しと高温気象で高速道路周辺の雑木林があちこちで焼野原になっていたり、いまだに煙が昇って燻っている場所もあり、こうした状況や今回のマレーシア航空機事故などを話しながらの40分程でしたが、ドライバーの友人が外国のコインを集めるのが趣味で、もしコインを持っていたらもらえないかと言われ10円と50円を1枚ずつあげましたが、そんなこともあって最短距離で行ってくれたのかも知れません。よし今度からはメータータクシーにしようと、料金が毎回変わるのをハラハラしながらの乗車も面白いではないかと思えてきました。

その2

 初日宿泊したクアラルンプールのShangri-laホテルは5星のおそらく世界でも屈指の質とサービスを誇るホテルの一つと思います。翌日朝にはラン園主が迎えに来てくれて90分ほどかけてセレンバンに向かいました。前回のこともあり、今度は市内で2番目のレベルとなるKlanaホテルに2日泊まることにしました。Royale Bintangホテルの半額ほどなので、ある程度そのレベルは覚悟はしていました。部屋に入って最初に気が付いたのは洗面やバスルームにタオル類が一切ないことです。部屋支度の前かとも思いましたが廊下に部屋の清掃をしている人がいたので、タオルが無い旨を伝えたところ2-3分でタオルをもってきてくれました。バスタオル2枚だけでした。そこで洗面用の小さいタオルもないのでお願いしたいと伝えたところ、また2-3分後に今度は小さなタオルを2枚もってきました。その間にスリッパはどこかと探しましたが、スリッパが見当たりません。そこで洗面タオルを持ってきたときスリッパがないと伝え、これも嫌な顔をすることもなく、しばらくして持ってきました。園主がロビーで待っているため、それ以上部屋を見ることなく出かけましたが、夕方ホテルに戻って、さてシャワーをと思い、よくよく洗面台からシャワールームを眺めたところ、まず洗面台にコップがありません。通常2個ガラスコップが置かれているのですが。また4-5年前までは高級なホテルでもあまり見かけませんでしたが、今では都市のホテルでは良く見かける例えば使い捨ての髭剃りや櫛などの洗面用品がなく、石鹸、ボディーソープ、シャンプー、シャワーキャップの4点のみでそれ以外何もありません。こんなこともあろうかと、シャンプーを含め海外旅行にはすべて持って行きますので問題はありません。

 これで本当に4星ホテルなのかと思いながら、コップがないのは部屋にある湯沸ポットが置かれた所にあるものを使えば良いと、それで代用しました。その後シャワーを浴びてからさてバスローブはと探しましたが、何処を探してもバスローブが見当たりません。なるほどこんなものかと、まあ着なくても風邪をひくことはないであろうと諦めました。次に外は30℃近いと思われますが、部屋が寒くエアコンの温度表示板を見たところ15℃です。そこで22℃程度に上げようと操作したのですが、まったく制御が効きません。風量は弱、中、強があり変化するのですが、弱で15℃なのでこれ以上室温を上げることはエアコンを切る以外ないことになります。1昨年、猛暑のマニラのパンパシフィックホテルへ友人たち3-4人で宿泊した時、それぞれの友人たちの各部屋の温度制御が不良で、余りの寒さに全員が翌朝風邪をひいて、くしゃみをしていた悪夢が過ぎりましたが、まあ寝る直前でエアコンを止め、暑くなればまた入れれば良いと覚悟しました。どうも猛暑の国では、強力な冷房こそが最大のサービスと勘違いしているようです。制御ができての冷房です。

 今度はシャワーです。セレンバンのRoyale Bintangホテル、フィリピンTagaytayのTaal vistaホテル、いずれもShagri-laホテル並みの日本円にして15,000-20,000円/1泊の高級ホテルでありながら、シャワーをお湯にしてもかなり長い時間は水で、次第にぬるま湯になり、また暫くして水になってしまいます。その時間を見計らいながらのシャワーは、かなりの集中力が必要で、腹が立つ前にバカバカしいとしか言いようがありません。驚いたことに、Klanaホテルは宿泊料金はその半額でありながら最初からお湯が出ました。シャワーをお湯にし、お湯が出たのを感心する自分が妙に滑稽です。それでも最後はやや冷たくなって行くのでノブを徐々に高温方向に回しながらのシャワーです。兎も角、最後まで熱い湯がでるだけ大したものです。

 次はトイレです。最近は何があっても不思議ではないと考えるようになっているので驚きはしませんが、レバーの1回操作では水がでません。2回あるいは3回繰り返すとやっと頃合いを見計らったように一気に水が流れます。7-8回もありました。しかしいずれは流れるだけ幸運と思い込むことにしました。すると、ふと研究者魂というのが湧きあがり、この数回の呼び水のようなレバー操作をもつトイレタンクの構造は一体どうなっているのかに関心が湧き、逆にこのようなトイレを設計してもらいたいと言われれば相当の工夫が必要に違いないと妄想してしまいました。何と言いますか、このような楽天的気概が無くては外国の地方に宿泊することはできません。

 最後に、ベットの脇にはサイドボードがあり、このボードから部屋のライトなどON/OFFできます。またこのボードには時刻表示がついており、7セグメントLEDでした。それがかなり年代物?で全体が光っているのか、光るべきセグメントが暗いのか、現在何時なのか目を凝らしても読み取れません。置時計も盗難回避のためでしょうかありません。つまりこの部屋には時を示すものが何もないことになります。仕方が無く携帯を眺め眺めの時間チェックです。

 ここでも早朝5時を過ぎると半時ほどコーランが聞こえてきます。窓は閉め切っていても良く聞こえるので、室外では相当大きな音量と思われます。チェックアウトするとき、これまで数十年間海外旅行をしていて2泊ともバスローブのないホテルは初めてなので、どうしたことか聞いてみようと思い質問したところ、必要であれば言ってもらえれば提供しますとあっさりと言われてしまいました。すなわちこのホテルは言わなければタオルもスリッパもコップもないということのようです。チェックインの時そのような説明もなく、部屋にもそうした案内もなく、再度これが本当に4星ホテルのデラックスルームなのかと首を傾げてしまいましたが、それはそれでこのホテルのポリシーなのでしょう。マレーシアと日本の物価を比較をすれば、日本のビジネスホテル並みの料金は決して安いホテルではありません。いずれにしても、このホテルを選ぶ選ばないは宿泊者の自由です。ちなみに利用しませんが確かにプールだけは輝いていました。プールに騙されてはいけない。マレーシアでは高級のシンボルのようなプールと、部屋の質・サービスは別、これが今回の教訓でした。

 クアラルンプール市内やPutrajaya市であれば国際ホテルは沢山あります。しかしセレンバンからは1時間以上かかり園主の送迎に迷惑がかかるため、訪問初日を除いて、周辺にラン園の多いこのようなローカルなホテルを利用している訳です。確認したところ観光地Port Dicksonまでならばセレンバンから30分で園主も近くて良いとのこと。こちらには多くのホテルがあり今度はこちらで宿泊しようと思っています。海外では可能な限り高級なホテルに泊まること、タクシーは料金が高くてもエアーポートやホテルタクシーを、ハイヤーは必ず前もって調べた、あるいはラン園で手配した会社を利用する、最近は殆ど一人旅ですが一人では歩かない、地元の人とともに歩く。これがポリシーです。理由はただ一つ、それによって旅費が高くなる分は安全を買っているという考えです。

マレーシアで入手した変わり種

 今回マレーシア訪問では、下記の変種を得ることができました。

  1. Phal. tetraspis alba?

    通常Phal. tetraspisのリップ中央弁は左写真に示すように青色の2本のラインが左右両面に走っているか、基部から中央にかけて青紫色となっています。写真右はこの青いラインが無く白色でPhal. tetraspis alba typeと思われます。

  2. Phal. corningiana red
    通常本種のセパル、ペタルは黄白色のベースに赤あるいは赤褐色の同心円および放射線状(中心に向かう)棒状斑点がに入りますが、左は携帯撮影でフォーカスが背面になってボケていますがソリッドレッド、右は同一ロット内の別株のレッドタイプ。確率的にこの2タイプの出現の可能性が高いと見て、このタイプを生んだ同一ロットから20株を今回入手しました。


  3. Phal. corningiana midlobe lip blue
    最初の花が、下写真に示すリップ中央弁が青い変種で、上記同様にこのロットから20株を入手しました。偶然1株だけが青いのか、他の株にも青がでるのか興味があります。

マレーシア訪問

 22日から25日まで今年最初のマレーシア訪問をしました。クアラルンプール周辺はこの2か月間全く雨が降らず35℃の高温が続き、高速道路沿線の雑木林の随所で木々や下草が燃えた跡と、また煙がくすぶっている場所が多く見られました。これほど雨の降らないのは10年にあるかどうかの異常気象とのことです。この結果、最初にダメージを受ける植物は、木々に着生した蔓系の植物で、多くが枯れて茶色に変色し異様な光景でした。

 今回訪問で入手した主なランは以下となります。

 胡蝶蘭

  1. Phal. amabilis Sabah (grandiflorium)
  2. Phal. amabilis irian
  3. Phal. violacea Norton
  4. Phal. bellina wild
  5. Phal. corningiana red
  6. Phal. corningiana blue lip
  7. Phal. pantherina
  8. Phal. amboinensis dark yellow
  9. Phal. speciosa
  10. Phal. cochlearis (seedling)
  11. Phal. fimbriata
  12. Phal. lobbii
  13. Phal. gibbosa
  14. Phal. gigantea Sabah, etc

Dendrobium

  1. Den. cinnabarianum
  2. Den. new, etc.

Cleisocentron

Coelogyne

  1. Coel. zurowetzii
  2. Coel. rhabdoblbon
  3. Coel. marthae
  4. Coel. kinabaluensis
  5. Coel. asperata
  6. Coel. clemensii
  7. Coel. verrucosa
  8. Coel. salwaniane
  9. Coel. papillosa
  10. Coel. hirtella
  11. Coel. longipes
  12. Coel. rumphii
  13. Coel. sp (new or variety 6 types), etc.

 デンドロビウムとセロジネは国内では入手が難しい種類を中心に集めましたが、これらの多くは会員の方からの要望によるものです。私も興味があって全体で150株程のセロジネとなりましたがバルブの巨大な株が多く、これだけで1Boxを占め、26Kgとなりました。今回は5つの農園を訪問しましたが、その内、2つが初回となりました。この2農園ではマレーシア自国内向けで海外取引は行っていないとのことです。

  セレンバン市郊外にある2回目の訪問となるラン園は一般的な景観とまるで異なりジャングルそのものの再現を試みており、ポットを置くベンチが一つもなく、ランは自然の生きた木に活着させて栽培しています。このような育て方がポリシーとのことです。そのため入手したい株があると、園主は高梯子に登り、根を鋏で切り取ります。訪問したとき偶然にも黒っぽい野生の猿が梢を飛び交っていました。この農園の一部を写真に示します。これら写真は山に入って撮影したものではなく、これで農園です。歩道は確保しており問題は無いのですが農園全体がこのような環境となっています。どこに何を栽培しているのかはラベルもなく園主以外全く分かりません。盗難防止にはむしろ良いのかも知れません。このような栽培では量販をする意思はないようです。下段の右写真はPhal. giganteaのように見えますが大きな葉のPhal. fuscataです。

 この農園からは2年前にPhal. cochlearisを2株ほど入手したことがあり、今回の目的もPhal. cochlearisを得ることでした。しかし現在この農園にも1株しかなく、それはマザープラント(交配用)なので売れないとのことでした。Phal. cochlearisのマレーシア内での流通の現状について尋ねてみたのですが、2年ほど前から野生のPhal.cochlearisの入手はできなくなり、Phal.cochlearisの生息地であるボルネオ島サラワクではすでに絶滅に近いか絶滅したのではないかとの返答でした。これは他の園主も同じ見解です。Phal.cochlearis以外で急速に入手難となっているボルネオ島産胡蝶蘭原種はPhal. doweryensisPhal. giganteaおよびPhal.maculataのようで、カリマンタンからは3年前から、Sabahからは昨年から全く入荷が途絶えたとのことです。いずれもこれら原種に共通している特徴は成長が遅く移植を嫌うことです。マレーシア国内の取引でこの状態にあることは、これまでに発見された生息地では絶滅したと考えられます。このような背景から、今回のクアラルンプールでは野生種ではなく、Sabahから送られたきた20株のPhal. cochlearisの実生を得ることになりましたが、これは山採り株を親とするシブリングクロスとの話でした。これでは野生種を親とする実生すら今後は入手難になるかもしれません。

 またSabah産Phal. giganteaを入手すべくラン農園を経営している園主の自宅を訪れました。本職のMokaraやデンファレの栽培場所とは異なり、Phal. giganteaは自分の趣味として自宅の庭で長い間栽培しており、20株程のBS株は殆どが木に、一部がヘゴ板に取り付けられていました。マレーシアの趣味家の多くは、野生種に対してこのように生息地の環境に可能な限り近づけて栽培をしているようです。樹に吊り下げたポットでの栽培を僅かに見かけますが、ベンチに置いた栽培は全く見かけません。この園主からは15本以上のPhal. gigantea Sabahを2年前に購入しています。当時は50株ほどを栽培していました。家の景観上の問題からそれまで活着させていた木を切らなくてはならなくなり、その結果、かなりの株を失ったと話していました。

 Sabah原産Phal. giganteaの栽培株はかなり高価で、大株になると現地でも30,000円を超えてしまいます。台湾からのカリマンタンやスマトラ産の実生であればその半額でしょうか。Phal. giganteaについては野生種の方が花の色合いや環境順化が圧倒的に優れており大きく育つとのことです。自家交配も容易な印象を受けます。園主は台湾からの実生苗を自然環境で栽培してみたところ理由は分からないが殆どが成長できず、現在残っている実生は1割ほどしかなく、10㎝ほどと言っていました。この園主の庭のPhal. giganteaParaphal. labukensisの写真を下に示します。上段右から2つ目は活着させていた支持木の表皮です。この木は何かと伺ったのですが、日本の木ではないかの返答で、良く見るとねむの木のような花が着いていましたが、日本では見たことがありません。表皮が松のように凹凸があり、これが水分を保持する効果があるようです。また自宅の玄関脇の庭木にPhal. bellinaが多数植えつけられており、小枝の間を抜けた太陽光が直接当たっていました。ご主人に言われてこれも景観のため、前庭の木の上部を半分ほど伐採(上段右写真)したのですが日中直射光が当たり続けることになり、特に今回の雨の無い異常気象と重なって葉全体が黄変し、殆どが枯れかかった状態で残念がっていました(下段左は支持木の葉の間を抜けた太陽光がPhal. bellinaに直射している元気な株、一方右は、上段右の写真にあるPhal. bellinaで、上部に支持木の葉がなく、光を遮るものが無くなって葉は黄変していました。

  最後に訪れた初回訪問のラン園では、門(下写真左)の周りに大きな木が立並び、その枝には2m近いDen. anosmumの特大株が垂れ下がり、多くの花をつけていました。さらに中に入ると1バルブが2mを超えるDen. anosmumのアルバdearreiDen. anosmum v. huttonii(写真右から2つ目)があちこちの大木(コーヒーの木)の枝にぶら下がっており、おそらく元は一株で、増殖した分を株分けしたものと思われます。入り口の大株を購入したいと打診したところ、これだけは売れないとのこと。親株か、入り口のシンボルと思われます。その代わり次に大きな株があるのでどうかと言われ、放し飼いの犬が10匹ほどいて吠る中を突っ切ってその場所に向かいました。当初、そのDen. anosmumとアルバおよびhuttoniiをそれぞれ4本買おうとしたのですが、考えてみればすでにセロジネだけで1Boxとなっており、胡蝶蘭やデンドロなども考えると一人で持ち帰り可能な2Boxを超えてしまうと思い留まり、止む無く半分の2本づつにしました。

 驚いたことはそれらの価格です。Den. anosmum v. huttoniiのような稀少種で、全て生きた2mを超えるほどのバルブが4-5本程ついていれば国内価格の数十分の一、インターネットサイトをもつフィリピンラン園の1/5程と思います。タダで入手したような感覚になりました。次回訪問時は門の木に垂れ下がった株(下写真左から2枚目)を含め、全てを買い占めてしまおうと思案しているとことです。 農園によって価格のつけ方は様々です。インターネットサイトを持ち客慣れしたラン園では数回訪問している私を見て、高額はつけられないと分かると、Phal. bellina red をあなたには特別で35リンギットで良い云われ3株を購入したところ、伝票には35,45,60リンギッドとそれぞれ書かれていました。違うではないかと質問したところ、花弁がより丸いものは高くなる, との説明です。少しでも油断をするとこうなります。こうしたラン園では価格の駆け引きそのものが面白いと感じるほどになることが肝要です。

 持ち帰った情報は逐次掲載します。

今年の収集

 今月末はマレーシアです。来月はフィリピンを計画しています。マレーシアクアラルンプールはこのところ晴れる日が多く、スモッグでマスクが必要とのことです。日中は35℃前後の気温のようです。マレーシアセレンバンではそれまで利用していたホテルは前回の滞在で閉口しましたので今回は同市で2番目のホテルへ変更です。料金がRoyale Bintangの60%程なので少々不安ですが、ラン園主に話したところ、プールがあるホテルだから大丈夫とのこと、プールがあるとなぜ大丈夫なのか理解に苦しいところですが果たしてどうなるか、当たってみるしかありません。

 胡蝶蘭原種に関しては、今年は大株を得ることが課題の一つで、現地ラン園や現地趣味家に打診しています。すでに、幾らかの写真が送られてきています。中にはとんでもない大株、例えば100株を超えるようなPhal. amabilisが含まれており、持ち帰ることが難しいようなものもあります。

背丈より高い胡蝶蘭原種(左)と、花数がいくつあるのか数えるのが面倒な程多輪花の株(右)。このような大株が現地では一定株数を超えると高芽がさらに高芽を生み、3-4年で出来上がるそうです。環境さえよければ右写真で全体が5-7年程とのこと。
このような大株はカタログにはなく、現地ラン園で大株が得られても小分けにしないことを常時伝えておく以外入手はまず出来ません。

 最近は現地価格が国内価格の1/3程になることもあって会員の方が希望される品種を持ち帰る量が増え、自分の購入株数に近くなりつつあります。購入方法で難しいのは、例えば同一種を5個以上購入する場合や、全体購入額が一定値を超えた場合に30-50%ディスカウントとするなどラン園によって様々であることです。よって悩ましいのは2-3本の購入ではディスカウント無し、5本ならば有りの場合、何本買うかが問題となります。必要な本数以上を購入すれば、支払う額は変わらないとしても、余剰株がでて、いずれこれらが増えてゆけば限られた温室空間での栽培が問題となります。

 これまで初回訪問は別として、マレーシアやフィリピンのいつも訪問するラン園には本数ではなく全体購入額を、それも1年間における購入実績額を暗黙の裡にディスカウントの目安にさせてもらっていました。それはいわゆる代理店向け価格に近いものです。しかし昨年末頃から最近ではそれもなく、現地で話し合いで決めてしまいますので、アメリカやヨーロッパのラン園のネット販売価格と比較すると2-3割安いと言ったレベルではなく、数分の一のかなり安価で入手しているのではと思います。筆者が主に利用している2次業者はサイトを持っていません。大筋で1次業者の価格を推測できますので、それを元に判断すると、これらラン園は1次業者の2倍ほどで筆者に販売していると思われます。こうした価格は、日本で例えば1株1000円で販売する場合、いくらで仕入れなければならないかを、日本の不動産(栽培敷地)コスト、人件費、光熱費、肥料などの経費をこと細かく説明し、凡そ1/3の300円程度の価格にすべきとの理解を2年ほど前に求めたことがあります。たまたま大学院生が修士論文として国際サプライチェーンを基盤とした洋蘭のITビジネスモデルをテーマにし、定量的な分析をしていたこともあり、これを説得材料として理解してもらいました。すなわち、1次業者は100円から150円で2次業者に販売し、2次業者は300円で国内外のラン園に販売し、一般顧客を対象のラン園はそれを1,000円でネット販売する仕組みです。

 インターネット販売している多くのラン園は現地(マレーシアやフィリピン)であっても3次業者で、ネットで価格を公開していますが、これらは一般顧客に向けた小売価格です。こうしたラン園は基本的に小売販売店であって、卸値販売を対象としていません。そのためか多くを購入するので卸価格でお願いしたいと要求しても小売価格のせいぜい70%止まりです。しかし日本のラン園が高々30%程度のディスカウントで3次業者から購入し、小売業者として現地と同等か、やや高めの価格を設けたしても採算を取ることは無理です。国内で利益を得るには逆の70%以下のディスカウント率で仕入れる必要があります。つまり国内小売価格の1/3以下で海外から購入することです。一方、それ程の低価格で販売できるラン園は、1次業者であれば兎も角、世界に向けてネット販売をしている、例えばOrchid Mallサイトにリストアップされている世界のラン園の中にはまず居ません。無論、30%ディスカウントでも構わないのでこれに3倍の値段をつけたうえで国内販売すれば、それはそれで採算は取れますが一般顧客にとっては高すぎて容易には手が出ない価格となります。しばしばネット価格でなぜ他社と比べてこのラン園はこんなに高いのだろうといったサイトがありますが、おそらくそうしたケースでしょう。でなければ嫌な言葉ですが”ボッタクリ”です。それならば国内のラン園は現地の1次業者から直接購入すれば仕入れ値は売値の1/10となって良いのではないかとも思えます。しかしそれほど簡単ではありません。その理由は、まず1次業者がどこにいるのかそれをどうして探し出すか、さらに1次業者の扱うランは規制されている山採りである可能性と、順化されていない株(品質の問題)の危険性が高いことにあります。前者の輸入は違法行為であり、後者は一般顧客、特に初心者に嫌な思いをさせる可能性が高くなります。いずれにしても1次業者は国外向けではなく、CITESや検疫が不要の自国内向け商品を扱っている業者です。現地のネット小売業者(前記した3次業者)でも直接1次業者から入手することは稀ではありません。むしろこの方が一般的とも言えます。しかしこうして得た原種の品質は悪く、入荷直後の状態を見れば容易に分かります。問題はその品質が良くなるまで自分の農園で栽培するかどうかです。筆者にしても2次業者を自分で見つけたわけではありません。最初は海外の会員の方からの紹介であり、またその業者と同行し1次・2次業者を見て歩くことから始まりました。またそうした業者に会った場合、毎回日本からの業者との接触はあるかどうかを必ず聞きますが、フィリピンではゼロ、マレーシアではこれまで2社程とのことでした。2次業者との接触の殆どは台湾ラン園です。

 上記は野生種を原資とする栽培株を前提にしており、視点をフラスコ実生株に向ければ1次業者はフラスコ苗生産者であり、2次業者は代理店あるいはフラスコ苗生産者自身であって、2次あるいは3次業者の区別は無いと思われます。もっともフラスコから育てた苗を、その生産者や2次業者が1株当たり1,000円以上で一般顧客対称の業者に販売するとすればそれは”ボッタクリ”でしょう。フラスコ苗の卸価格はBSサイズであっても、新種、稀少種などの一部の例外種を除いて、1,000円以下が当然です。日本国内の購入後のコストで考えれば、フラスコ苗であっても野生栽培株であっても変わらないからです。

 結論からすれば、よほどの付加価値がある場合、例えば変種や新種でまだ一般に販売されていないものなどは兎も角、いずれにせよネット上での小売価格は全世界で同程度でなくては生存競争に勝てない時代がやがて来ると考えられます。日本国内の大半のラン店の販売価格は一部の例外店を除けば、世界のラン店と比べて最も価格が高く、この価格でなければ採算が取れないとするとかなり危機的状況と見受けられます。一般顧客を対象とする業者は、販売価格の1/3以下で入荷できる2次業者や、趣味の範疇を超えた現地栽培者を見つけ出し、彼らとサプライチェーンを造ることが重要な対策になると思われます。見方を変えればその裁量と経験が国内ラン店のノウハウそのものにやがてなると言うことです。このためには頻繁に現地に出かける以外、手段はありません。趣味家が海外に出かけ、ラン店は国内に留まっていたのでは本末転倒です。

 難しい話になりましたが話を戻し、海外から持ち帰りで難しいのはその量です。1.2m x 45㎝ x 45㎝の段ボールサイズを一人で運ぶには、せいぜい2個が航空貨物としては限度で、これ以上では持ち運ぶ際、カートの先が段ボール箱で塞がれて見えず、空港内フロアーを移動するのは危険で他人にも迷惑です。フィリピンではポータが駐車場に居るので頼めますが、マレーシアでも利用できると思うのですが、これまでは見当たりません。例え現地では手伝ってもらえても成田に着いてからがまた問題ですので、旅行ケースはバックパック(リュック)にして両手が使えても、このサイズの段ボールは2箱が限度となります。この場合、株サイズによりますが梱包できるのは300株と言ったところでしょうか。大株で大きなへご板や樹に取りついている株はかなり重いのですが、10-20Kg程度の重量オーバーならばJAL会員のため追加料金は要求されません。これ以上の荷となる場合は、国際宅急便EMSあるいは輸入ブローカーを利用することになります。輸入ブローカですとエコノミー航空券程度の料金がかかります。またフィリピンは問題ないのですが、マレーシアからの生花のEMSは現在受け付けてくれませんのでブローカ以外困難です。搬送が往復航空券相当の料金であるのであれば現地に出かけ見て買うという点で持ち帰りが一番です。

 胡蝶蘭原種の中で、これまでわずかながらも可能であったものの、現在全く入手ができない原種がPhal. cochlearisです。すでに現地に打診して2年になるのですが未だ入手できません。このため今年、手持ちの株で自家交配を行う優先順位の高い種の一つです。フラスコ苗がタイや台湾にあると思うのですが、4年間育て開花した結果が、いずれも片親が異なる実生であった経験から特にこれらの国からの稀少種のフラスコ苗は全く信用していません。またフラスコ苗からですと、取り出してから順調に育てても本種は開花までに4-5年以上かかります。よって可能であれば現地で栽培されたBS株を得る方が得策です。

 一方で、デンドロビウムやセロジネは変種や新種のレポートが頻繁に来ており、現地の園主や趣味家もよく分かっていないのでは思われるほどスペルミスと思われる不可解な名前がリストに混在しています。これらの原種を集めている趣味家の人にとってはワクワクして楽しいことには違いないでしょうが、ネットで調べても見当たらず困っています。来年の東京ドームに、前記した余剰株を含めこれらを、変種・新種コーナーを設けて展示販売できたら面白いと考えています。


2月

東京ドーム世界らん展2

東京ドーム世界らん展、海外出展(店)者側の問題と総括

 展示会は内覧会を含めると10日間の長丁場となります。この間、土日の週末は趣味家が、また月 ∼ 金曜は鑑賞を目的とする中高年者が主な入場者となります。このため販売ブースで購入するランの趣向は曜日で大きく異なり、趣味家は、原種を中心に国内マーケットでは入手が難しい品種を求める一方、一般入場者は品種を問わず気に入った価格的にも手頃な花付株を購入していきます。その結果、原種を主に扱う海外出展者のブースの月 ∼ 金曜は、土日の混雑さに比べると閑散としており、10日間の日程は非常に長い期間に感じられます。趣味家にしても曜日に関わらずドームに出かけたいのではと思いますが、販売終了時間が5時半では、仕事が終わってからと言う訳にはいきません。何とか週末以外は8時頃まで時間延長ができないものかと思いました。

 このような入場者層の違いに対して国内販売業者は、一般客が関心をもつミニカトレア、ミニ胡蝶蘭、デンファレなどを用意して薄利多売で利益を得ることができるかも知れません。しかし海外からの出展者にとっては搬送、搬入、レイアウト等を考えれば原種から交配種までの幅広い品揃えは困難です。このため展示期間の半分は費用対効果(コストパフォーマンス)がかなり悪くなっているのが現状です。こうした状況によるものなのか、以前は原種がそれなりの数を占めていた台湾出展者も現在では一般入場者を対象とする交配種がブースの大半を占め、原種はほとんど見られなくなりました。

 海外出展(店)者の一つの活路は、国内の業者と提携し、それぞれが分担する領域を住み分けて、趣味家と見学者共に興味を持つ商品を提供することにあると思います。現状では個人レベルのブローカーやディーラーがサポートしている程度です。こうした状況が続けば海外原種販売業者と共に、趣味家もまた東京ドームを離れる日が来るのではないかと危惧します。しかし明るい兆しも一方であります。趣味家の層が低年齢化していることです。原種を求める多くの趣味家に20-30歳代が増え、この傾向はますます強まっています。筆者がランを始めた10年以上前は若者はあまりいませんでした。

 海外出展者の他の活路は、プレオーダ(展示会前にネットを通しての受注を行い、納品を展示会で行う)を積極的に進めることです。プレオーダはネットでのカタログ価格で行われるため、展示会価格と比べかなり安価となるものの、全体売り上げの30%程度は会場渡しのプレオーダとし、これだけでも出店経費に対してある程度の採算バランスを取ることが必要と思われます。これによって若干余裕も生まれ、ドームで展示するランは、国内のマーケットでの入手難な種、稀少種、変種あるいは新種などを中心に提供します。何が国内で人気が高いのか、高くないのかのマーケッティングリサーチを行うことは必須で、趣味家や国内業者からのアドバイスも一つの方法です。

 例えば今回、筆者がサポートしたフィリピンの出展者は胡蝶蘭を始め、多種多様なランを展示しました。このなかで売れ残った筆頭はデンドロチラムで、次にバルボフィラムです。デンドロチラムはアメリカやヨーロッパでは人気が高いのになぜ日本では関心が無いのかと嘆いていました。たまたま筆者の兄がドームを訪れ、デンドロチラムを見てあの雑草のようなものも売っているのかと驚いていました。現在温室ではデンドロチラムのglumaceumが開花していますが、ビスケットやアイスクリームのような甘い香りがあり、この香りを嗅ぐことができればかなりの人は購入するかもしれません。葉だけを見る限りではまさしく雑草です。一方、初日にこれはあまり人気が無いのではとセロジネを段ボールに閉まったままで展示しませんでした。3日目ごろからセロジネを展示し通路側に置いたところ最終日までに完売です。

 原種全体に言えることですが、例えばバルボフィラムでは産地を明記する意識が販売者には必要です。原種は交配種と異なり、こうした情報が大きな付加価値を持ち、趣味家に同じ種であっても複数購入しようとする気持ちを起させます。Phal. lueddemannianaでもLuzon島とMindanao島と明記して展示したところ後者が1,000円ほど高価でしたが最初に購入されたのは後者でした。

 さらに主催者側も海外原種専門業者に対して、現在のようにラン以外の販売を禁止するのではなく、海外の殆どの国際蘭展で認めているように、30%程度は観葉植物やホヤ(桜ラン)などを販売に限って認めることです。海外にはラン以外にも驚くほど美しい園芸種、多様なシダ類、あるいは奇怪な(例えば蟻シダや食虫)植物がランと共に生息しています。これらをコレクションしている趣味家も意外と多いようです。このことが全体の売り上げや来場者数の増加にもつながっていきます。こうした販売モデルが主催者側にも海外の出展者側にも東京ドームを盛況にするためには必要なのではないかと今回の状況を見て思いました。

業者は売れ残ったランをどう処分するか?

 今年の蘭展では出展者をサポートしたことから出展者の立場で参加することができました。過去10年余りの間、採算が取れず止む無く撤退する海外原種ラン園が多い中、初回のフィリピンのラン園は何とか採算が取れたようでようで来年も出展したいとのこと、会員の方とボランティアで協力した甲斐がありました。確かに1ブース当たり30万円(展示作品の提出が無い場合は60万円)、航空運賃、ブローカによる搬送(ブースコストと同じ程度)、滞在費(設置準備段階からの12日間、2名分のビジネスホテル等でのホテル代)など含めると、特に原種専門業者は国内出展者には無い、かなりの経費が発生し、さらに国内出展者と異なり、特定のランが売れきれても補填する程の数を持ち込めない等から展示品の価格をインターネット価格の2-3倍にしなければ採算は難しいことが分かります。この経験でいくつか疑問に思っていたことが分かるようになりました。その一つは、海外出展者の売れ残ったランはどうするのかです。

 基本的に売れ残りを最小化するための手立ては2つあって、一つは最終日の午後から、正確には3時頃から、ディカウントして売り切ること、他は予め決まっている国内の同業者に引き取ってもらうことです。来客にはディスカント50%(半額)が一般的のようです。一部の趣味家は最終日のこのディスカウントをよく知っており、午後になると何回も目をつけているブースの値札の変化を見て回り、下げ値の頃合いをみて購入していきます。これもまた楽しい買い方のようです。

 半額セールを行っても売れ残りは出ます。これらは前記した国内業者が引き取ること、他は止む無く持ち帰ることです。おそらく残り物は1/3以下のかなり安価で引き取っているものと思われます。一方、自国への持ち帰りは例えば1株が数万円以上の高額のものに限られるようです。この場合再び国内でCITESや植物検疫の申請が必要かと思いましたが、展示会出展商品は持ち込み時のCITESや検疫書類(コピー)があれば、新たな申請は不要とのことです。

 いささか疑問に感じたのは、業者が、最終日の販売を待たずに、あたかも売れ残りの心配の弱みにつけこんだように買い叩き、ごっそりとまとめて持ち去ることです。この結果、ディスカウントを期待して来場した一般購入者にとっては、目的の原種がすでに売り切れて無い状況となります。業者がまとめて買う以上、その原種は売れ筋の品種と思われます。わざわざドームまで出かけて来た一般顧客を無視した、展示販売期間中のB to B手法は不愉快です。業者間取引はすべてプレオーダか展示販売が終了してからすべきです。

 今回フィリピンのラン業者を手伝うことで、売れ残りは筆者が一旦引き取り、それを本サイトのメンバー等にその海外ラン園のネットあるいは卸価格で販売し、その売上金を適当な時期(おそらく半年か1年後)に纏めて筆者から支払うことにしました。筆者温室内で枯れた株が出た場合はレポートすることになっています。売れ残りが多ければこのような対応はできませんが、100-200株程であれば筆者温室での栽培管理が可能であるためです。この販売でも残ったものはそのまま栽培を続け、来期のラン展で再販します。業者にはそれまでに要した栽培経費分は頂きますが、趣味家にとってはこれが最も良いのではと思います。その利点の一つは、本サイトでも述べている順化済みのランが入手できることと、蘭展で開花していない株であっても開花した花を確認して購入できる点です。

 また蘭園との話で、来年は胡蝶蘭原種に関しては展示期間のかなり前から一部の原種を、浜松の筆者温室に出荷し準備すること、また今回の来訪者から多くの問い合わせがあったフィリピン以外の原種(例えばPhal. violacea、bellina、 giganteaなど)を、出展者から依頼を受けた形でマレーシアやインドネシア蘭園等から予め購入ストックし、これを販売すること、これらによって高い品質の40種程度の胡蝶蘭原種とその変種の一部、さらに胡蝶蘭以外の話題の原種が集まるものと思われます。これだけでも1ブースが必要となり、原種販売の海外出展が少なくなってしまった中で、来年に向けて複数ブースを用いた展示販売の計画を進めることを話し合いました。これまで海外ラン園に2-3ヶ月おきに出かけ、また多くの趣味家とも交流してきた人脈を活用し、彼らの協力も頂き、何とかラン趣味家から期待されるような品揃えをしたいと思います。

衝動買いは思わぬ落とし穴?

 今回サポートしているフィリピンのブースの隣はエクアドルからの出展で、多くの趣味家風の方々が次々と購入されていました。業者と思われるプレオーダ(展示会前の注文)品も多く見られました。これほどの人気は一体どこにあるのかと時間の合間に販売品を眺めていたところ、確か昨年のNHKの放映で見た、驚くほど猿面そっくりのランがあり、南米産であることは知っていましたが、そこで初めてエクアドルの生息種であることを知りました。ラップされた植物に貼られた写真を見ると吹き出しそうなほど面白い顔なのでつい3株を、翌日は別種ですが原種をそれなりの数、購入してしまいました。

 その後、家に戻りこのランを調べたところ、2,000mを超える雲霧林に生息するドラキュラ属で、典型的なクール系のランであることを知り、栽培温度が何と8℃-20℃あるいは14℃-25℃とされ、種によっては20℃あるいは25℃を超えてはならないとあります。最低温度がいっそのこと1℃ならば浜松ならば夏季のみ冷房し、他は室外で栽培も可能ですが8℃とか14℃とは中途半端な値で、では日本の夏を一体どうして乗り越えたらよいのかと、昨年の猛暑が思い出され唖然としてしまいました。無論、中温から高温系のランもエクアドルブースで販売されていましたが、そこで言われる中温とは14-25℃で、高温は14-38℃とのこと、エクアドルの中温は胡蝶蘭原種の世界からすれば超低温で、この定義からして食い違います。8割程が中温、すなわち14-25℃で、しかも高山雲霧林帯の生息種であることは高湿度で低温という通常と相反する環境のランであり、にも拘らずこんなに大勢の方々が本当にその自然環境に近い下で栽培しているのだろうかと、これはとんでもない買い物をしてしまったと後悔せざるを得なくなりました。

 25℃を超えることができないと言うことは、それを超えると特に新芽は軟腐病のような状態になることを意味していると思われます。胡蝶蘭原種の中にはaphyllae亜属Phal. wilsoniiPhal. braceanaあるいは海抜1,500m程に生息する原種も数種類あり、夏季は比較的低温で管理するものの、それでも盛夏は30℃を超えないように出来るだけ涼しい場所に置く対策程度であって、25℃を超えてはならないとなると、胡蝶蘭や高温系のバンダの同居する温室の中に、さらに専用の冷房室を用意しなければならないことになりかねません。

 日本のレブンやカマナシアツモリソウも夏季25℃を超えることは許されませんが、一先ず25℃を超えないように、アツモリソウの栽培経験(2009年5月歳月記)から、気化熱で周囲温度から10℃は降下する特殊な山野草鉢を用いて植え込みを行い、3月中ごろまでに対策を考えようと決めました。ところが問題はさらに複雑になりました。このエクアドルブースは女性のMagaliさんが、我々の方と言えば4人で行っている作業を、誰の力も借りることなく全て一人で荷物の搬入から販売まで行っており、内覧会前日からその働きぶりを見て感心していました。販売開始後、時々購入者が質問などをすると日本語が分からなく困った様子で、隣同士でもあったことから、そうした場合は遠慮しないで呼ぶようにと伝え、通訳をしてあげていました。そんな折、主催者事務局から彼女の「南米のラン」という展示作品が入賞した通知もありました。

 複雑な問題とは最終日が終わり、後片付けをしていたところ、お世話になったと言って、その入賞展示作品に使用していたランを差し上げたいと言われたことです。突然で驚きました。かなりの数で市場価格にすれば相当高額であろうと思いますが、それまでエクアドルのランと言えばカトレア程度で高山系のランは門外漢で分からず、しかしすでに販売時間も過ぎ、片付け荷物の搬出時間が近づいていたため、断るのも失礼であり、ありがとうと頂きました。その際彼女はランを3つの袋に分けており、手渡してもらった際に、これはクールタイプ、これもクールタイプと全てがクールタイプとの説明で、初日に買ってしまったドラキュラのこともあって、嬉しい気持ちと大変なことになったという複雑な気持ちになりました。

 こうなってしまったら、来年東京ドームで再び顔を合わせた時、あのランはどうなりましたと聞かれることは間違いなさそうで、このままでは吸血鬼ドラキュラが人の血を吸うのではなく、ランに噛みついて熱で溶かしてしまう悪夢を見るに違いないと覚悟を決め、4棟ある温室の1棟の半分を高山性胡蝶蘭やデンドロのスペースとしていたところを1棟分に拡張して夏季は25℃管理の温室にしようと決めました。どう考えても昨年の猛暑のような気温が再来すると最高温度を20℃にすることは無理です。ビールを冷やす冷蔵ショーケースで2-3株を栽培するのは観賞という点で性に合いませんし、それ以前にすでに入りきれません。とうとうクール系も始めるのかと、まさに冷やかされましたが止むを得ません。

 そう決めれば、この低温を利用して開花時期をずらす管理も可能となり利用範囲は広がると思えてきました。しかし当面の問題として、フィリピンの売れ残ったランと、これら低温性ランの植え換えや植え込み、さらに低温スペースの拡張のため、若干の工事を伴う数百株のランの移動に相当の労働力が必要で、デンドロの植え替えがまだ4割ほど残る中、想定外の仕事が増えてしまい、どうも恐れていたランを飼うのではなく、ランに飼われている気分になってきました。

東京ドーム世界らん展

 15日から東京ドームで世界らん展日本大賞2014が始まりました。初日2日前の13日、会場設置段階から参加することになり、展示場の舞台裏を始めて拝見することができました。また販売は一般開催日前日(内覧会)から始まっており、内覧会では特に原種愛好家が多い印象です。今年の初日は大雪で殆どの交通機関は止まってしまい、例年の20%程度の入場者数であったようです。日曜日は例年並みか80%と言ったところでしょうか。

 一方、海外からの原種を専門に扱う多くの販売ブースは国内出展者と異なりブースを内装する金具類の持ち込みが困難で、花が開花していないと全体が地味で味気ないというか、殺風景な感が否めません。国内初の出展であるPurificacion Orchidsもそうです。そこで事務局で確認したところ、追加花の展示ができるとのことで、筆者がこれまでPurificacion Orchidsから購入した胡蝶蘭原種を中心に急遽、浜松から17日午後に運び入れることになりました。17日の東名高速は残雪の影響で渋滞が激しく13時に浜松を出て、ドームに着いたのは19:15分でした。それからの取付を本サイトの会員と共に始め、何とかレイアウトを20時までに終えました。これらの中には、下写真の250輪のPhal. schillerianaのCluster株の右の株(130輪)も展示しています。

 追加で展示した原種は現在開花中の株だけに絞っており、Phal. lueddemanniana Mindanao, Phal. sanderiana alba, Phal. pallens。ボルネオ島産ですが、Paraphal. labukensisやserpentilinguaの開花株もあります。殆どの方はこれらの花の実物は見ていないのでは思います。特にlabukensisはダークブラウンに白い縁取りがある花で世界でも極めて珍しいと思います。また新しく発見された生息地のPhal. javanica、国内初入荷と思われるデンドロビウム3種、現在は規制で入手出来なくなったPhal. amabilis Palawanの開花株も展示しています。これらのランは、出展者がPurificacion Orchidsですので、ディスプレイだけの場合は筆者からの貸出という形になりますが、展示品の購入を希望される方がいた場合は、一旦、Purificacion Orchidsが筆者から購入し、これを購入希望者に販売することになります。いずれにしても持ち込むランの多くは日本市場を始め海外でも入手は極めて困難と思いますので、興味のある方はご来場下さい。18日から最終日までの展示を予定しています。


Schilleriana Cluster開花

 昨年9月の歳月記「クラスター状の大株について」と11月歳月記の順化3 で写真を掲載したPhal. schilleriana Clusterが2月入り開花したため2株を並べてやや大きめの写真で取りあげてみました。これから咲く未開花の蕾を入れると250輪ほどとなります。これらは一つのClusterを写真のように2つの小クラスターに分けたもので元株は同じであるため、花は同じ色合になっています。今年はこれらを合わせた以上の大株を入手しようと考えています。市場で大株を入手することは困難ですが、海外、特に生息地の趣味家の中には大株所有者がかなりいて、Phal. amabilis、Phal. aphrodite、Phal. lueddemanniana、Phal. schilleriana、Phal. sanderianaなどの大株を寒冷紗だけを張った庭などでしばしば見ることができます。


昨年4月以降の自家交配による種と培養予定

 浜松に移転してから稀少種や絶滅危惧の高い種の自家交配を本格的に始めました。現在および今年計画の品種は以下のようになります。Phalaenopsis (Phal. doweryensisを除く)、 Vanda(フィリピン生息種)およびPaphiopedilum(多輪花系)は、これまで6年間の試験的培養で種別的には全て自家交配によるフラスコ苗の育成に成功しており、培地成分や温度・輝度管理はその経験に基づき実施して行くことになります。

  1. Phal. amabilis Palawan 交配済み
  2. Phal. amabilis Malacca 交配済み
  3. Phal. amboinensis semi-alba 交配済み
  4. Phal. amboinensis (大輪) 交配済み
  5. Phal. appendiculata alba 交配済み
  6. Phal. bellina white base color 交配済み
  7. Phal. bellina alba (wild plant) フラスコ育種段階
  8. Phal. celebensis 交配済み
  9. Phal. cochlearis 初夏交配予定
  10. Phal. doweryensis 初夏交配予定
  11. Phal. equestris Mindanao フラスコ育種段階
  12. Phal. x intermedia Appari Linaw 交配済み
  13. Phal. gigantea alba フラスコ育種段階
  14. Phal. gigantea sabah フラスコ育種段階
  15. Phal. hieroglyphica alba 夏季交配予定
  16. Phal. javanica alba 交配済み
  17. Phal. lindenii alba 交配済み
  18. Phal. lueddemanniana solid red 交配済み
  19. Phal. maculata 夏季交配予定
  20. Phal. mariae (wild plant) 交配済み
  21. Phal. micholitzii 交配済み
  22. Phal. modesta alba 春季交配予定
  23. Phal. reichenbachiana 交配済み
  24. Phal. philippinensis 春季交配予定
  25. Phal. pantherina black 夏季交配予定
  26. Phal. pantherina aurea 夏季交配予定
  27. Phal. sanderiana dark pink 交配済み
  28. Phal. sanderiana alba 交配済み
  29. Phal. schilleriana dark pink (選別種交配済み)
  30. Phal. speciosa dark red 交配済み
  31. Phal. speciosa full red 夏季交配予定
  32. Phal. sepciosa purple 交配済み
  33. Phal. violacea mentawai coerulea 交配済み
  34. Phal. violacea dark red 交配済み
  35. Phal. wilsonii 春季交配予定
  36. Vanda javierae 春季交配予定
  37. Vanda lamellata calayana 交配済み
  38. Vanda luzonica 交配済み
  39. Vanda sanderiana pink (prize winner) フラスコ育種段階
  40. Vanda sanderiana alba (prize winner) 夏季交配予定
  41. Vanda sanderiana labello viridis フラスコ育種段階
  42. Paph. gigantifolium 春季交配予定
  43. Paph. micranthum v. eburneum 育苗段階
  44. Paph. rothchildianum (>30cm leaf span) 初夏交配予定
  45. Paph sanderianum (>1m long petal) 夏季交配予定
  46. Cleisocentron merrillianum 交配済み
その他Dendrobium, Cirrhopetalumについては開花に応じて選別し自家交配を行う予定です。

Phal. lueddemanniana セルフ交配

 1月中旬から凡そ1ヵ月間はフィリピンの固有種であるPhal. lueddemannianaPhal. pallensの開花最盛期です。中でもPhal. lueddemannianaはPalawan諸島南西部、Luzon島全域、Biliran島、Leyte島およびMindanao島と、フィリピン全域に渡り広く分布しており、それぞれの地域での花柄と色彩の違いを微妙に感じます。下写真に示すように、Luzon島生息種では花被片の白色のベースにマゼンダ(赤紫や紅紫色)の棒状斑点が比較的細く並行に走る一方、Mindanao島生息種には棒状斑点がやや太く重なり合って、特にlateral sepalではベース色をほぼ隠す程のソリッドなパターンがしばしば見られます。

Luzon島生息原種
Mindanao島生息原種

 下写真は花被片全体がほぼソリッドレッドとなるフォームをもつ株で、東京ドーム蘭展において台湾業者から2005年と2010年にそれぞれ10万円と2万4千円で購入したものです。公示価格はそれぞれ15万円と3万円でした。この価格差は5年間の市場価値の変化もあると思いますが、写真左のPhal. lueddemannianaは色合、大きさと共に形状が良く整っており、過去6年間フィリピンのラン園を訪れる度にPhal. lueddemannianaを数百株見ていますが、形、色共にこれ以上の株にはこれまで一度も出会ったことがありません。この意味において、この株の価値は今日においても余り変わらないのではないかと思います。しかし台湾から入手する色合やサイズの大きい稀なフォームは、「原種」とされながらも実際は交雑種であったり、あるいは同種間での選別交配でその実生の多くが必ずしも親の形態を継承しないため、これを検証するためにセルフ交配を6年ほど前から行ってきました。一時期植え替えで株が作落ちしたことがあり、胚のあるタネを得たのは3年前でした。

ソリッドレッドフォーム

 セルフ交配による実生においては、もし元親がハイブリッドあるいは改良種であるならば遺伝的に隠れたフォームが出現する筈ですし、異なる種や属間のF1であればタネ自体が結実しません。胚のあるタネを無菌培養して2年目で実生が開花しました。それが下写真となります。

 現在3株が開花していますが、全て同じフォームで親と同じ形態の実生が出現しました。特にペタルの形状が独特で親の特徴を良く引き継いでいます。この結果から、この親株は改良交配の中から選別した不安定なフォームではなく、固定率の高いフォームを遺伝特性としてもつ可能性が高まりました。言い換えれば高額を払って入手した価値はあったことになります。検証のためであったことからフラスコは1個のみの培養に留めたのが今思えば惜しいことをしました。このフラスコ苗は一部は会員に分譲したこともあり、期待した花柄で安心しました。フォームを保存する目的で2回目の自家交配を行ったところです。


再生

 昨年12月の歳月記に害虫被害を取り上げました。被害株Phal. bellinaは主茎の先端がゾウムシと思われる害虫で傷つき、頂芽が落ちて主茎の芯が黒く変色していたため葉を全て取り除いた状態で掲載しました。それが下写真左となります。この株から写真右のように新しい脇芽が出現しました。

 細菌やカビによる病気とは異なり害虫の被害は、早期駆除ができれば頂芽の根元だけが齧られ、茎の芯深くまで失われていることが少ないため病害対策として細菌とカビに有効な殺菌剤を塗布してやや薄暗い場所に置き、そのまま栽培を続ければ、脇芽による再生の可能性があることも指摘しました。やはり根はしっかりしていたためか写真右が示すように新芽が現れました。およそ2か月半での再生です。新しい芽はまだ小さいですが、実生からの栽培と異なり、このような状態からの成長はかなり早く1年後には花をつけるサイズになると思います。


Phal. bellina 11月27日撮影

Phal. bellina 2月6日撮影


Phal. schilleriana purpurea 続き

 台湾から7年前に東京ドームにて入手した下写真の株が今年も元気よく開花しています。昨年の10月の歳月記で本種を取り上げました。本種はフィリピンの固有種です。その中で、どうもこの株は原種ではなく交雑種F1 の可能性が高いことを指摘しました。


2014年度開花

 一方、昨年10月にマレーシアから20本程入手した同名種の開花が2月に入ると同時に始まりました。その一部の花を見る限り想定していたpurpureaとは異なり一般的なフォームであり、またしてもミスラベル品を入手してしまったかと思いましたが、今回はミスラベルという過失ではなく、どうも偽装商品の疑いに至りました。現在一次出荷元(生産者)を調べています。手が込んでいるのは、ラベルの裏にPマークを入れ、わざわざ一般フォームとpurpureaとされる株とを分けていること、また多くが高芽で十分大きくなった株からの分け株であり、このため一次業者はそれまでに1度は花を見ている筈で、こうなるとラベルミスではなく意図的な商品偽装を行ったとしか思えません。入手した国がPhal. schillerianaの生息国ではないことから、マレーシア園主には訪問前に名前に間違いがないかどうかの確認を依頼し、一次出荷元では間違いないとのメールをもらっていることで購入を決めました。

 今回のことで園主にはこれまでに送ったミスラベル株のリストと照合し、これらが同一出荷元に集中しているようであれば、園主も、また会員に一部を分譲している筆者も、信用を失うことになり、取引を中止するか少なくとも筆者に対しては開花を確認していない株については今後、その出荷元からの株であるか否かを告げることを伝えました。もちろんその出荷元であった場合は購入しません。ミスラベルであるなしに関わらずラン自身には何の罪もないので、区別することなく栽培をしていますが、不幸中の幸いか下写真に示すように開花した花はペールピンクであるものの、上写真のダイナミックで自己主張的な雰囲気ではなく、形と色のバランスが上品で優しい感じであり、これはこれで名花ではないかと気に入っています。

 通常の顧客であれば、はて、この意図的な偽名は一次業者である生産者によるものなのか、あるいはそれを卸あるいは小売販売するマレーシア園主が行ったのかの疑惑を持つのは当然です。推理ドラマのようですが、筆者が一次業者であると断定している背景は、ラベルに書かれた品名の文字筆跡がマレーシア園主のものでないこと、これは現地で打ち合わせの際の輸出入ドキュメントの下書きから容易に判断できます。またこのラン園主は農園内では盗難防止のため、株に品名の書かれたラベルを決して付けない習慣をもっていること、筆者は年に3-4回訪問する顧客であり、ミスラベル品は再訪の際に補償(株の無い場合は相当品で対応)することを取り決めており、逃げ隠れはできないことからミスラベルは結果として園主の損失となる等のそれぞれの理由からです。

 海外購入からだけでなく国内であっても時としてミスラベルは、特に開花前の原種であれば起こりえることですが、それが不可避なミスなのか高額で販売するための意図的な商品偽装なのかが問題です。過去10年ほどの間でタイや台湾から起こりえない(確信的な)であろうミスラベル品をしばしば入手し、これらの国からは6年程前から開花株以外は購入しないことを決めてきましたが、やはりどこにでもこのような業者がいるものだと再認識しています。会員の方からもしばしば園芸店や展示会で購入したランから変わった花が咲いたと写真を添付して問い合わせを頂くことがありますが、おらくそれらもその一つです。

 かって単なる過失ではなく、世界中の顧客に詐欺を行ったラン園はフィリピンのLady-Let Orchidsです。このラン園は2009年に無くなっています。その当時はオーキッドフォーラムの会員掲示板にアメリカ、ヨーロッパ、シンガポール、香港などからの被害の詳細が数多く寄せられ、その怒りは大変でした。中には自国にあるフィリピン大使館に訴えるとの意見もありました。最大の被害者はアメリカの購入者の一人で、日本円で100万円程の被害のようでした。この方は園主をペテン師(fraud)から最後にはthief(ドロボウ)と呼んでいました。詐欺の始まりは、葉では区別できない安い別品種を送ること、次の段階ではalbaやcoeruleaなどの希少変種が入荷したが興味があるかというものです。通常の10倍以上の価格で販売可能なそれらが本物かどうかは開花してみなくては分かりません。根を短く切ったベアールートで送られて来る訳ですから、順化期間を含めると1年以上の時間が稼げるわけです。中にはその途中で枯れれば本物かどうかは闇の中です。購入後に開花して普通種であった場合、園主の決まり文句はno problem、don't worryです。この時点で再び偽装品を送ればさらに1年以上の時間が稼げます。例えば筆者の購入したPhal. lindeniiの4倍体は、2年後に開花しましたが花は普通のサイズでした。Phal. bastianii albaは開花までに4年を要しました。結果、albaではなく普通の花でした。その時はもうこのラン園は無くなっていました。詐欺商品としてランほど都合の良いものはありません。客は皆海外であり、怒鳴り込まれることもありません。lueddemanniana, pulchra, bastianii, vanda sanderiana, micholitzii, equestrisなどなど、筆者の被害はおそらく総額で30万円程と思います。実際と異なることを電話やメールで知らせると、”don't worry今度は間違いのないものを送る”という繰り返しで、さらに時間を稼ごうとします。発送が遅れていることにクレームを出すと、台風で温室が壊れて工事中であるとか、家族が病気で入院しており少し待ってくれとか、家族はいつも病人状態です。業を煮やして返金を要求してもお金には全く応じません。当時は腹が立ちましたが、今思えば悲愴とも滑稽とも感じます。

 海外のクレームを見ると最終段階では注文を取って振込だけをさせ、後は発送すらしないという状況のようでした。知的なdon't worry手口を使う余裕もなくなったものと思えます。2年程取引をしましたが、取引の最後の品種はPhal. pulchra albaを12万円でどうかと言うものです。後で分かったのですが世界中の胡蝶蘭原種趣味家に、albaタイプを所有していないにも拘らず、このalbaの購入を呼びかけていたようです。筆者は最初の取引から1年後にはおかしいと感じ始めていたので会津の友人の知り合いであるフィリピン人から半額の6万円を現地で直接渡してもらい、株を受け取ってから残りの半額を支払うことで進めました。この知人を通しての支払いで、当の知人から、フィリピンでは現金の前渡はドロボウにお金を渡すようなものだと言われ、やめた方が良いという連絡をもらったときはとうとう笑ってしまいました。やがて世界中の注文者への弁解も行き詰ったのか、ある日突然サイトが無くなりメール、電話も不通となりました。pulchra albaはその数年後別の業者から20万円で購入しましたが、当然のようにこのラン園から得ることは出来ず6万円は失いました。なぜそれほどまでの詐欺を行うこのラン園に世界中の多くの趣味家がランを買い求めたのかですが、全ての品種で、その当時のフィリピンの他のラン園価格と比較して3割ほど安いことにありました。つまり高額の取引であればあるほど顧客にはメリットがある訳です。アメリカやヨーロッパの園芸店の価格からすれば1/3-1/4以下というものです。ここが大きな落とし穴であったわけです。

 2009年からフィリピンに直接出かけて購入するようになったのはこのLady-Letの偽装商品がキッカケです。おそらく今でも世界中の被害者が、かっての経営者が再度ネットで販売を始めるようであればタダではおかないぞと待ち構えていると思います。皮肉なことに、胡蝶蘭ではなく別属種ですが、フィリピン固有種の新種発見者がそのランにこの園主の名前をつけたことがあります。その昔は自分の名前をランに付けてもらえるほど、人から感謝されることをしていたのでしょう。

 現在は稀少種を集めるためフィリピンやマレーシアのラン園には、筆者の方からDepositする用意があるので必要であれば言ってもらいたいと伝えています。しかし海外に出かけFace to Faceで話をするようになったここ数年間は海外の趣味家を含め、これまで誰もそれを要求しません。皆一様に支払いは後で良いと言います。その意味で、現金の前渡はドロボウにお金を渡すようなものとのアドバイスは1面は真実であっても、当然すべてが真実ではありません。

 さてPhal. schilleriana purpureaに戻りますが、上記のようなことがありpurpureaについて調べました。というのは、E.A ChristensonのPhalaenopsis A MonographやJ. CootesのPhilippine Native Orchid Speciesそれぞれの著書にはいずれもPhal. schilleriana purpureaが分類上の変種あるいはフォームとして記載されていないからです。Christenson著作のPhal. schillerianaのページの文章内でpurpureaの記載が数行ありその中で、ダークカラーの大きな花のクローンが園芸品種の中にあるが、変種として分類する明確な根拠が見当たらないとしており、またCootesは花被片が黄色のnobilis、およびDorsal sepalとPetalに細かな斑点のあるpunctatissimaをフォームとしてとりあげているもののpurpureaについての記載がありません。

 一方、筆者が所有する上写真のpurpureaでは過去7年間、毎年自家交配を試みているのですが一度も結実したことがなく、数週間でさく果は落ちてしまいます。花粉魂へのホルモン投与を行っても成功しません。一般のPhal. schilleriana原種は容易にさく果を着けます。また年間千本以上扱うフィリピンラン農園に聞いても、原種として上写真のような株をこれまでに見たことは無いとのことです。これら全体を考えると、所有するpurpureaは交雑種F1と思われ、原種からの変種や選別種ではないという結論に至っています。結局は台湾において異属間交配によって得た株から上記写真のような大きなダーク色の花を持つ株を選別し、これを花茎からのクローン増殖したものをPhal. schilleriana v. purpureaという品名を付け原種として2005年頃を中心に市場に出したものと考えられます。慶弔用胡蝶蘭のなかにダークピンク一色の大きなサイズの品種がありますが、同じクローン株と思います。

 Phal. schillerianaの原種としての色は非常に薄いピンク色から紫を帯びた色まで様々あり、濃色のレベルにもよるものの濃い色がまれに見られます。その中のダークピンクを原種purpureaと呼ぶことになろうかと思います。これを培養した場合、その色を実生に継承できるかどうか、現在開花期を迎え150株ほど所有する中から選別し、それらの交配を現在検討しています。


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温室公開

 浜松の温室を会員やご近所の方々へ26日から公開することになりました。それまで僅かながらは温室内の植替えやレイアウト中にも訪問頂いてましたが、未整理部分が3割ほど残る中での本格的な受け入れは今週からとなります。初日の日曜にはたまたまマレーシアの大学の先生1名と院生4名の訪問を受けました。来られた先生はラン栽培が趣味とのことで、よい機会でもあり、趣味仲間同士として今後メールを通し情報交換をすることになりました。マレーシア自国のランを自国で栽培する限りCITES規定はないため、外国人にとっては入手困難な、多くの希少種が栽培できる点でうらやましい限りです。マレーシアはペナン島、クアラルンプール、ボルネオ島などで頻繁に展示会が開かれており、こちらが探している原種が販売されているようであれば連絡をもらい、さらにそれが輸出が可能かどうかをいつも利用しているラン園オーナーに確認してもらった後、問題がないようであれば入手の検討をする手法を考えています。こうしたコミュニケーションが一瞬にして出来てしまう時代になってきたのかと感じ入っています。

 マレーシアのような有数のラン生息国で、自国のランを栽培している趣味家は、販売を目的とするラン農園とは異なり、コレクターとしてのIdentityとして希少種を多数所有していると思われ、栽培で得られたそれらの脇芽や高芽などの増殖株を分譲してもらうこともできるのではと考えています。逆に、こうして得た絶滅の危険性の高い原種を、日本でクローン増殖や純正維持の培養を行い、自生国に戻すことも利益や採算性を度外視した趣味家ならではのできることがあるのではないかとも思います。すでにフィリピンでは2名ほどこのような仲間との情報交換が昨年から始まり、毎月情報が入るようになりました。最近ではPhal. bastianii albalindenii aureaなど入手したが興味があるかどうか等の問い合わせが来ています。デンドロビウムはかなり多いです。こうした仲間を東南アジア全体に広げることができれば、やがてラン原種のSNSが出来るのではと思います。

再びPhal. sanderianaについて

 この時期からPhal. amabilis, Phal. aphrodite, Phal. sanderiana, Phal. schilleriana、やや遅れてPhal. stuatiana、Phal. phillipinenseと順次開花していきます。浜松でのPhal. sanderianaは1月末から2月中旬までが開花最盛期となるようです。現在1月27日ですが、Phal. sanderiana、Phal. sanderiana albaおよび昨年6月の歳月記で取り上げたPhal. sanderiana alba?らしき原種が同時に開花しているため、今回はそれぞれの形態の違いを写真で具体的に考察してみます。 

 サンプルは5種類を表示しています。1段から4段まではすべてMindanao島からの入荷です。最上段はPhal. sanderianaで、5段目の最下段はLuzon島生息のPhal. aphroditeです。2段から4段まではいずれもセパル・ペタルは白色であり、我々が可視出来る範囲のサイズである左から2つ目のカルス写真形状からは、すべてがPhal. sanderiana albaである可能性を感じます。カルスはV字型で黄色あるいは白色をベースに多数の赤褐色あるいは黄褐色の斑点があります。左右に開いた2片それぞれの上部は2つあるいは3つの波状の凹凸があります。最上段のPhal. sanderianaのカルスと、最下段のPhal. aphroditeのカルスの視覚上での違いは、カルス前面(anterior)の凸部が上に反っていることと、カルス片の厚みで、Phal. aphroditeは厚く、Phal. sanderianaは薄く感じます。

 視覚的には2段から4段の写真の内、4段目のカルス写真のように、カルス♯1ではPhal. aphroditeとはかなり異質な感じを受けるものの前面凸部は上を向いているのかほぼ平坦なのか見る角度によっては明確ではなく曖昧でもあります。

 一方、リップを花被片から切断し、カルスの背面側から撮った写真が右端となります。まず1段目の真正Phal. sanderianaのV字の左右カルス片はそれぞれ一枚の板状になっており、5段目のPhal. aphroditeに見られるように、その後面端の左右それぞれには2枚のカルス片が重なりあって一体化したような構造(あるいは溝のような凹み)は見られません。E.A. Christensonによればカルス片をtooth(歯)と呼び、Phal. aphroditeは2つのtooth(左右合わせると4つ)が重なり合った構造で、Phal. amabilisにはない特徴とし、この4つのtoothをもつカルス構造に似た種にPhal. sanderianaがあるとしています。同書で引用されたPhal. sanderianaのH.R.SweetのイラストにはPhal. aphroditeで記載されたような左右それぞれに2つのtoothが明確に重なり合っているのではなくposteriorカルス片の先端が2枚に割けたような様態で描かれています。言い換えれば後面端辺りで幅の狭いtoothが重なっている状態です。

 Phal. sanderianaのカルス形状がPhal. amabilisではなく、Phal. aphroditeに類似するということであれば、Mindano島にはPhal. aphroditeは生息しますがPhal. amabilisは生息しないことと考え合わせて、なおさらPhal. sanderianaPhal. aphroditeからではなく、その地域に存在しないPhal. amabilisから進化したものとする説に矛盾を感じざるを得ません。またSweetのPhal. sanderianaのイラストでは上記したように後面(posterior)端が割けているように描かれていますが、下記の実写真に示す1段目の真正Phal. sanderianaの後面端は割けていません。このように若干の不可解な点は残りますが、実写を第一として考察を進めます。

 2段から4段までの形態を考察すると、それぞれのリップやカルス♯1からの判断ではカルス片の厚みが薄く、Phal. aproditeとは異なっており、これらはすべてPhal. sanderiana albaのようにも見えます。2段目の種の右端の写真からは左右それぞれで複数の片(tooth)が重なり合い一体化したような様態ですが厚みが無く、後面端では1片となっています。3段目右端の写真も同様です。一方、4段の写真は1段から3段までとは異なり最下段のPhal. aphroditeのカルスと同じようにposterior側は2片が重なって凹端となっています。このためか4段目のカルス♯2を見ると後面側がやや厚みをもっているように見えます。

 別テーブルで葉様態を示しました。左端から順次1段目、2段目、3段目のもので、右端が5段目のPhal. aphroditeです。Phal. sanderianaの葉の一部がやや緑褐色あるいは紫褐色である点で特徴がありますが、他は濃淡はあるものの個体差の範囲内で全てPhal. aphrodite同様の緑色であり区別はできません。

 以上から、2段と3段の2種は限りなくPhal. sanderiana albaに近く、4段の種はPhal. aphroditeと判断されます。これらの考察からマーケットにおいて、Mindanao島からの株であり視覚的にPhal. sanderiana albaであるとされる場合でも、本当にalbaなのかどうかの判断は、リップを切り取り、カルス裏側の形状までルーペで見ない限り困難であると言えます。さらに4及び5段の同じPhal. aphroditeを見てみると、Mindanao島生息のPhal. aphroditeはLuzon島生息種とはカルス形状が若干異なるいわゆる地域差をもっているのではないかとも考えられます。


Phal. sanderiana (normal type)

Phal. sanderiana (normal type) callus#1

Phal. sanderiana (normal type) callus #2

Phal. sanderiana (normal type) callus #3

Phal. sanderiana alba

Phal. sanderiana alba callus#1

Phal. sanderiana alba callus#2

Phal. sanderiana alba callus#3

Phal. sanderiana alba?/aphrodite?

Phal. sanderiana alba?/aphrodite?callus#1

Phal. sanderiana alba?/aphrodite? callus#2

Phal. sanderiana alba?/aphrodite? callus#3

Phal. sanderiana alba?/aphrodite?

Phal. sanderiana alba?/aphrodite? callus#1

Phal. sanderiana alba?/aphrodite? callus#2

Phal. sanderiana alba?/aphrodite 2 callus#3

Phal. aprodite

Phal. aprodite callus#1

Phal. aphrodite callus#2

Phal. aphrodite callus#3

Phal. sanderiana (normal type)
Phal. sanderiana alba
Phal. sanderiana alba?/aphrodite?
Phal. aphrodite

Phal. sanderiana (normal type) leaves

Phal. sanderiana alba leaves

Phal. sanderiana alba?/aphrodite? leaves

Phal. aphrodite leaves


世界らん展日本大賞2014

 東京ドーム国際蘭展2014が来月15日から23日まで開かれます。オープンセレモニーは初日前日の14日(金曜)にあり、今年も昨年同様に、夕刻から来賓の挨拶、14日に審査し入賞した出品者への表彰、その後、昨年は17:30分からでしたが、販売コーナーでの招待者2-300人ほどに対する販売も始まると思います。そこで昨年2月の歳月記で報告しましたが、展示会に参加する業者のお得意さんとなっている方は、オープンセレモニーの招待券を業者から入手されることを勧めます。どの出展者も、これだけ大規模な国際展示会ですと目玉商品となるランを用意している筈で、これらを本番前に狙っている招待者は多いと思います。よってマニアであれば尚更、招待券は価値があると思います。

 今年の蘭展にはマニラから2時間ほど南に離れたTaal湖近くに、フィリピン最大の原種ラン農園をもつPurificacion Orchids(http://www.purificacionorchids.com/)が日本では初めての出展を行います。Purificacion Orchidsはフィリピン生息の原種を中心に毎年、アメリカやヨーロッパの展示会に出展している信頼のある蘭園であり、インターネットによる販売も実施している点ではフィリピン唯一となります。

 フィリピンのラン産業の実情はこの歳月記でたびたび取りあげています。台湾やタイからの攻勢の中、自国に生息するランをその国の蘭園が出展することは嬉しい限りです。筆者が所有するフィリピン生息の原種の多くはPurificacion Orchidからの入手です。今回Purificacionから、出展にあたってブースを訪れる顧客とのコミュニケーション(言葉)が心配であるとの相談を受け、これまでのフィリピン訪問では大変お世話になったこともあり、最も混むであろう初日2日間と最終日にブースにて通訳をボランティアとして手伝うことにしました。希望者には栽培等についても説明することになっています。本来、本サイトは営利サイトではなく、特定の業者に肩入れすることも、非難することも方針ではありませんが、有数のラン生息国であるフィリピンのラン・ビジネスの現状と、昨年の悲惨な台風被害の背景もあって今回に限ってのサポートとなります。

 これまでも指摘してきました国際蘭展の利用方法の一つは、購入したい品種がある場合は、展示会場で購入するのではなく、予めメール等を通して発注しておき、展示会場にてそれらを受け取ることです。この利点は価格です。展示会場での価格は、どうしても出展費や滞在費等のコストを回収する必要からランの価格は、国内外の蘭店も同じですが、一般的に数倍高価になります。これに対して展示会前での予約注文は通常時のネット売買での価格となるため、会場価格と比較するとかなり安価になります。筆者の知る限り過去の東京ドーム蘭展でのこの価格差は倍以上です。予約注文は1本でも可能であり、また纏まった数であればあるほどその支払額差は広がるため、筆者は2007年ほど前からアメリカやブラジルの業者に対し行っています。会場で新規に購入するのは想定外の稀少種を発見したときのみです。最近はこうした顧客も増えているようです。

 予約発注の期限はCITES等のドキュメント準備のため、それぞれの国によっても違いますが、最も早い所はアメリカで1月20日の週まで、その他で今月末頃までに行う必要があります。見積もり検討時間も含めると余り時間はありません。

 Purificacion Orchidsのメールアドレスは上記サイトにあり、同サイトのギャラリーのページの品種は殆ど発注が可能です。蘭展での購入を検討されている方は上記のような予約発注も検討をされては如何でしょうか?英語では問い合わせがしにくい方は、本サイトのお問合せにあるphalwild@・・・のアドレスにメール下さい。

*会員の方は掲示板と新着情報にアクセスください。


最も成長の遅いランParaphalについて

 Paraphalaenopsisについて、しばしばカタログには「10年以上で5インチ(12.7㎝)しか成長しないラン」として紹介されています。この属には現在、labukensis、serpentilingua、laycockii、およびdeneveiの4種が含まれ、それぞれがボルネオ島に生息しています。昨年10月の歳月記でも取りあげました。花の無い状態の外見からは、3-4本の細長く硬い棒状の葉のみであり、その属名に含まれるParaに続くPhalaenopsis(胡蝶蘭)がなぜ付くのか不思議でしたが生態的、また近年のDNA分析でも胡蝶蘭とは近縁のランであるとのことです。花を見ればそうかなとも思えますが。


Paraphal. labukensis

Paraphal. serpentilingua

Paraphal. laycockii

  一方、最近では台湾でParaphal. labukensisのフラスコ苗が売られています。開花までには少なくとも20㎝以上の葉長をもつ株サイズになることが必要であることを考えると、花を見るまでには15年近くを要します。定年退職された方が本種の栽培を苗から始めれば、はたして花が見られるのが先か、寿命の尽きるのが先かの問題になってしまいます。それほど長い期間、気長に育ててまでも、このランに興味を持ってフラスコ苗を購入する人がいるのかと不思議です。さらにカタログによれば、花を実際見ればそれだけ長く育てた甲斐があることが分かるとのことです。2014年の東京ドーム蘭展での出展者カタログによると6インチ強(16-20㎝)のParaphal. labukensisで23,000円程(whole-sale priceで展示会価格ではありません。展示会場ではおそらく倍の値段?)とのことです。


Paraphal. labukensis。 写真は上下を左右に配置。長い方のlabukensisの葉長は2mで、天井カーテンから床まで届く長さ。

 会津にいた5年ほど前にParaphal. serpentilinguaの自家交配を行い無菌培養をしました。胡蝶蘭原種と同じ培地でしたが、容易に苗を得ることができました。下写真は現在筆者温室のParaphalですが、20株ほどあり、その内の4株(右端から写真4枚)に花茎が発生し、1株(右から2つ目)には蕾があり2週間ほどで開花すると思われます。一方左端では新芽が2㎝ほど出ており、この芽を観測しながら1年当たりの伸長を調べてみる予定です。

 Paraphalaenopsisの8年間程の栽培経験からは、バスケットにミズゴケが最も成長が良く、コルクやヘゴ板はあまり良い結果は得られませんでした。原因はこれらのコンポストは乾燥が早く、根全体を乾燥させることが良くないとの結論に至りました。このためコルクやヘゴ板に取り付ける場合は上写真のように多めのミズゴケで根を包み、その後、根が伸長してはみ出した場合は、さらにミズゴケを足してはみ出した根を包むのが好ましいと思います。ネットに書かれた栽培法によると、週に2回ほどかん水を行い、かん水の間にカトレア栽培のように一旦乾かすことが良いとされていますが、筆者は異論があり、ぐしょ濡れは良くありませんが、完全な乾燥は一時的とは言っても胡蝶蘭原種同様に嫌う様態が見られ、しっとり感がミズゴケに無くなるようであれば直ちにかん水を行います。よってコルクやヘゴ板の場合は、冬季であっても置かれた場所にも寄りますが、2-3日に1回、夏季は毎日かん水を行います。最低温度が18℃程度であれば、根の伸長は極めて活発で、それでも根の動きがないようであれば、乾燥気味になっているのではないかと思われます。

 胡蝶蘭原種同様に高湿度が必要ですが、吊り下げて栽培するランであり温室やワーデイアンケースでの栽培となるため通常湿度は保たれていると思います。昨年の夏の猛暑時でも問題なく根が伸長していましたので暑さには強く、と言うよりも、高温タイプであろうと思います。言い換えれば冬季は可能であれば最低温度を18℃とし、15℃以下では作落ちの可能性が高まります。芽は秋に入って伸びていました。いずれにしても胡蝶蘭と同じような環境下に置けば栽培には問題がない丈夫なランです。


 Phal. schillerianaPhal. amabilisなどの開花最盛期を迎えるのに合わせ、今月末から会員の方に温室を公開するための準備を始めています。今年の課題は多く、2012年から取り組んでいるサイトの全面改訂と胡蝶蘭以外のランの増設ページの製作、絶滅危惧種となったヘゴに代わる新たな植込み材の評価、フィリピン、マレーシアに次いでインドネシアのラン園への訪問、また稀少種をかなり収集していることから、これらを保存する目的でのクローン増殖への取り組みなどです。

 まずはデンドロビウムの植え替えで遅れていた温室公開を最優先に取り組んでいます。会員だけでなく、ご近所の多くの方々も温室の中を見たいと建設当時から希望されており、やっと実現が間近になりました。デンドロビウムは未だ6割程度しか植え替えが終わっていませんが、これを待っていたのではさらに半年以上遅れることになり、残りは5年以上植え替えなし状態になるものの致し方ありません。写真は現在の温室の一部を示したものです。


100株程のPhal. schilleriana。手前の株はpurpureaタイプ。すべての株で現在20-30㎝の花茎を伸ばしており、今月末から2月中旬まで数百輪の同時開花が見られるのではと思います。

大株のPhal. gigantea。60株の棚。質と株サイズではおそらく国内だけでなく世界でも最も多いコレクションとマレーシア・ラン園主から言われています。ベンチに置かれた3年苗を含めると100株以上。

Phal. lueddemanniana。一昨年の歳月記で紹介したクラスタ状の株で、何株あるか数えたことが無く高芽で毎年30本ほど増え続けています。本種の未公開の大株をもう1株所有。前に見える細長い棒状の植物はParaphal. labukensisで葉長2mの株も栽培。

Vanda javierae。数えたところ150株ほど。絶滅危惧の高いランであるため、無菌培養の最優先品種。1昨年購入し、10か月程フィリピンのラン園に預け、昨年6月頃に入荷。入荷時かなり弱っていたものの浜松で何とか元気になり成長しています。開花期は3月頃。

Dendrobiumの棟。左奥はDen. aphyllum。右は未だ未整理で雑草状態。

Dendrobiumのベンチ。新種や稀少種はまとめてレイアウト。

50株を超えるVanda sanderianaVanda sanderianaは毎年自宅を訪問しラン談義をしているフィリピンのDr. Sanchezさんが世界のトップコレクターですが、この温室の株もすべてセレクト品でダバオ祭やPOSの優勝株も含まれており、品質の点では双璧。

会津でも5年ほど前から行っていましたが、今年から本格的に始めるクローン増殖用の装置など。左に見えるのが入荷直後のクリーンベンチでPanasonic製卓上型MCV-710ATS。1月中に全体のセットアップを終わらせる予定。稀少種は保存が必要なことから来月頃から培養開始。

 温室内の胡蝶蘭原種は50種以上の殆どの品種と、それらの変種を含めるとかなりの数になります。その他、デンドロビウム、Paphio、Vanda、Bulbophyllum、Cirrhopetalum、カトレアなどを栽培しており、会員や地元の方の訪問時には、希望者には即売も行います。昨年は海外ラン園を訪問するついでに会員の方の代行でランを現地購入もしましたが、今年は昨年以上に増えそうです。予定では今月末から2月にかけてフィリピン・マレーシアを再訪問です。

 

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